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■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」
「大輪動会」(連載中)

短編作品
「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

一話完結
「お昼寝おばさん」 ▼「上手くやりたい」  ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」  ▼「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」
「いたずらの入り口」 ▼「学食のおばさん便器」  ▼「山姥今様」
「おしっこ、ついてきて。」

「師匠のお筆」 4-2-1
『師匠のお筆』


4-2-1


さて、いよいよ書の会の当日となり、鈴美はあらかじめ教えられた場所へと赴いた。期待に胸は高鳴り、そのことは今日着て行く服を選ぶのに一昨日からたっぷりと時間をかけたことにも表れていた。

鈴美にとって再び書道を始められることはもちろん喜ばしかったが、それをさらに枕必の下で直々に学べるということが何より嬉しかった。枕必は学生時代からの憧れの存在で、これまでずっと雲の上の人だと考えていた。それが気さくに話をしてくれた上に、自身の会にまで招待してくれたのだ。

別に何を期待してというのではないが、女性として身支度に気を使いたくもなり、一種の印象は与えたいが会の趣旨をも勘案しつつ……、などとあれこれと迷った挙句、いつも控えめな鈴美としてはやや華美な、それでいて清楚な洋服を選んできた。

電車を乗り継ぎ、やがて鈴美は目的地と思われる場所に着いた。そこは白くツヤツヤした大理石のようなタイルで覆われた四角いビルで、ちょっとした会社のような建物だった。

鈴美は、こんな会社のような所に入っていいものだろうかと少し気後れして、ガラス張りの正面玄関の前でちょっとためらったりしたが、さりとてここで引き返すわけにもいかないので、今はただ約束を信じるばかりと、思い切って中に入った。

ふっくらと足の裏に心地よい感触の絨毯を踏んで、鈴美は辺りを見まわす。ホールに電気はついていず、外からの明かりだけが中を照らしていた。人は誰もいない。奥にエレベーターがあるが、これで上に行ったものかどうか、彼女は思案した。

と、その時、自動ドアが開いて後ろから人が入ってきた。

「あら、どうなさったんですか?」

振り向くと、そこには濃いピンク色のスーツが鮮やかな一人の女性が立っていた。女性は見るからに鈴美よりも大分年上で、スーツはいいものらしかったが一昔前に流行ったような、少し時代を感じるデザインであり、それが彼女の世代の趣味を表しているように見えた。

「こちらにご用?」

余裕のある笑みを浮かべながら女性は言った。

「はい……」

新人らしく畏まって鈴美はここに来た用を述べた。

「ああ、お教室の」

女性曰く、彼女もその「お教室」に向かうところらしい。それは果たして枕必の開く会であった。

女性はエレベーターのボタンを押した。彼女のパーマのかかった茶色い髪からは強烈な香水の匂いが漂い、それは一緒にエレベーターに乗ると殊更だった。

エレベーターを待つ間から3階で降りるまでの間に、二人は互いに自己紹介した。女性は文子(ふみこ)といった。

鈴美は、この短い間にこれまでの経緯を洗いざらい説明させられた。文子は会話が巧みで、神雄のことを聞きだせばすぐさま彼を上手く持ち上げながら相槌を打つので、鈴美もついつい話してしまうのだった。

しかし、「じゃああなたも枕必先生のファンなのね」という一言には、内心少し引っかかった。

一つは「ファン」という言葉で、客観的に見て鈴美の立場はファン以外の何者でもないのだが、ファンと称するのは少しく軽薄な気がしたし、また「あなたも」という言葉には、鈴美以外にも熱烈なる信奉者がいることを表しており、それは当り前のことではあるのだが、それを改めて思い出させられたと同時に、そうした人がほかにも今日参加していることをも示唆された気がして心安らかならぬ思いにさせられたのである。

3階に着くと文子はやや先に立って歩いたが、ちょっと行ってすぐ振り返った。

「ここよ」

そこは会議室のような一室だった。

「こんにちは」

中には既に二人の女性がいて、こちらが入ると挨拶をしてきた。文子は二人に鈴美のことを紹介してくれた。この二人は文子と同年輩ぐらいに見えたが、会話ぶりからすると文子の方が立場が上らしかった。

それにしても鈴美の気を引いたのは、二人の着ている物や持ち物である。二人とも文子に負けず劣らず派手で、しかも見るからに高価そうなものばかりを身につけているのである。いや、この二人ばかりではない。後から入って来た人達、そのいずれも女性であったが、皆が皆ブランド物で着飾っているのである。とてもこれから書道を始めようという出で立ちには見えない。

そんなどう見ても富裕層の集まりといった中で、一介の主婦然といった格好の鈴美は、ここへきてまた気おくれを感じずにはいられなかった。どんなにおしゃれに気を使ってこようと、これでは端から場違いだったのだ。

鈴美は目を上げた。そこには鈴美よりもずっと年下の、まるでギャルのような見かけの女性がいた。しかしそんなギャル風のメイクをしていても、やはり手にしているのは高級ブランドの鞄であった。鈴美は今日来たことを後悔し始めていた。


<つづく>



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