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小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」
「大輪動会」(連載中)

短編作品
「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

一話完結
「お昼寝おばさん」 ▼「上手くやりたい」  ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」  ▼「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」
「いたずらの入り口」 ▼「学食のおばさん便器」  ▼「山姥今様」
「おしっこ、ついてきて。」

大輪動会-プログラム#8-

  *

 上の口からも下の口からもブクブク白いあぶくを噴いて、有紀はもう尊厳もなく敗者の役割を全うしていた。時折身内から切なさが込み上げ眉間に皺寄せる時、刹那的に心が戻るが、喉奥へペニスをぶち込まれれば、すぐにまた木偶の坊に返る。

 口腔を支配しているのは射精して間もない比嘉。彼にとり、かの女の面を歪ませながら己の性具をしゃぶらせるというのは、ゾクゾクする程嗜虐心を煽られた。

 彼の跡を継いで女穴に収まったのは、どさくさ紛れにこの日一発目の鈴木である。彼は比嘉の出し残しを押し戻して肉壁に塗り込んだ。

「いやあ、奥さん、運動会は疲れるね」

小林がのんびりと、彼女の顔へタバコの煙を吹きかける。

 一行は今、体育館の裏からその中へと場所を移していた。一連の競技は皆グラウンドで行われる。体育館の中は人々にとって盲点だ。そう進言し、鍵を開けたのは比嘉。

「(これで、あの男が助けを呼んできても大丈夫だ)」

彼は暗にそう考えていた。加害者らしくすっかり打算的になっている。もっとも、助けを呼びに行ったのは前原だったので、戻ってくる心配はなかったが。

 体育館の入り口には竜二が立っている。交代で見張るルールだ。彼は、ただどちらかというと中の方を気にしながら、チラチラとせわしなく視線を動かしていた。自分もまたやりたいのである。なにしろ、鈴木の後を受けて次に挿入をするのは仲間の慶介だ。それが羨ましい。但し、彼の位置からは現場が見えない。

 輪姦は今、幕の下りた舞台の中で行われていた。昼間とはいえ、ひっそりと暗い体育館の内部。その中で、舞台の上だけ電灯が点いている。外には裾から灯りが漏れる程度。これならすぐには見つかるまいというのが、彼らの判断である。

「しっかし、暑いな」

花村が言った。幕を閉じた閉鎖空間には風の通り道がない。最初はひんやりと涼しかったが、何しろ八人も中にこもると熱気が出てきた。しかもある種の運動をしているのだから。

 彼は舞台袖へ引っ込むと、そこに一つだけあった窓を開けた。下手にだけ窓があった。

「開けて大丈夫?」

小林が聞いた。

「大丈夫っしょ、ここなら」

花村はシャツをパタパタさせながら軽く答えた。元より尋ねた方もバれるとは考えていない。ここは彼らにとって格好の隠れ家と思われた。

 しかし、どんな時であれ、その想定を簡単に覆す存在があるものだ。その存在、それは子供である。彼らは時に大人の常識を飛び越えて行動する。今しも、縁の下にある道具搬入口から、そんな者達が侵入しようとしていた。

  *

 グラウンドでは、ようやく午前のプログラムが終了していた。結局有紀は、四つエントリーしていた内の一つしか出場しなかった。そもそもが、口さがない女達が言うところの“エントリーし過ぎ”である。逆になぜか飛び入り参加が一つ。なんにせよ、その気まぐれさに人々は呆れかえった。おまけにまた行方不明。

「チョー迷惑なんですけど」

運営を手伝っている若い女が言った。実際に彼女が損害を被ったという程でもないが、身勝手な人間にイライラさせられているのは事実だ。

「ホントホント」

「マジ意味分かんないよね」

彼女の友人らも調子を合わせる。自分達に利害の関係ない人間をやり玉に挙げるのは気楽だ。彼女らは有紀を会話のネタにしながら、弁当をつついた。

 今は昼食の時間である。彼女らの傍では、その幼い子供達が仲良く弁当を食べていた。それがはしゃぎ過ぎるのを軽く注意しながら、うち一人の母親が言った。

「で、まだどっか行ってるわけ?」

 その発言を受け、皆それとなく金光家の陣地を見やる。その陣地は広大だった。しかも最前列の特等席だ。普通は町組ごとに集合しているものだが、金光家だけは特別だった。

 今その広いシートの上に、三人の子供達、そして一人の無愛想な家政婦がポツリと座っていた。家政婦はスマートホンを熱心にいじくって、子守をしている風は微塵もない。弁当は彼らが昼食時間よりずっと前に食べてしまったので、もう残っていなかった。

