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■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「青き山、揺れる」
「師匠のお筆」

短編作品
「大輪動会」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

一話完結
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「栗の花匂う人」  ▼「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」
「いたずらの入り口」 ▼「学食のおばさん便器」  ▼「山姥今様」
「おしっこ、ついてきて。」

湯けむ輪(46) 23:40

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午後十一時四十分


さて、そのもう一人という者の存在に、宮浜・奥津の両人揃ってからっきし気づかなかったのであるが、こういう時に限って不思議と勘の冴えるということはあるもので、倫子一人だけは不意にそいつの視線に感づいたのであった。そいつは、非常口の扉をちょっと開けて、その隙間から顔をのぞかせていたのである。

倫子らは階段を伝って下りること、かれこれ一階の手前の踊り場まで来ていたが、その一階の出口というのが非常扉であった。そこを開けるとエレベーターの横へ出て、そのままロビーへと行くことができる。ところが、もう夜も更けてきたというのと、そもそもあまり階段を利用する者がないというのであろう、早々に閉じられていたのであった。

そこから顔を出していたというのが、年の頃なら五十位、薄くなった前頭部、痩せこけた頬、そして何より、きれいに整えられたちょび髭が特徴的な、ちょっと見た感じ小ずるそうな印象の小柄な男である。実はこの男、倫子は既に見知っていたのであるが、果たして彼女がそれを思い出す前に姿を消してしまった。

もっとも、それでなくても二人がかりで犯されている最中だ。その上、今や己の醜態を他人に覗き見られたからといって、極端に狼狽するでもない。すっかり常識のマヒしてしまっている倫子である。そこで、男の顔が覗いていたことも、ついおろそかにしてしまった。

さて、そんなことがあったことすら知らない男達二人、もしも気づいていたならば、どのような挙に出たものか見ものであったが、結局知らないままに終わったものだから何ら取り乱すこともなく、粛々と事を進めて安心していた。

すなわち、倫子のことを一階の扉の外に運び出すと、なんとそのまま踵を返し、両人打ち揃って階段を駆け上がっていったのである。助けを呼ぶこともなく、また彼ら同士で言葉を掛け合うことすらなく、ただ黙って倫子を放置して帰っていったのだ。明らかに性的乱暴を受けたであろう様の、呆けきった全裸の倫子を残して。

おそらく、ここに置いておけば、この施設の誰かが処理してくれるだろうとか、彼女がコンパニオンというからには、いずれ迎えが来るだろうとか、そういう浅慮な考えに基づいたものであったのだろう。いかにも外道な、そしてまた愚かな考えである。

よしんば彼女が娼婦であったとしても、こそこそとそのおこぼれに与る姑息な行為、いわゆるタダ乗り、あまつさえ昏睡状態に乗じたそれはすなわちれっきとしたレイプであり、しかもこの後彼女が保護される態様によっては、早晩彼らの身が破滅する可能性は高いのである。例えば、コンパニオンの派遣会社から多額の請求を受けるとか、あるいは事件が公になって警察が出てくるとか、いずれにせよ無難に収束する見込みはなさそうなのだ。

おおよそ命脈の尽きた二人と言わねばならぬところである、が、運命のいたずらとは時に理不尽なる悪事にすら味方するもので、これほど浅はかな彼らにさえ幸運は訪れるのであった。あるいは、彼ら自身そのことを無意識に察知して行為に及んでいた、なんてことはさすがにあろうまいが、とにかく二人はあれだけ下劣な罪を犯していながら、どうやら助かりそうなのであった。

「こっち、こっち」

小声でそう叫びながらやって来るのは、先程顔をのぞかせていた小柄な男。後ろに続く者を急かしている。

「待って下さいよ」

少し遅れて付いてくるのは、ガタイのいい短髪の男である。前の男が小柄なのを差し引いても相当に背が高いことは間違いない。年齢は三十代から四十代の前半位。彼もやはり小声で応じていた。

程なくして、前を行く男が激しい身ぶりでもって後ろを手招きする。ちょうどロビーの柱を曲がった所、目的地の手前十メートルといった辺りだろうか。

「ほら! あれ見て、あれ!」

彼はその方を指さしもって、早小走りである。

「えっ……! ちょ、ちょっと……!」

すぐに後ろの男も気づいて、同じように駆け足になる。先へ行ったのは前の男であるのに、彼の大股のおかげで到着したのはほぼ同時であった。

「うわ……っ! ちょっと、これ……!」

言いながら、短髪の男は固まった。その見下ろす先には、真っ裸で非常扉の前に座り込んでいる倫子がいた。まるで、以前に宮浜と奥津が彼女を発見した時と同様の形である。男達は、しばし言葉を失って立ちつくした。

その時の倫子といえば、日頃客が土足で往来している絨毯にぺったりと尻もちをついて、力なく後ろにもたれかかっていた。肛門も陰唇もその絨毯にお構いなしに密着させ、彼女の身から落ちたのであろう汁が、早くもそこいらに染みを作り出している。

その目は虚ろで、口は半開き、濡れた髪は白い頬に張り付いて、少しくゾッとするような居ずまい。時間が時間だけに、この世のものならぬ存在かしらと疑われるほどだった。

しかし、そこは先だって最も生々しい人間的営みを見ている小男だ、これが幽霊だなんて勘ぐりは端から持っていない。

「な?」

と、連れの男を振りかえって言う。その様子から、ここへ来る前に自分の見たことをあらかじめ説明していたらしいことが窺えた。さらには、別な申し合わせもしていたらしいのである。

「間違いないだろ?」

小柄な男は、重ねて同意を求めた。

問われた男は、興奮気味に二度三度と首を縦に振って答える。

「うん、間違いない!」

そうして彼は、重大な事実を口にした。

「昼間見た奥さんだよ、この人……!」

それを聞き、呆けていたはずの倫子の肩が、ピクリと動く。


<つづく>



(001)19:53~(010)20:15(011)20:18~(020)20:44
(021)20:47~(030)21:07(031)21:09~(040)22:03
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