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小説には、連続作品と一話完結作品があります。連続作品は、左「カテゴリ」の各作品名より一話から順番に読むことができます。また「目次」には、各作品の概要などをまとめた記事が集められています。

■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「青き山、揺れる」 ▼「師匠のお筆」
「大輪動会」(連載中)

短編作品
「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

一話完結
「お昼寝おばさん」 ▼「上手くやりたい」  ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」  ▼「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」
「いたずらの入り口」 ▼「学食のおばさん便器」  ▼「山姥今様」
「おしっこ、ついてきて。」

「師匠のお筆」6-4
『師匠のお筆』


6-4


瑞夫は、書道教室の前に着いた。それは、駅から少し離れた、住宅地の中にあった。近所でありながら家とは別方向なので、今までこちら側に用事のなかった彼は、この辺りに来ること自体初めてだった。

(さすがにちょっと遅かったかな……)

彼は、腕時計を見た。午後六時前を指していた。

まだ完全に日は落ちていないものの、急速に迫る闇が、ぼちぼち道の先の見通しを遮りだしていた。その夕闇と同調するような灰色の四角い建物が、一種不気味な存在感を放って建っている。

子供たちの通う習字教室ということだが、それらしい声は一切聞こえない。瑞夫は、門扉の所でちょっと躊躇した。

(もう帰っているかもしれないな)

内向的な彼の心は、先方に確かめるという作業を厭い、次第にこのまま帰る選択へと傾いていった。そして、実際踵を返しかけた。が、その時――、

(何か聞こえた……?)

女の声が聞こえた気がした。それは一瞬で、しかもかすかなかすかな声だった。だが、彼の足をとどめさせるのには、それで十分だった。

男が性に関して張り巡らせるアンテナは、実に侮りがたいものがある。ごくわずかな手掛かりによってさえ、それを性的関心事に結び付け、妄想をたくましくするものだ。これは男のさがであり、女の想像を超えたものである。

今も、彼の心には、たちまちにしてむくむくと下世話な好奇心がわき起こっていた。

(喘ぎ声……のような……?)

性的好奇心は、思いもかけぬ行動力を呼び覚ます。彼は、辺りをうかがいながら、そろりそろりと建物の外周に沿って歩いていった。

教室の建物の周囲には、そのさらに外を囲む壁との間に、一メートル強の隙間がある。瑞夫は、建物の玄関に入らず、門扉から道をそれて、そちらの隙間へと侵入していった。

(どこから聞こえたのか……?)

声は、もう途切れていた。気のせいだった可能性もある。それでも彼は、大きな期待と確信を持って進んだ。

壁の向こうを眺めてみる。隣の敷地との境界をなす壁、その向こう側には民家があった。あちらは、こちらのように隙間がないようで、壁のぎりぎりに家を建てている。

最初彼は、その二階辺りから聞こえたのかと思っていた。だが、そちらは窓が閉め切ってあって、閑散と人の気配も感じられない。

(まさか、こっち?)

ほどなくして彼は、教室の窓が一つ開いているのを見付けた。どうやら、声はそちらから聞こえたようである。

性に関しては、すさまじい執念と度胸を発揮するのが男という生き物だ。瑞夫は、ドキドキしながらも、思い切ってその窓に顔を近づけていった。

まず目に入ったのは、網戸。続いて、内部の道具類が視界を遮る。窓際には棚があるらしく、そこに何やら雑多な物が色々置いてある様子だ。おかげで、すっきりとは中を見渡させてもらえない。

それでもその隙間から、瑞夫は何とか目を凝らす。部屋の中は電気がついていず、かなり薄暗かった。しかし、次第に目が慣れてくる。――と、

(あっ!)

彼は目をみはった。そこには女性がいた。

女性は壁に手をつき、身を低くして尻を突き出していた。尻から脚部にかけては、何も覆う物無く露わになっている。すらりと伸びた美脚が、薄闇にひと際まぶしかった。

(これは……!)

心臓の鼓動が高まる。件の声は、明らかにその女性が発したものだった。瑞夫は目撃したのだ、セックスの現場を。

いかに期待していたこととはいえ、まさかセックスそのものを目の当たりのしようとは半信半疑だった。人のセックスを盗み見る機会など、そうあるものではない。それが、こんな形で実現しようとは。

よくよく見れば、乳房も露出しているようである。まさにまぎれもなく、ことの最中というわけだ。

(きれいな女だ)

と、瑞夫には見えた。切れ長の眉と尖った顎の輪郭が、引き締まった小顔に映え、鋭敏で勝気な美人を感じさせた。体形も、背中から腰の辺りは洋服で隠れていたが、足の細さから推して、スレンダーなのが連想された。

そんな美人が今、眉根を寄せ、顎を上向けた先から色っぽい吐息を吐いて、後ろから何者かに腰を突かれているのだ。

(誰なんだろう? それに、相手は?)

残念なことに、隙間から見える断片的な視界からは、男性の姿まで確認することができなかった。

もっとも、男性の方に対する興味はすぐに失せてしまった。彼の猥褻な好奇心は、女性の痴態さえ拝めれば、それで満足だったのである。それに、女性の素性すら分からない彼にとっては、男性の情報などなおさら意味のないものと思われたのだ。

だが実のところ、瑞夫には、その男性の素性こそが重大だったのである……。

そうと知らない彼は、無思慮にも、己の股間をまさぐり始めた。

(大丈夫、見つかりはしない……)

性欲いかんともしがたい時、男は時として、理性を見失うことがある。瑞夫もまた、目の前の痴態に引き込まれる余り、根拠のない甘い判断を下すのだった。

彼の股間は、心臓の鼓動とともに激しく拍動していた。そして、おそらくは目の前の女性を貫くそれと同じであろう状態に、彼の肉棒もなっていた。

瑞夫は、遮二無二それを引っ張り出した。せっかくの絶景を前にして、シャッターを切らない手はないとばかりに、彼はカメラを取り出すがごとくにペニスを取り出し、そうして、それをしごき始めたのだ。

(ああ……)

強烈な興奮が、彼を快感の淵に引きずり込む。瑞夫は、まるで自慰を覚えたての少年時代に戻ったかのように、ほとんど一心不乱に肉竿をしごいた。

たとえ子を持つ親となろうとも、この因習からは逃れることができない。彼は、それが幼稚な行いと知りつつも、また、自分が世間で“いい歳”と呼ばれる大人だと自覚しつつも、今この場での手淫を我慢することができなかった。

もし、裏の家の住人がこの状況に気付けば、一遍に全ての地位を失いかねない危険な状況だったが、頭に血の上った彼にはそんな冷静な判断はできなかった。むしろ、そういう緊迫感が、かえって興奮に拍車をかけるぐらいだった。

「アッ! アアンッ!」

目の前の女性が、気持ち良さそうにひと際甲高い声で喘いだ。それを見て瑞夫は、一層激しく右手を動かす。まるで、アダルトビデオを見て、オナニーしている感覚だ。ただそれと違うのは、映像でなく実演の点である。

生の迫力は、映像と比較にならない。それもこの場合、作り物ではなく、自然の性である。他人の生々しい本気セックスが、今目の前で展開されているのだ。

そう思うと、瑞夫は、眼前の女性のことは知らぬながら、彼女が日頃、性とは無縁のような顔をしている様を夢想し、そんな女でもプライベートでこんなセックスをするのかと思えば、それをただならぬ卑猥なことのように感じるのだった。

(エロい女だ)

パンパンと肌を鳴らしながら、男と腰をぶつけ合う彼女を見て、瑞夫の興奮はいやが上にも高揚した。ここが、息子の通う書道教室であることなど、とっくの昔に忘却していた。

そのことがちょっとでも頭をよぎっていれば、彼女がどういう立場の人間なのか予想がついたかもしれない。いかに、彼女の顔を見知らぬとはいえ……。

だが、たとえ女の正体が分かったとしても、その相手がまさか息子であろうとは、瑞夫には想像だにできないことだったろう。子供が、まさかあんな大人の女と、堂々腰を突き合わせていようなどとは!