「――でさあ、勝手にうちの弁当開けてるわけ。ゾッとしたわよ、あたし」

別の集団では、ある女が怒っていた。金光の長男・佳彦が、その女が持ってきた弁当箱を断りもなく開けていたというのだ。

「ウッソ、信じらんない」

聞いている方も同調して怒りを露わにする。

「どういうしつけしてんのって感じ」

「それでどうしたの?」

「さすがにブチ切れて追っ払ってやった。でもさあ、全然分かってないんだよね、なんで怒られたか。なんにも言わずにスッて」

「え、無視して行っちゃったの?」

「ヤダ、怖い」

女らは話しながら、食べ物を頬張る。

 また別の一人が言った。午前中に金光の長女・清美と組になって二人三脚に出走した女だ。

「あの子さあ、ちょっと」

彼女は頭の横で手をクルクル回してからパーを作った。

「“こっちの足から動かすの”って何回言っても分かんないわけ。おまけにいっつもキョロキョロして、誰にか分かんないけどずっと手振って」

「で、ちょっとニヤニヤしてない?」

「そうそう」

「あ、なんか分かる。あたしも前に――」

共通の敵を得て、女達の話は尽きない。これがコミュニティーで浮いてしまった一家の末路だ。これまで有紀は母親らとまともな付き合いをしてこなかった。その必要を感じなかったからだ。その結果がこれである。

 そんな悪評もつゆ知らず、当主の金光は我が子らの所へはいかずに、相変わらず委員席で前原を相手に自慢話を続けていた。簡易机の上には、空のワンカップ酒が三本並んでいる。

 と、そこへ島田が通りかかり、普段ならしない挨拶をしていった。島田はさっきまで輪姦現場にいたが、ちょっと中座して表に出てきたものである。大会委員である立場上、ずっと姿を消しているわけにもいかないからだ。その際、わざわざ金光の傍を通ったものである。無論含むものあってのことだ。

「あんたの奥さん、寝取りましたよ」

と。

「フン」

島田を見送って、金光は不愉快そうに鼻を鳴らした。隣家の彼とは犬猿の仲である。そいつがよりにもよって我が妻を犯していようとは、無論想像だにしない。

 同席している前原も、今の男があの当事者に含まれていたとは気づかなかった。彼は主人の不機嫌を察し、気を使って話題を変えた。まだまだ抜け出せそうにない。何しろ嫌われ者の事ゆえ、人が寄り付かないのだ。癒着関係にある業者なども、ちょっとご機嫌伺いをするとすぐ立ち去ってしまう。この場で運動会がらみの用事がないのは前原ぐらいであった。

 その彼をちょっと見返してから、島田は別の場所へ移動した。彼の方では前原を覚えていた。

「間男が、よくも抜け抜けと旦那に顔を会わせられたものだ」

と、自分のことを棚に上げて、彼は思った。そこへ比嘉が通りかかって、二人は視線を交わして行き過ぎる。比嘉もまた表に帰ってきていた。

 彼は有紀の子供らがいるシートの方へ行った。別にどうという意図があったわけではないが、いわば偵察である。

 そこには、息子の佳彦と一人の家政婦がいた。娘らはちょうど便所に行っていて居ない。佳彦は大人しそうな同級生を捕まえて、携帯ゲーム機の画面を見せていたが、その同級生の友人がやってきて彼を連れて行ったので、後に一人残された。

