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小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「大輪動会~友母姦戦記~」
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」

◆オムニバス
「母を犯されて」

◆短編作品
「育てる夫」  ▼「最後の願い」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

■一話完結
「ふんどし締めて」
「旧居出し納め・新居出し初め」  ▼「牛方と嫁っこ」  ▼「ガンカケ」
「祭りの声にまぎれて」  ▼「シーコイコイコイ!」  ▼「サルオナ」  ▼「母の独白」
「童貞卒業式」 ▼「お昼寝おばさん」  ▼「上手くやりたい」 ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」 ▼「いたずらの入り口」
「学食のおばさん便器」 ▼「山姥今様」 ▼「おしっこ、ついてきて。」

作品一覧

ママの枕 ~ステージ11~


〈登場人物紹介〉




「お前まだ童貞だろ」

それがタイガに話しかけられた最初の言葉だった。彼と共演するドラマの撮影現場にて、二人っきりになった折のことだ。

「ドーテイ?」

コウは意味が分からずに目をパチクリさせた。これまでの仕事現場とは格段にスケールの違うスタッフの数、緊張感。そういったものに囲まれて、硬くなっていた時だった。

 そんな新参者を値踏みするかのように、タイガは冷めた目を向ける。

「悪りぃ、当然だよな」

コウの返答を聞いて形式的に笑いはしたが、彼の態度はあくまで高圧的だった。己の居る高みへ這い上がろうとする者へ、決して心を許しはしないとばかりに。その態度は、高学年生が未就学児へ対するものではなく、むしろ同業ライバルに対するそれだった。

 続いて彼の矛先は、ミナミへと移る。

「あれさ、あのおっぱいのデカい人、あれ、お前のママ?」

「う、うん」

コウは、“おっぱい”と言われて妙な気恥ずかしさを覚えながら肯いた。

 その母親がプロデューサーらと談笑するのを見ながら、タイガは、

「フーン、なるほどね……そういうことか……」

と、曰くありげに呟く。

 コウは、なんとなくこの年長者に恐れを抱いた。ただ、今回の仕事について母親から、その大きさ、大切さを散々聞かされてきた中で、とりわけ念入りに指図されたことがあった。それは、“タイガと友達になるように”ということだ。息子にとり、母の指令は絶対である。

 彼はタイガの横顔へおずおずと尋ねた。

「ねえ……ドーテイって何?」

「あ? セックスしたことない奴のことだよ」

タイガは、いかにも面倒くさそうに答えた。その剣呑な態度に恐れをなし、コウはセックスの意味まで質すことが出来なかった。

「あ、そうだ」

立ち去り際にタイガが言った。

「一応聞いとくけどさ、お前のママとセックスしていい?」

コウは意味が分からないながらも、とにかくブンブンと夢中で肯いてみせた。すると、この時ばかりはタイガも心からの大笑いを見せて、

「マジで? ……ま、ダメって言われても落とすけどさ」

と、嬉しそうに去って行った。

――次の収録の時、またタイガがコウへ話しかけてきた。

「よお、童貞

 この日の彼は機嫌が良さそうだった。そこでコウの方から先日の続きを切り出してみた。

「タイガ君、セックスしたの? ぼくのママと」

「お?」

タイガは先方から思いがけず言いだされ、一瞬面食らった様子だったが、相手が相変わらず無邪気なのを知って、今度はニヤニヤと満面の笑みを浮かべながら身を乗り出してきた。

「ああ、したよ。お前のママとセックスした。お前のママ、チョーよかったぜ。マジエロかったわ」

“エロ”という聞き慣れない言葉がまた出てきたが、なんとなく褒められているらしいことは分かり、コウはひとまず安心した。

 タイガは続ける。

「フェラも慣れてるしさ、さすが人妻って感じ? ていうか、枕でやりまくってるおかげかな」

続々と知らない単語が出てくる。コウは、それらを流暢に使いこなす先輩を見て、その大人っぽさに憧れを抱いた。

 それにしても、“セックス”の実体は相変わらずつかめない。それからというもの会う度ごとにそれについての話を聞かされて、おかげで二人の距離は縮まったが、タイガの話からは、結局どういうことをするものなのか、具体的にイメージすることができなかった。