それは、世間の誰にも予想しづらい事態であるに相違ない。ましてや、彼にとって神雄は息子であり、なおさら小さな子供、何もできない子供、性から最も縁遠い存在と確信していたのだから。

その神雄は、父が覗いているとも知らず、須美恵の尻に激しく腰を打ちつけていた。いきり立った肉棒を、彼女の肉穴にハめ込みながら。

それを見て手淫にふけるのは、彼の父・瑞夫。息子とは知らぬながら、結果的に息子のなす性交を見て、彼は己の肉棒を握りしめているのだった。

「か……君、もっとぉ……あぁ……」

今、確かに須美恵は神雄の名を呼んだ。しかし、喘ぎながら言うのと、声が遠いのとで、幸か不幸か瑞夫にはそれが伝わらなかった。

瑞夫は夢中でオナニーした。彼が夢中である様子は、傍目にもよくわかった。実際、すぐ近くで人が見ているのにも、まるで気が付かなかったのだから。


<つづく>




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「師匠のお筆」6-5

『師匠のお筆』


6-5


――その瞬間、瑞夫の心臓は凍りついた。

先ほどまでの高揚感が、嘘のように引いていく。

彼は油断しすぎた。

ほんの三、四歩の距離に、相手はもう立っていたのである。

(はっ!)

振り向きざまに、瑞夫は眼を見開いた。

薄闇の中に、ぼやっと浮かび上がる白い顔。その顔が、首をかしげるようにして、そおっと瑞夫の手元を覗きこんでいた。

彼は恐怖した。それは、見つかったからの焦りではなく、純粋なる恐れだった。その瞬間、相手がこの世のものではない存在に思われたのである。

(わっ!)

気が動転した瑞夫は、思わず飛び上がって驚いた。いやもう本当に、文字通り飛び上がったのだ。

足を踏み変えるようにして地面を蹴り、手をばたつかせて虚空をつかむ。が、着地が上手くなかった。バランスを崩し、そのまま後ろへとひっくり返る。――いや、ひっくり返ってしまうところであった。

「あっ!」

瑞夫は、小さく叫んだ。その瞬間、彼は、壁に背中を打ち付けることも、地面に尻をつくこともなかった。

ただ、きつい香水の匂いに、鼻腔を占拠されただけである。

「しぃっ!」

白い顔が言う、唇の前に人差し指を立てて。

(女……?)

よく見れば女だ。その女の柔らかな腕が、頼もしくも迅速に、瑞夫の体を抱きとめていた。

すぐに女は窓の中を覗く。そして、瑞夫の方に向き直り、“OK”と指で合図してみせた。中には気付かれていない、という意味だろう。

彼女の立ち居振る舞いは、実に落ち着いたもので、とても変質者を前にした態度とは思われなかった。

(な、なんなんだ……?)

かろうじて女の機転は理解したものの、目まぐるしい状況の変化に、まったくついていけない瑞夫。パニックに陥った彼の頭脳は、もはや思考停止状態だった。

(どうしたらいいんだ……どうしたらいいんだ……)

彼は微動だにせず、ただまじまじと彼女の顔ばかり見つめていた。密着していたために、相手の顔は息が吹きかかりそうなほどの至近距離にある。

女は、ふっくらとした頬の丸顔に、ぼってりと厚ぼったい唇が特徴的だった。唇には真っ赤なルージュが引いてあり、油を塗ったようにその表面をテラテラ光らせている。

と、ふいにその角が吊り上がり、頬にえくぼが浮かんだ。

「ふふっ……」

女はほほ笑んでいた。それに合わせて、目尻のしわが濃くなる。

普段からよく笑うのか、そこには放射状の線がいくつも刻まれていた。彼女の年齢を感じさせる線だった。そんなこと通常なら気にならないのだろうが、こうして近くで見ると、相手の肌の質感などまでよく分かるものである。

(わ、笑ってる……?)

相手は別に笑っていたわけではないのかもしれない。顔立ちが明るいために、普段からほほ笑んでいるように見えやすいのだとも考えられた。

ただいずれにせよ、心落ち着かぬ瑞夫の目には、奇妙で不敵な笑みに映ったのは事実だ。

(一体何者なのか……?)

彼女の表情は自信に満ちて見えた。またその福々しい顔つきから推して、何不自由ない裕福な家庭の夫人か、あるいは彼女自身会社を経営するオーナーか、などと瑞夫は考えた。ある種の貫録まで感じられるのだった。

その推測が当たったかどうかは別として、しかし貫録だけはたっぷりに、ふいに彼女は瑞夫の腕を引っ張って言った。

「あっちでも」

言いながら、彼女は奥の方を指す。

唐突なことで、瑞夫には何のことか見当が付かない。というより、いまだ現実に戸惑っていて、頭が整理しきれていないのである。

しかし、そんな彼にはお構いなしに、彼女は強引に彼の腕を引いて歩きだした。今いた場所を離れ、壁伝いに移動していくこと数歩。そうして、行き着いたのは、これまた窓の前であった。

ただ、今度の窓はさっきよりもやや高い位置にあった。同じ階なのに、さきほどの部屋のよりもこちらの窓の方が高い所にあるのだ。

「ほら、聞いて」

女は、背伸びしながら窓の中を示した。彼女の背では、窓の底辺にも目が届かない。

一方、瑞夫の身長でも、顎を窓枠につけるのがやっとだった。その窓は閉め切ってあり、おまけに中を見通せない濁った材質のガラスをはめてあった。それでも彼は中をうかがいつつ、言われた通りに耳をすましてみる。

(あっ……!)

ほんのわずか、ほんのわずかながら、声が聞こえた。それも、先ほどまで聞いていたのと同じ傾向の声である。

(ひょっとして?)

そんな目で瑞夫は女を振り返った。意外な展開に直面し、一時的に絶望感から解放された気分だった。

女は瑞夫の目に、仔細ありげにうなずき返す。

「こっちでもシてるのよ」

ひそひそと彼女は言った。その顔は、他人の秘密は蜜の味と言わんばかりに、ニヤニヤと悪どそうに笑っていた。

「先生よ、ここの」

尋ねてもいない解説を、彼女は勝手にし始める。

「奥さんと……、あっ、奥さんって言っても、他人のよ」

女の語り口は、まるで近所の主婦が井戸端会議でしゃべっている様を想像させる、気さくな調子だった。

「それも……、生徒さんの……、お母さん!」

ここで女は一旦言葉を切った。相手のリアクションに期待しているらしい。

「お母さん?」

おうむ返しに瑞夫は聞いた。相手の巧みなペースに釣られて、反射的に発した言葉だった。

その時の彼は、相変わらず先行きの見えない不安から心ここにあらず、複雑な表情を浮かべていたのだが、その眉をひそめた様子が、結果的に女の期待に沿うものだったようで、

「そう! 保護者と、……ヤッてるのよ! 先生がよ?」

大いに気分を盛り上げて、彼女は言った。「ヤッてるのよ」と言う前には、壁を叩くようにして部屋の中を指し示し、口の横に手のひらを立ててみせるなど、身振り手振りまで交えた。

(先生? “枕必先生”……?)