 と見ている間に、今度は別の少年らがやってきて佳彦に声を掛ける。

「案外交流があるんだな」

比嘉はちょっと不思議に思った。普段の佳彦は、周りから避けられている印象があったからだ。

 少年らは佳彦より一学年上の二人連れ。走ってきたものか、上気した顔をして笑いながら、ゲームの画面を指さしていた。

  *

 小さき者達は列を作って並んでいた。その先頭にいる者は、種付け中である。彼らは交尾の順番待ちなのだ。

「オッ、ゴオッ……!」

小さな突起に突きまくられて、有紀はよだれを垂らしながら啼いた。これでも初めは恐れ、拒んだのだ。だが今は、またアクメのるつぼに落ちてしまった。たとえサイズは小さくても、若い、いや若すぎるエナジーの鮮烈さは、女をしてハッとさせるものがあった。

「気持ちいいか?」

小林が侵犯者に尋ねた。訊かれた方は、ブンブン頷きながらか細い腰を振る。その様は、まるで小型犬が牛を相手に交尾しているようだった。それでも一人前にやることはやれる。

 有紀から見れば二回り以上も年下の彼。というより、むしろ自分の息子を基準に数えた方が計算しやすいだろう。かつてこの列の初めにいたのは、息子より一つ年上だった。その後、同い年が現れ、そして今や、とうとう一歳年下まできた。我が子の後輩と彼女は性交し、あろうことか気をやっているのである。

「アッ、ヤッ、アガハァ……」

のけ反って突きに耐える。破廉恥極まる母親だ。まるっきり大人としての分別がない。

 大体からして、この狂気の顛末を支持する男達も異常ではあった。僅かでもそれを阻止する可能性のあった比嘉や島田がちょうど離れた隙を突いての出来事である。

 最初は、道具搬入口から忍び込み、覗き見をしていた子らがきっかけだった。彼ら三人組は、うち一人を除いて自慰経験すらなく、残り二人に至っては何が起こっているのかすら分かっていなかった。

 だからこそ、安易に人にしゃべった。相手は、彼らの動きに気付いた、彼らより少し年上の少年らだった。学校は異なるが、年齢の上下に関係なく昔から遊んでいる仲だ。加わった連中は、さすがに年の功で状況の意味を飲み込んだ。と、そこで、大人達に気付かれたのである。

 第一に気付いたのは、大人、というよりまだ法律上もそう扱われない年齢の、慶介である。彼ですらまだ子供なのだ。いわんや追加の者達をやである。

 新人らは計八人もいた。その後の展開は、花村曰く、“完全な悪ノリ”であった。

「お前ら、セックスしたことあるのか?」

まずはニヤニヤ笑って、小林が訊いたものだ。八人の内、誰もが否やと答えた。

「今やってんのがセックスだよ」

「ていうか、マワしだけど」

竜二と慶介が口々に先輩らしく説明する。島田に続いて出て行った鈴木、現在見張りに立っている弘樹を除き、その場にいた男五人に囲まれ、新人らは縮こまっている。

「ヤッてみたいか?」

小林が面々を眺め廻しながら尋ねた。その質問に、高橋が驚きの声を上げる。

「おいおい、マジか」

彼は侵入者の到来に、端から眉をひそめていたものだ。彼にも息子があるが、明らかにそれより年下の男子達にこういう行為をさせることは気が咎めた。人の正義にはそれぞれバランスがある。高橋は有紀を憎み犯しはしたが、それと別な倫理も有しているのだ。

 そのバランスを他の者が揺らしにかかる。

「ここまでバれたらしょうがない、か」

と、花村が言えば、小林も、

「そうそう、口封じ口封じ。お仲間になってもらいましょう」

とダメを押す。分けても高橋に効いたのは、花村が発した次のセリフだった。

「まあ、どうせこんなどスケベ女だし、もうオナホール使うみたいなもんか」

 それで高橋の心は決まった。この恨むべき女が年端もいかない者達からさえ慰み者にされる。そういう場面を想像し、昂揚感を覚えたからだ。おかげで、少年らを巻き込む罪悪感は雲散霧消した。

「誰にもしゃべるんじゃないぞ」

彼はそう念押しし、事態を許容した。


〈つづく〉


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