 タイガもタイガで、コウが頭を悩ませている様子を面白がり、あえて順序立てて説明しようとはしてくれない。むしろ彼にとっては、一種のゲームのような感覚なのである。

「オマンコだよ、オ・マ・ン・コ。言ってみな」

「オマンコ?」

「そうそう、お前のママとオマンコしてるの」

「ママとオマンコ?」

首をかしげるコウを見て、タイガはゲラゲラ笑う。事情を知らない大人達には、子供同士ただただ仲良く遊んでいるようにしか見えなかった。

「まあ、マンコはゆるゆるだけどな。枕のやり過ぎなんだよ」

「ゆるゆる? マクラ?」

「ああ、お前のママ、ヤリマンだからガバマンなんだよ」

「ぼくのママ、ヤリマンで……ガバマン?」

コウの無知さ加減に、タイガはもはや笑いが止まらない。

「そうそう、多分その辺の男みんなにオマンコさせてるから」

 タイガの言い分によれば、知らないのはほとんど自分だけなのではないかという気になる。コウは少なからず焦りを覚えた。それでなくても、母とタイガが自分の知らない所で度々逢っているということに嫉妬を感じだした矢先だ。初めの頃こそ二人が仲良くなったことを喜びもしたが、除け者にされているようで段々と面白くなくなってきた。

 その上、

「ああ気持ちよかった。今ママに中出ししてきたぜ。お前のママエロいからさ、アヘ顔で“イく~イく~”ってオレにしがみついてさ、中出しされてイきまくってたぜ」

などと事後報告を聞かされ、一方で母からは何も聞かされず、素っ気ないとさえ取れる態度を見せられては、なおさらである。

「ねえねえ、なんなの? オマンコって何? マクラってなんなの?」

大分打ち解けて、近頃では兄に対するように甘えながらコウが迫っても、今一つ納得のいく説明はなく、返って問題は混迷を深めるばかり。

「ガバマンだけどさ、乳はいいんだよな。オレも色んな母親とヤッたけど、あのパイズリは中々……」

益々調子に乗って、年長者の揶揄は続く。

 だが、さすがにそれが繰り返されていくと、幼い者の心にもおぼろげながら感じるものが出来始めた。というのも、“おっぱい”とか、時には“ちんちん”などという単語が紛れ込みだしたからだ。コウは、まだ何かはっきりとはしないながらも、ただなんとなく胸騒ぎを覚えるようになった。

 それで次第に遊びではなく真面目に食い下がるようになった。そのしつこさが面倒になったタイガは、逆に尋ねた。

「ていうかさ、お前ネットとか見ないの?」

「うん、ママが見ちゃダメって」

それを聞いて、タイガは呆れた。自分ならインターネット検索でとっくに答えを出している所だからだ。仕方なしに質問を変える。

「ほかのヤツに聞かねえのかよ」

「え? なんで?」

コウは目を丸くした。今まで思いつかないことだった。タイガと二人だけのやり取りの中で、自然と彼から答えを貰うのが当然だと思い込んでいたのである。

 ヒントを貰ったコウは、早速ヒサキの所へ向かった。

「ねえ、オマンコって何?」

 突然のことに、ヒサキはギョッとした。コウはそれと気づかずに詳しく語り出す。

「あのね、タイガ君がね、ママと……」

 すると、後ろから駆けてきたタイガが、それを途中で遮った。

「ちょ、待てって。やっぱ教えてやる」

 彼は元の場所へコウを連れて戻ると、こんな提案をした。

「見てみるか? オレらのセックス」

「ほんと?」

コウは目をキラキラさせて身を乗り出す。

「ああ……」

タイガはニヤリと口の端を上げて、

「今度さ、オレの友達と二人でお前のママ、マワすから、それ見に来いよ」

と、約束の日を伝えた。だが、その日は平日で、コウは生憎幼稚園に行っている。

「なんだよ、お前、幼稚園なんか行ってんのかよ」

タイガは舌打ちした。バカにされたようで、しゅんとなるコウ。だが、次の案が出て、また一気に元気を取り戻した。

「分かったよ、どうせ次の撮影の時にまたヤるから、その時に見せてやるよ」

「ほんと? やった!」

コウは小躍りして喜んだ、自分の母親による“セックス”なるものが見られることを。その様子を見て、タイガは念を押した。

「マジで見たいんだよな? いいんだな?」

 コウにもちろん否やはない。大きく肯いて満面の笑みだ。その反応を見ると、こちらは逆にあえて笑うことなく、タイガはこう付け加えた。

「あと、このことはオレら二人だけの秘密な。誰にも言うなよ。ママにも」

 コウは、嬉しそうに二回肯き返した。


〈つづく〉


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