少しずつ落ち着きを取り戻してきた瑞夫は、頭の隅の方で、漠然と以前妻の鈴美が口にした名前を思い出していた。

(そうか、枕必か)

もし今の女の話が本当だとすると、中には鈴美だっているかもしれない。

だがその時の彼は、そんなこと思いつきさえしなかった。彼の頭はまだ完全に冴え切っていなかったし、それに何より、妻が浮気するなどとは夢にも思わなかったのだ。

(鈴美にも教えてやらねば)

寝ぼけた頭で、瑞夫はそう考えていた。女の言う“先生”というのが、果たして枕必かどうかの確認もせず、半ば早とちり気味の判断である。そして、その的外れな思いつきに続き、彼は早くも別の疑問にとらわれていた。

(だが、どうやって伝えたものか……)

当然の問題だった。覗きをして得た情報だとは言えないし、そもそも、今の状況を打開しないことには、鈴美とそんな会話を交わすことすらままならないのである。

(いや……、どうにかなるかもしれない……)

彼は、目の前の女を見ていてふと思った。“近所のおばちゃん”といった風の女のしゃべりを聞いているうち、彼にはいつしか、ある期待感が生まれていたのだ。それにともなって、気持ちも段々と落ち着いてきていた。

(このフレンドリーな女に調子を合わせていれば、なんとかやり過ごせるのではないか)
(ひょっとしたらアレは見られていないのではないか)

そんな甘い考えも生まれてきた。と、そこまで考えて彼は気が付いた。

(はっ! しまった、そうだ!)

彼は、さりげなく股間に触れた。いつの間にかしぼんではいたが、まだソレは出しっぱなしになっていたのである。瑞夫は、女の顔を見詰めたまま、何気ない風でジッパーを上げようとした。

が、その時、思いもかけないことが起こった。女が、瑞夫の企みを知ってか知らずか、彼が行動に移るのとほとんど同時に、彼の手に自分の手を重ねてきたのである。おまけに、女は唐突に質問まで投げかけてきた。

「ねえ、見える?」

彼の手の甲をさすりながら、彼女は言った。

「え?」

瑞夫はぎょっとしていた。固まったままで動けない。質問の意味も分からない。

「中の様子」

「ああ、い、いえ……」

瑞夫はやっとこさ答えた。中の様子が見えようと見えまいと、今さらどっちでもよかった。彼にとっての今の関心事は、彼女の真意、その一点のみなのである。

(ただのおばちゃんではない……)

そう思い直した瞬間、恐怖が新たになる。一度淡い期待を抱いた分、余計にショックだった。

「すごいわよね、ここ」

そんな彼の恐怖も知らず、女は、瑞夫の耳に唇を近付けてささやく。

「この中で、二組もセックスしてる」

「ええ……」

消え入りそうな声で、瑞夫は答えた。今はもう、生殺与奪の権利を彼女に握られたがごとく、相手の出方をじっと待つばかり。

(いっそ、ひと思いに責めてくれれば)

どうせ捕まるなら、と、そうも考えた。だが、わざとらしくここまで引っ張ってきたのには、何か特別な意図がありそうにも思えた。

果たして、女は意味深長なことを言いだした。

「興奮しちゃうわよね、こんな所にいると……」

ため息混じりの声が、瑞夫の耳に吹きかかる。妙に官能的なその声は、耳から直接彼の脳髄を揺さぶった。それにつれ吐息の熱までが、耳から全身に広がっていくようである。やがてそれは、彼の股間にまで到達した。

すると、まるでそのタイミングを見すましたように、女の指が、ふわっとそこに触れる。

「ふふっ……」

今度は確実に、女は笑っていた。

「え……?」

瑞夫はわが目を疑った。だが、女は確かに股間に触れていた。しかも、肉竿をその手にくるみすらしだしたのだ。

「興奮……、しちゃうわよ、ねえ?」

これらの言動に接して、その時ようやく瑞夫は確信した。

(見られていたんだ、やっぱり……)

当然と言えば当然かもしれないが、自慰の場面はやはり押さえられていたのである。しかし、それならそれで、なおさら今の女の行動は理解できない。

と、女の胸が腕に当たる。まるで、自分から押し当ててくるようだ。

転びそうなのを助けられて以来、瑞夫の体はずっと彼女に支えられたままでいた。要するに、二人の体は常にくっついていたのだ。それなのに彼は、今ごろになって初めて、彼女が“女”だというのを意識しだしていた。

(何を考えているんだ!)

相手にも自分にも、同時に瑞夫は問いかけていた。

ふと、彼女の胸の谷間が視界に入る。彼女は、薄闇でも目立つ、何やらガチャガチャとした複雑な色と柄のブラウスらしき服を着ていたが、その襟がわずかに開いていて、その隙間から見えたのだった。

腕に当たる感触から言っても、その洋服のせり出し具合から言っても、かなり大きな乳房であるのは確かである。

(どういうことなんだ……!)

瑞夫は逡巡した。状況から察するに、誘われているようである。だが、そんなことがあろうとは、常識から言ってとても考えられない。

(試されているのか?)

そう考える方が自然な気がした。だが、もしそうだとしたら、今の彼にはとても説得力のある振り切り方はできなかったろう。なぜなら、女の手の中で、既に彼の陰茎はむくむくと棒状に成長していたのだから。

瑞夫は、改めて女のことをよく見た。彼の当初の見立てでは、自分の母親と肩を並べるほど、一般的に興味の対象とはなりえないはずの女であった。実際、街で彼女とすれ違っても、簡単に見過ごしていただろう。

少なくとも、彼の中では“熟女”に分類すべき女であって、そして、彼は通常熟女には興味がなかった。

(だって、おばちゃんじゃないか)

そう考えていた。“おばちゃん”とはセックスする気になれないと。

だから、もし彼女がそれを望んでいるのだとしたら、彼の弱味と引き換えにしてやろうとの魂胆なのだと、いつもの瑞夫なら穿って考えるところだった。

しかし、今の彼の感じ方は違っていた。彼女を、あさましい性欲の持ち主、とさげすむ気持ちになど微塵もなれなかった。

確かに、熟女ではあると思う。その認識は変わらない。

(思ったほど老けてはいなさそうだ)

とわずかに判断を修正はしたものの、やはり熟女熟女。少なくとも、瑞夫より年上であるのは確かであったから。

それなのに、彼女はかわいらしく見えた。思えば、瑞夫は、妻以外の人妻の顔を、こんなに近くで観察したことなどなかった。まるで新しい美に気づいた思いだ。彼女は、今や確実に、彼の目に“女”として映っていた。

何より、彼女は魅力的な肉体をしていたのだ!

(もういい! もうどうなってもいい!)

瑞夫はとうとう吹っ切れた。最初にあの窓を覗いた時の、あの積極果敢さを彼は取り戻していた。彼は、男の本能を遺憾なく発揮すべく、まっすぐに女の体に組み付いたのだった。


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「青き山、揺れる」(5)

二人は、どちらからともなく距離を詰めていった。祐子は無論のこと、純粋に熱弁を振るっていた黄本も、やはりいずれそうするつもりではいたのである。彼とて男なのだ。いづ美の置いていった避妊具が、彼に性欲の発露を促していた。

「ン……」

黄本の太い腕が自分の背中に回されると、やっぱり男がいい、と祐子は思う。決していづ美の良さを否定するのではないが、いざこうして黄本の腕に触れてみると、こちらが優位に立ってしまう。結局のところ、今その時感じる温もりが彼女にとっては一番ということだろう。

(――それにしても)

コンドームの箱をちらりと見やりながら、祐子は回想していた。それを置いていった人と今目の前にいる彼との秘め事を見た、あの衝撃的な夜のことを。そう、すべてはあの時から始まった――。


――その日、祐子は努素毛部屋に宿泊していた。といっても、今日のような特殊な目的を持ってのことではない。当時はまだ純然たる取材活動の延長として、また一相撲ファンとして訪問していただけである。

ただその頃から、この部屋と特別懇意にしていたのは事実である。そうでなければ、さすがに泊まっていくことまではしないだろう。その点、既にいづ美のほか部屋の者たちの方からも親しみを持って迎えられていた祐子は、その日晩御飯を馳走になり、そしてそのまま泊まっていくことになったのであった。

彼女は空いている部屋を与えられ、そこで床に就いた。努素毛部屋には空き室が多い。力士の数が少ないからである。幕内から陥落してもう久しくなる筆頭弟子の赤井ですら、単独で一室使わせてもらっている。それ位部屋が余っている。

祐子はそんな部屋の一つを広々と使って眠りに就いていたが、真夜中になってふと目が覚めた。今にして思えば、それが運命だったのかもしれない。特に物音を聞いたわけでもないのに、なぜだかふと目が覚めたのである。

彼女は、就寝中に目が覚めた人にままありがちな例として、何となくトイレに立つことにした。部屋を出て、廊下を歩く。と、そこで妙な声を聞いた。静まり返った屋内ならではに、よく声が通る。祐子ははっとした。

(“あの時”の声だ!)

そんな予感が頭をかすめる。それと同時に彼女の足は、もうそちらに向いていた。そろりそろりと声の方へ忍んで行く。悪いことだとは知りながら、しかしそれへの興味はぬぐいされない。

それは、悪戯心というより好奇心だった。おそらくは親方の黒岩(くろいわ)とその妻いづ美の営みなのであろうが、そうと分かっていながら、祐子はそれを見てみたいと考えてしまうのである。人によれば、知人のセックスなど見たくもないだろうが、彼女の場合は違った。

一つには、黒岩もいづ美も共に好意を持っていた二人だからというのがある。好きな人たちだからこそ見てみたいというのである。

またもう一つには、他人のセックスを一度見てみたいというのもある。他の人はどんなセックスをしているものなのか、自分のを省みる意味でも興味があるのである。

結局それらの理由の根底にあるのは、強烈な性的好奇心、祐子自身の抑えきれない猥褻な性分なのだった。

彼女はそれに突き動かされて、声のする部屋の前まで来た。ちょうど今自分と黄本が居る部屋だ。その前に立って、彼女の胸はドキドキと高鳴るばかり。そして、とうとう彼女は襖に手をかけた。わずかに隙間を作る。“覗き”――その行為の破廉恥さがまた彼女を興奮に誘う。彼女は見た。

(あっ!)

まず目に飛び込んできたのは、人間の尻だった。それも相当巨大な尻で、それがほとんど視界いっぱいに広がる。その尻の両脇から、細い足が逆ハの字形に伸びている。つまり、巨大な尻の下にもう一人いるということになる。

尻の主はうつ伏せ、その下にいる人は仰向け、そして仰向けの人は開脚している恰好、いわば下の人を組み敷いて開脚させている股の間に巨大な尻が入っているわけで……。

(入ってる……!)

そう、入っていた、祐子はしかと見た。尻だけではない。尻の下から出ている黒っぽい肉の管が、下の人の股の間にある穴ぼこへ確かに押し込まれていた。

(すごい……!)

祐子は固唾を飲んだ。確かに期待はしていたが、こんなにそのものずばりの瞬間に出くわそうとは思わなかった。ペニスがヴァギナに挿入されている瞬間、まさにセックスそのものを目の当たりにしようとは!

「アウゥ……アゥッ、アンッ、アッ、もっと! もっとぉ!」

女は悦楽の声でよがっていた。その声の主は、間違いなくいづ美だ。開いた足を時折揺らしながら、彼女は、日頃祐子が聞いたこともない媚びた調子で、女の叫びを上げていた。

「もっとぉぉっ! もっとよぉっ! アッ! アンッ! そう、もっとぶっ込んで!」

男の背中に隠れて彼女の顔は見えないが、きっとその表情は卑猥に歪んでいるに違いない。それを見てみたい、と祐子は思った。美しいいづ美の淫乱な顔を。

それにしても、セックスとはこれほど人を変貌させるものか、と祐子は彼女の乱れように驚愕した。いづ美は割合に活発な人柄ではあったが、性にこれほど積極的だとまでは思わなかった。

無論セックスの話を日常で交わすことなどは通常の付き合いでまずないわけだが、話はしなくても、実際にはこうやって誰でも夜の営みを行っているものだということを、祐子は実地で学んだ思いだった。

見ている間に、いづ美の求めにしたがって、目の前では男性が激しいピストン運動を行っていた。いきり立った剛直が、上から下へズブリズブリと、赤貝のような濡れた秘肉の内へ何度も何度も突き刺さる。

「イーッ……! イヒィーッ……! アッ、上手! 上手よぉぉ……!」

いづ美は激しく啼いた。余りに大きな声なので、家の中の他の者に聞かれないかが慮られるほどだ。いくら夫婦の営みとはいえ、独身者の弟子たちには毒だろう、と祐子は少し心配になった。だが、そんな心配を根底から揺さぶる衝撃の事実が、その後すぐに彼女を襲った。

「アア~ン、いいわぁ、固いわぁ、黄本君のおチンポ。いいおチンポだわぁ、黄本君」

祐子は耳を疑った。いづ美は今、確かにその名を口にした、夫の黒岩ではない名を。弟子の黄本の名を。さらにそれを裏付けることに、男の横顔がその時ちらりとこちらに見えた。それは暗がりでも明らかだった。黄本だった。

祐子はドキリとして固まった。


<つづく>




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「青き山、揺れる」(6)

(どういうこと? これ……!)

祐子は困惑した。他人の性行為を目の当たりにしただけでも驚いていたのに、その上まさか不倫の現場に立ち会おうとは! しかし、紛れもなく目の前では、女将のいづ美と弟子の黄本が、あられもない姿で乱れていた。

「アッ、アンッ! 黄本君、すっごい! すっごい!」

いづ美は相変わらず歓喜の声で猛っている。誰はばかることない大きな声で、夫の弟子の肉棒に啼いている。その声のボリュームは、完全に不倫の情事を家中に証明しているようなものだった。

(どうして……?)

祐子はびっくりしていた。一体どういう了見でこんなあからさまなことが行われているのだろうか、彼女ならずとも驚きいぶかしむであろう椿事である。

しかし、その異常さもさることながら、彼女の思考をひと際占拠したのは、眼前の二人の迫力であった。彼女はただただ圧倒され、その目を奪われた。

どでかい尻が上下に揺さぶられる度、バチンバチンと弾ける肌の音、それに合わせて足元の地面が揺れているのは、決して気のせいばかりではないはずだ。凄まじい運動がそこでは繰り広げられていた。

その運動の中枢にある肉棒はふてぶてしい太さで、洪水のように水浸しの陰裂を広げきっている。それが埋まる時の重量感といったら、見ていて恐ろしいほどだ。きっと、想像を絶する重力が、振り下ろされる度に膣奥にかかっているに違いない。

(うわぁ……!)

祐子は生唾を飲み込んで食い入るように見ていた。無意識に太ももをすり合わせ、わずかに腰を後ろに引く。重いパンチでダイレクトに官能を打たれたかのように、彼女の発情は急速にやる方なくなっていった。

そんな彼女をよそに、二人はまぐわいながら会話を交わす。

「イイッ! アア、イイッ! 黄本君は? 黄本君はおマンコ気持ちいい?」

いづ美が問えば、

「あ、はいっ……! いいです!」

黄本が答える。

祐子はそれを聞いていてちょっと引っかかった。というのも、黄本が自分のファンであることをその時既に彼女は知っていたのだが、そういう男が他の女に性欲を傾けている様子が、どうにもしっくりこなかったからだ。

別に、祐子としては彼に愛を抱いていたわけではないし、彼と深い仲になってもいない。ただ、自分を応援する気持ちと日常の性欲とが、彼の中で別次元のものとして存在している実際を確認し、心中複雑になっただけである。

それには、愛はないとはいうものの欲望の範疇にはあった男がほかへ満足を求めにいっていることと、いづ美がそんな彼とうまいことやっていることへの、軽い嫉妬の情がからんでいた。

すると、そんな祐子の情を見透かしたように、いづ美がこんなことを言いだした。

「アン! ダメ、声出ちゃう。祐子さんにも聞こえちゃうわ」

思いがけぬ自分の名の登場に祐子はドキッとした。いづ美は続ける。

「祐子さん起きたんじゃないかしら。どうしよう、祐子さんに聞こえたら、ねえ、黄本君」

まるで緊迫感のない調子のいづ美だ。実際には聞かれてもいいと思っているとしか思えない。一方、それに対する黄本の反応は、こちらからではよく分からなかった。祐子は、さっきまでより一段と緊張して耳を澄ませた。

「黄本君、祐子さん好きなんでしょ? だったら、ほんとは祐子さんとしたいんじゃない?」

どういうつもりか、いづ美は祐子の話題を黄本に向け続ける。その話題の当人が、近くで聞いているとも知らずに。

「やらしてもらいなさいよ。押し倒して、こうやっておチンポ入れちゃえばいいのよ」

とんでもないことを言いだしたものだ。今晩のいづ美は随分と物騒である。だが祐子としては、黙って見ているしかない。それに、本当に言葉通りになるとも限らないわけだ。

もっとも祐子は、いづ美の言うような状況を想像して、妙な胸の高鳴りを覚えていた。すり合わせている太ももの内側へ、自然と手が伸びる。

他方、黄本は、いづ美のそそのかしに容易に乗らない様子だ。それに対して、いづ美はなおも誘いかける。

「じゃあ頼んであげようか? あの人もねえ、あたしが見たところ、結構好きな方よ。ね? 絶対やらしてくれるわよ」

祐子も自分の知らない所でとんだ評価を下されていたものだ。いづ美の言う“好きな方”とは、やはり黄本のことではなくセックスのことを指すのだろうと、祐子は直感で分かっていた。ずばり見抜かれていたわけだ。

彼女は、体の内がカーッと熱くなるのを感じた。同時に、股間を押さえる手に湿り気を覚える。いづ美に借りたパジャマなのに、その股間に下着を通して染みが広がっているのが分かる。

(あぁ……)

祐子は腰をくねらせて、どうしようもない切なさをアピールした。だがそのアピールを受け取ってくれる者はいない。彼女はただ、他人のセックスを見守って、さらに切なさを高めることしかできない。

黄本という、いわば自分の領域下にあるはずの男の交尾を見て、己は情けなくも欲情することしかできないのだ。彼女は情けない自分を自覚しつつも、たまらなくなって下着の中へ手を突っ込んだ。と、ほとんどそれと時を同じくして、黄本の方にも大きな動きがあった。

「アア~ン!」

艶めかしく媚びた声で啼いて、いづ美は伸ばしていた足を男の背中の方へ巻いた。そうして言う。

「あらあらあら、出てるわぁ」

いわゆる、男の終了の知らせだった。祐子は思わず見る、深々と埋め込まれた肉棒と、それを貪欲にくわえ込む魔物のような淫らな貝を。そこの繋がりでは今、ようやく交尾の目的が達せられているに違いない。時折陰嚢が脈動する様が生々しかった。

いづ美はいじわるっぽく言った。

「祐子さんのおマンコ想像してイッたでしょう? ……すんごく固かった」

それを聞いて、祐子の恥部のうずきは尋常じゃないぐらい激しくなった。

(あぁぁ……固いの……)

彼女はそれを抑えようと、とうとう本格的にそこを慰めようとしだした。しかし、そうはいかなかった。事を終えた男女が姿勢を正し始めたからである。

それを見た祐子は、見つかることを恐れ一目散にその場から退散した。


<つづく>




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「青き山、揺れる」(30)

――以前の話、今日と同じように努素毛部屋に来た時の話だ。その日はあいにく親方と上二人の弟子がおらず、女将のいづ美も来客中で、祐子の応対をしてくれるのが緑川と白木の二人しかいなかった。

例によってやりたい盛りの彼女は、それでもこの二人を相手に満喫するつもりで、早くも股間をむずむずとさせていた、が、緑川が一向興味を示さず、こちらの気持ちを見透かしていながら、あえて誘ってこない。彼がそんなだから、先輩には絶対服従の白木もやはり、後輩として何もできない。

祐子は彼ら二人の部屋――彼らは相部屋であった――に、いわば押しかけてまでいたのだが、やることは決まっているのにそれができず、もどかしい気持ちで手持無沙汰であった。なんとかきっかけをつかみたいが、相手が二人いる状態で仕掛けるのはさすがに勇気が要った。

と、そんな時だ、緑川が白木をけしかけたのは。

「ここでやんなよ」

緑川は、読んでいた漫画から目を離すことなく、そっけない調子で言った。

困ったのは白木だ。彼は祐子と目を見合わせた。やりたいのは山々だが、彼としては緑川にも祐子にも気を使う立場なのである。

一方、祐子も祐子で迷った。やむをえない、とも思い始めていたが、やっぱり傍観者のいる前では始めづらかった。結局、二人はお見合い状態で、しばしの沈黙が流れた。すると、緑川が顔を上げて、白木に向かって言った。

「なんだよ。この人、どうせやりに来てるんだぜ」

それは、祐子を侮る言葉であった。しかし事実ではある。彼女としては反論の余地がない。ただ、そんなにあからさまに指摘しなくてもいいのに、とは思った。こういう嫌味なところが、緑川にはあるのだ。だから付き合いにくい。

祐子は彼と、既に他の弟子と同じように肉体関係を持っていたが、彼はいつもこうやって、言葉で辱めるようなことを言ってくるので、どうにもとっつきにくいのである。性交にまで至れば十二分に満足は得られるのに、そこへいくまでが大変なのだ。だからどうしても、彼と会う前は苦手意識を持ってしまうのである。

「なんだよ、ほら。とっとと脱げよ」

二人がまだもじもじしているのを見て、緑川は白木に今度はやや強く迫った。そうこられると、白木は断れない。黙々と脱衣し始める。そこへ、緑川は重ねて指令を下す。

「とりあえず、しゃぶってもらえ」

彼は白木に向けて言っていたが、それは間接的に祐子に対する指示でもあった。祐子はそれに従い、膝を進めていく。彼の言いなりになるのは悔しいが、プライドを曲げてでも肉欲に忠実な彼女なのである。

白木はほとんど全裸となり、後は下半身の下着のみとなっていた。祐子はその足元に膝立ち、その最後の布を脱がしてやる。ここまでくれば、もはや迷っている場合ではない。彼女は覚悟を決めて、白木の陰茎を口に含んだ。

他方、緑川はそれ以降黙りこくり、何の指示もしてこなくなった。そればかりか、つと立って、部屋を出ていったのである。これは意外なことではあったが、祐子にとっては幸運なことだった。ほっと肩の力を抜く。

さて、それからは二人の時間だ。祐子も白木も、誰気兼ねなく全力で愛し合った。いつもの通り、互いの性器を舐め合い、合体し、体位を変え、くんずほぐれつを繰り返す。そうする内、次第にけだもののごとく本能剥き出しで乱れていく二人。

ちょうどそんな頃だった、彼女が異変に気付いたのは。そこは二人だけの空間、誰にもはばかることなく本性をさらけ出して淫らになれる場所のはずだった。ところが、である。

(誰か……いる……)

急に祐子は背筋に寒気を感じた。と同時に、頭を巡らせて周囲を見渡す。その時の彼女は、白木の上にまたがって、下から激しく突き上げられていた。

(み、見られて……る……?)

視界の端にきらりと光るもの。部屋の入り口の襖の間。祐子の背筋にゾクゾクと寒気が走る。思えば、かつて祐子があの位置で、いづ美と黄本の情事を覗いたことがあったが。

「し、白木君」

ペチペチと白木の胸を叩いて、ストップをかける。快感の波は全身を巡っていたが、緊急事態に接して思考する力はまだ残っていた。

彼女の警戒を受けて、白木もそれに気がついた。相変わらず合体したままながら、瞬時に体を固まらせて、じっとそちらの方を窺いだす。


<つづく>




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ひとみの内緒話
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「青き山、揺れる」(47)

と、その時、さっき部屋を出て行ったいづ美が、ふいに入り口から顔をのぞかせた。

「祐子さん、さっきはごめんね」

そのまま入ってくる。そして、赤井を見、また祐子に視線を向けて、

「あら、これから始めるの?」

と尋ねた。赤井がそれを否定すると、

「今お風呂用意してるから、入っていって」

と、先程緑川を叱責していた時とは一転、すこぶるにこやかに言った。その上で、二言三言、祐子に今日の感想などを聞くと、再び部屋を出て行った。

「じゃあ、一緒に入りましょうか」

赤井はそう言うと、祐子に肩を貸して共に立ち上がる。

「まだ満足してないんでしょ?」

今のいづ美との会話も踏まえて、彼は聞いた。そうして、祐子の膝裏に腕を通し、いとも軽々と彼女を抱え上げる。祐子は彼の両腕の上に肩と足を乗せて、全裸のまま仰向けに抱かれる恰好となる。

「熟女の体もたまには楽しみたいことだし」

彼は言って、そのまま廊下に出た。

“熟女の体”とは、もちろん祐子のことである。赤井は、常々自分が“若い子ずき”であることを公言していた。まるで、四十前後の祐子やいづ美を否定するかのように堂々と。

今日も今日とて“若い子”を求め、明るいうちから性風俗店へと行ってきたのだという。風俗通いは彼の習性だ。身近に女将という性欲処理の相手があるのにもかかわらず、わざわざ金を使ってまでも、彼はそういう所に出向くのである。

彼に言わせれば、いづ美や祐子では本領を発揮できないということだろう。それでも彼女らを抱くことは抱くが、“たまには”などと称し、完全に箸休め的な扱いに思っているのである。

こういった価値観について、祐子には苦い思い出があった。それは、以前に祐子が例によって努素毛部屋を訪問した時のことだ――。


――その日は、生憎ほとんどの者が不在で、部屋に残っていたのは赤井だけだった。いや、厳密に言うと、彼と彼の客人の二人が部屋にはいた。

そこで彼女は目の当たりにしたのだ。そう、いつかの日のような、男女の秘め事を。彼女はまたしても、覗いてしまったのである。

赤井達のいる部屋の隣室に入って、仕切りとなっている襖を細目に開ける。すると、そこにあったのは、仰向けに寝る赤井と、彼の腰の上にまたがる女の姿だった。二人とも全裸である。

女は小麦色に日焼けした肌に水着の跡がまぶしい、ぱっと見た感じ少女といって差し支えない、小柄で健康的な見た目をしていた。そんな子が、ツンと突き出た形の良い胸をプルプル弾ませながら、山のように盛り上がった赤井の腹に手を突いて、小振りな尻を器用に振っている。

「アアッ! ヤバい、チョーヤバい!」

彼女は大人顔負けに媚態をつくって、色っぽく喘いでいた。見かけは少女でも、セックスに関しては、成熟した女のそれであった。

祐子からだと、ちょうど彼らの左側面から見ている形になり、彼女の安定した腰使いがよく分かる。祐子よりも明らかに年下だというのに、彼女のセックスは祐子よりもはるかに洗練されて見えた。もちろん、彼女に対する嫉視の情も影響していたろうが。

「ああっ、亜矢子ちゃん、いいよ! 気持ちいい!」

赤井もいつになく嬉しげである。祐子との性交ではついぞ見せたことのないような、デレデレとにやけた表情を浮かべている。頬の緩み具合がまるでいつもと違う。これぞ、彼の真に求めていた、若い肌とのセックスということなのであろう。

「アフン――すっご! ヤッバ!」

亜矢子と呼ばれた少女は、腰を使いながら顔にかかった茶色い髪をかきあげる。その仕草は、彼女の余裕を表しているように見えた。

そのほっそりとした腰のくびれ辺りを見やりながら、祐子は羨望の情を禁じえなかった。それは、少女の今いるポジションと、そして若さとを羨ましく思う気持ちだった。

同時に、股間ら辺が急速に重く感じられだす。熱を帯びたそこは、内から大量のつゆをこぼし始めたのである。部屋へ向かう道中から既に濡れてはいたが、ここへきてその堰が一気に決壊したようだ。

彼女は我慢できなくなって、スカートの脇から手を入れ、下着の中へと指を滑り込ませる。

(バカ……)

ひとりごちつつも、彼女はいつもの定位置へと指先を移動させるのだった。性毛は既に、愛液の海へと沈んでいる。指はその海を泳ぎながら、難なく陰核の位置を探り当てるのだが、その一点だけを擦り続けるのではなく、時には土手に上がったりして周囲も共にほぐしてゆく。自分で自分を焦らすのである。自慰愛撫にも彼女なりの段取りがあるのだ。

そうして、いよいよ海溝に潜ろうという頃には、祐子は内またでその場に座り込んでしまう。本格的に手淫に没頭しだした証拠である。

薄目を開け、襖の間を見つめる。

「いいっ! チョー気持ちいい!」

ペタペタと尻をぶつけながら、向こうでは亜矢子が華麗な騎乗を見せている。祐子は、それが自分だったらと妄想しながら、恍惚と目を閉じて、中の指の振動を速めていった。快感は急速に登りつめて行く。祐子は眉根を寄せた。完全に自分だけの世界へ彼女は入った。

しかし、それはまずかった。ふいに、ぱっとまぶたの向こうが明るくなって、祐子は目を見開いた。そこには、襖を全開にした赤井が立っていた。


<つづく>




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大輪動会-プログラム#6-

  *

 前原は、誰も居なくなった教室でモゾモゾと動き出した。頭を打ってはいるが、意識に支障はない。実の所、これまでも気を失ってなぞいなかった。むしろ、本当に失神していたかったのだが。

 音だけで聞いた地獄絵図はあまりに壮絶だった。もし自分を騙す為だけの芝居であったなら、どんなに幸せだったろうかと思う。現に静かになった教室には、惨状の形跡など微塵もななく、ただ己の精液がこぼれているのみである。

 彼はその証拠を拭きとると、足音を忍ばせて廊下へ出た。今となっては、誰にも会わないようにと願いながら。

  *

 汗を振り撒いて男同士が引っ張り合う。但し、引いているのは綱でなく女だ。すなわち、男二人による女体の綱引きである。その内“後ろ側”からさっきまで引いていた小林が、自身の番を終えて一服しながら言った。

「体育館裏でタバコとか、昔を思い出すな」

 それを聞いて慶介が自分も吸おうとし、島田からたしなめられる。また、火の始末はきちんとするようにと、小林も注意される。集団レイプはお咎めなしなのに。ここには、先程教室にいた面々が再集結していた。

「オラオラ、チンポ気持ちいいだろ、オバサン」

小林の跡を継いで女陰に肉棒を刺す花村が乱暴に言った。人の親とはいえまだ若く、有紀の一回り年下ではあるが、大仰に彼女を年寄扱いだ。

「見られて興奮したか、この淫乱女」

こちらは口腔を犯す高橋、同じく女をぞんざいに扱いながら、先の出場レースのことを揶揄した。

 有紀は久々に憤った。これまで絶望に駆られて深く落ち込んでいたものが、再び感情を取り戻した格好だ。衆目にさらされての自意識の過剰なる復活は、確かに彼女に影響を与えていた。

 とはいえ、差し当たり何が出来るわけでもない。多勢に無勢だ。いつか逃げ出そうと強く誓い直しつつも、今は男達の罵声を無視するのがやっとだった。

 そんな有紀を、花村が一層いじめにかかる。

「マワされまくって、もう何回もイッてんだろ」

彼は硬いモノで尻側の膣壁をズリズリと大きくこすりながら詰め寄った。二人の密着部には、トロトロの粘液が溢れ返っている。

 もちろん有紀はだんまりだ。仮に口をきくにしても、花村の指摘を認めるはずはない。男ならではの独りよがりと、嘲笑でもって応酬するだろう。

「イキッぱなしか、おい。こんなにチンポハめられんの初めてだろう」

そう花村が問うと、高橋は、

「いや、この女変態だから、どうせヤりまくってるぜ」

と憎々しげに笑った。まだまだ金光夫人を貶め足りない彼である。さらに高橋は、口から抜いたペニスで彼女の鼻柱をしたたかに打ちもした。

 一方の花村は一旦合体を解くと、二本の指をそれに代えてねじ込み、

「派手にイッてみせろや」

と、激しく小刻みに動かした。それに高橋も同調し、

「オラ、イき顔見せろ」

と、犯され女の顎をグイッと持ち上げる。それを横手から覗き込んで不良少年らが面白がった。

「ほらオバサン、イく時は“イく”って教えてよ」

浩樹が言うと、その場の数人が“そうだ、そうだ”と手を打った。それでも有紀が黙っていると、とうとう高橋が言い放った。

「おいコラ、このままグラウンド引きずり出すぞ」

 それまで表情を変えなかった有紀だが、この一言には不用意にも動揺した。

  *

 比嘉は体育館の方へ歩いていた。実は彼一人、群衆の視線がほかへ移りゆく中で有紀の姿を最後まで目で追っていたのだ。彼女は一位でゴールを通過した後、パートナーの父兄達に連れられて運動場を密かに出て行った。そもそもその出走前の様子もあり不審感を覚えた彼は、自身の出場を終えた足で彼女らの足跡をたどり出したのである。

 元々比嘉もまた、有紀に快い感情を抱いていなかった。自身の受け持つクラスに彼女の息子佳彦がいるが、この息子の身勝手もさることながら、それに輪をかけて母親の言い分がひどい。

 佳彦は日常的に指導に従わないことが多く、時には奇声を発し続けてこちらの言葉を遮ったり、試験中に堂々と不正を行ったりし、とかく自分の気に食わないことは受け入れようとしない。それもまた、教師が体罰等の強硬処置に出られないことを知っての上である。

 母有紀はその事実を一切認めないばかりか、ことごとく息子の肩を持ち、そればかりか全てが教師側の責任であると豪語する。やれ依怙贔屓だの、やれいじめだなどと騒ぎ立てる。いわば、モンスターペアレントとモンスターチルドレンの親子なのだ。強気の裏には、無論町議金光の存在がある。

 比嘉にとっての救いは、校内の同僚をはじめ、他の生徒達までもが彼に同情してくれることであった。それ位金光親子の異常性が際立っていたわけで、周囲はとにかく問題に巻き込まれないようにと、彼らを避ける方針に一決していた。

 体育館の傍まで来る。ここに至るや、もう人気はなかった。後は裏へ回るばかりであるが、果たして何やらそちらが騒がしいようではある。

 と、その時、その角から猛スピードで後ずさって来た男とぶつかった。

「あっ、すみません」

反射的に謝る比嘉。ぶつかった相手は、明らかに狼狽した態で、言葉もなく立ち尽くしている。知らない顔だった。

 だが、素性以上に気にかかったのは、その背後、角の向こうの騒がしさである。比嘉は妙な胸のざわつきを覚えて、好奇の目をそちらに向けた。途端に、

「あっ!」

と、思わず出そうになった声を、すんでのところで飲み込む。裸の女が一人、大勢の男に囲まれているのが目に入ったからだ。

 すぐに顔を引っ込めて、思わずさっきの男を見る。すると男の方でも、丸くした目を真っ直ぐに見返していた。彼もまた、自分と同じ状況なのだろうと思われた。

 比嘉は、もう一度足を踏み出した。男との相談よりも何よりも、真っ先に解消しなければならない疑問がある。それは、もはや確信的な事実ではあったが。

 ちらり、と見て、また首を引っ込める。

「やっぱり……」

もう間違いなかった。あのふてぶてしい口元、濃厚な口紅、若づくりな厚化粧、ケバケバしい髪の色、遠目にも明らかだ。何より、あのたっぷりと肥えた乳玉は、当人でしか考えられなかった。

「金光君のお母さん……」

我知らずそうつぶやいていた。すると、それを聞いた傍の男がビクッと肩を怒らせた。つられて比嘉まで驚いた位に。彼は男に問いかけてみた。

「か、金光さん、ですよね」

相手は小刻みに肯き返す。そして、思い切った風に返事をした。

「ご主人に、知らせた方がいいですよね……」

 比嘉は答えかねた。この場合、夫が受ける衝撃は確実な訳で。彼は、もし自分がその立場だったらと思うと、逡巡せずにはいられなかった。

 すると、男は比嘉の返事を待たず、

「とにかく、誰か応援を呼んできます」

と言い捨てるや、焦った態で走り去って行った。随分動揺しているようだが、やたらに行動は早い。

 比嘉は待つしかなかった。別に見張っていろとは言われていないが、また有紀を見る。心臓の動悸が否応なしに高まる。今にあの男が帰ってきて大騒ぎになるだろう。

 すると、そう思った刹那、彼の視線の先で、件のモンスターママが叫んだ。

「イく、イきますぅ! イきますってば!」

  *

「おう、なんだ君は。こんな所へ来ていたのか!」

金光は前原を見て、驚いて声を掛けた。便所に立った帰りにばったりと出くわしたものである。

「妻には会ったのか?」

「ええまあ……」

前原は必死の作り笑いで答えた。会ったも何も、つい今しがた輪姦される彼女を見てきた。比嘉は知るまいが、さっき助けを呼びに立った男こそ、前原だったのである。

「そうか、いや、今日声を掛けたとは聞いていたんだがね。まさか本当に来てくれるとは。――それにしても、あいつはどこ行ったんだか」

金光は言いながら、傍の椅子を勧めた。酒が入って上機嫌である。前原としては一刻も早く立ち去りたかったが、ここは仕方なしに座った。火遊びのツケが回ったものかよくよく運がなく、人気のない道を抜けて出ようと思えば輪姦現場に出くわし、人に顔も見られるし、挙句不倫相手の夫にはつかまるしと散々だった。

 それにしても、彼女は一体これからどうなるものか。目撃者も待機していることだから、遅かれ早かれ事が露見するには違いない。そうなれば町は大騒動だ。目の前の町議も大変な目に遭うこととなろう。前原はいたたまれなかった。


〈つづく〉


人妻官能小説【蕩蕩】







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ママの枕 ~ステージ12~


 その日は間もなく訪れた。いつものように母とスタジオ入りしたコウ。先日の約束を期待し、母と繋いだ手にも力がこもる。一方、母はというと、平生と何ら変わらぬ態で、これからするであろうことにも別段思い入れはないようである。

 一体どんなことをするのか、コウはワクワクしながら母と別れ、タイガの指示通りの場所へ先回りすると、そこの物陰にこっそりと身をひそめた。大道具・小道具が折り重なったその一角は人通りも絶え、また薄暗い。幼い者には大変心細かったが、真実を知りたい彼は頑張ってかくれんぼに耐えた。

 どれ位待ったろう。先程の母の態度を思い出すにつけ、本当にこれからそれが行われるのかどうかを疑い出した頃、ようやっと件の二人がやって来た。コウの緊張が一気に高まる。

「早く済ませてちょうだい……」

ミナミが言った。それは紛れもなくコウの母親だった。彼女は言うが早いか、ブラウスのボタンを外し始めた。

 それを見たコウは、途端に胸騒ぎを感じだした。なぜかは分からないが、心臓の鼓動が早くなって、急に恐ろしくなってきたのだ。

 そんな息子の前で、母はみるみる服を脱いでいった。たちまちの内に、豊満な胸まで露わになる。さらにタイガの指示で、下半身の被服まで瞬く間に脱ぎ去った。

 他方のタイガはタイガで、自分も下半身を露出していた。但し彼の方はズボンとパンツを足元まで下ろしただけで、ほかの服は脱がない。

「じゃあ、しゃぶってよ」

タイガが言った。その時、確かにコウと目が合った。そして彼はニヤリとした。

 途端にコウは背筋に寒いものが走った気がして、視線を脇へ逸らした。ちょうどミナミが行動を起こし、そちらに気を取られた為もある。母はタイガの足元にしゃがみ込んだ。そこから先の行為は、息子の想像を遥かに超えたものだった。

「あっ……!」

コウは息を飲んだ。母がタイガの“おちんちん”を食べ始めたのである。彼はギクリとして固まった。訳が分からなかった。

 そんな彼を尻目に、タイガは気持ちよさそうである。

「相変わらずフェラ上手いね、おばさん。ひょっとしてこのままイかせるつもり?」

少年は笑いながら、後輩の母の頭を撫でる。自分の母親と同い年の女だ。そして、勝ち誇ったように彼女の息子を見やる。

 コウは益々困惑し、タイガとミナミをせわしなく交互に見比べながら、この先の成り行きをただ見守ることしかできなかった。果たして見て良かったのだろうかという思いが、この時生まれた。覗きという行為が、名状出来ない背徳感を助長したものだ。

 ミナミは左手を地につき、それで己の体を支えながら、右手で少年のペニスを持ち上げ、それをひたすら舐めしゃぶる。背の低い相手のこと故、正座の姿勢からさらに腰を折って前屈みになり、髪をぐしゃぐしゃにされながら実にみっともない格好だ。

 タイガのペニスは最初しぼんでいたものが、急速に立ち上がって大きくなっていった。赤黒いそれは、ミナミの唾液によって全身を照り輝かせている。その存在感は薄暗い中でも強烈な印象を放っていた。

 コウは、自分のペニスも硬くなることを知ってはいる。だが何故だか、タイガのそれとは随分違う気がした。そしてもっと言えば、どうして硬くなったのか、また母が何をしているのかに至っては全く理解できなかった。

 さらにミナミは、陰茎にぶら下がった玉袋へと唇を移動させる。その際は主の指令によって右手を離し、口だけでの奉仕を強いられた。すると自然、勃起が顔に乗っかる形となる。

「いい眺め。おばさん、今日も顔エロいよ」

タイガのにやけた表情の下、勃起を鼻に乗せたミナミは、睾丸を舐め、あるいは吸う。時には主の方を見上げる。

「こっち見ながらしゃぶって」

と、彼に求められるからだ。それに絶対逆らわないミナミである。さらに所望は続く。

「じゃ、今度は挟んでよ」

それによって、ミナミは両の乳房を抱え上げた。そして、その見事な量の脂肪球で、すっかりとタイガの陰部を覆い尽くした。

 この目まぐるしい未知の展開を、コウはまんじりともせずに見つめ続けた。とにかくこれが“セックス”というものなんだ、今はただそう片付けるしかない。どうやら“おちんちん”と“おっぱい”がセックスには必要らしく、また“エロい”状態が関係するらしい。少しずつこれまで聞いた単語が線で繋がってはいく。

 それにしても、どうして自分にはしてくれなかったんだろう。コウはふと思った。一緒に風呂に入っても、タイガみたいに舐められたり、胸で挟まれたりしたことがない。その時、ふいにタイガの言葉が思い出された。

『セックスしたことない奴のことだよ』

「そっか……」

ここにきて、コウは肌で理解した。これをする意義はいまだに分からない。しかし、自分は間違いなく“童貞”ではあると。そう実感すると同時に、激しい落胆と、そしてまた嫉妬を感じ始めた。タイガに、且つはまた、ミナミにもだ。

 彼の知らない光景は続く。タイガはミナミを四つん這いにさせると、彼女の恥部を息子の方へと向けさせたのだ。おかげでコウからは、我が母の陰唇が丸見えになった。そこが己の生れ出てきた穴だとは、まだ知らない。

「なんだよ、おばさん。やっぱりもう濡れてるじゃん」

タイガはゲラゲラ笑いながら、今やもうあからさまに見物人の方を見ながら、彼によく見えるように陰門を大きく広げてみせた。縮れ毛に縁取られた肉は、サーモンピンクの具を潤わせ、見物の凝視に耐えている。

 コウは初めて知った。そこに穴があって、そしてそれがそんなに広がるなんて。さらに度肝を抜かれることが起きた。タイガがその中へ、指を、ひいては拳までねじ込んだのだ。

「あ~あ、おばさんのマンコ、ガバガバだから、手が全部入っちゃったよ」

その言葉通り、ミナミの膣には少年の手がすっぽりと隠れ、まるでそこから腕が生えているような状態になった。

「マンコ……ガバガバ……」

実体験によって、少しずつ知識を会得していくコウ。だがどうしてか素直に喜べない。むしろ喪失感こそ強くなる。今思えば、事前にタイガが、

『いいんだな?』

と、念押ししたのも肯ける。今のこの刺激的な不安感は、後悔と呼んで差し支えないものかもしれなかった。

 そんな幼子の懊悩をよそに、母親は次第に女の顔で喘ぎ始める。

「ヒャッ、ア、アア、アアアァァー……ッ!」

タイガに膣をかき回され、淫汁を撒き散らして。

 コウは震えた、見たことのない顔、聞いたことのない声に接して。彼女は本当に自分の母親だろうか。いつも厳しく自分を叱り、また時には抱きしめてくれる優しい母なのだろうか。もはや彼は根本的なことさえ疑い出した。その境地に至りなば、恐怖はピークに達し、じんわりと涙がにじみ出た。

 片や、母の方も別なピークを迎えていた。

「イッ、アッ、ンンンー……ッ!」

女の鳴き声を発するや、ブルブルと尻肉を震わし、瞬間、手を滑らせてその場に伸びた。

「なに、もうイッたのかよ、おばさん」

タイガは笑いつつ、ちょっと緩めた手を、またすぐに容赦なく動かしだした。

 堪りかねて、ミナミがストップをかける。

「も、アッ! もも、もういいから……早く、シ、シなさい、よ」

「あ? うるせえ」

タイガは構わずにかき回す。と、そこからジャージャーと小水が漏れた。コウは言葉を失って、母の失禁を見守った。

「は、早く、もう戻らないと……ねえ、早く終わらせて」

恥をさらしきったミナミは、気だるそうに言った。

「どうせ、スることスるんでしょ? だったら早く」

「早くなんだよ。入れてほしいのかよ、おばさん」

タイガは彼女の口元へペニスを持って行った。すると、ミナミは黙ってそれを頬張った。

「欲しいんだったら欲しいって言いなよ、“チンポ欲しい”って」

「……うるさいわね。入れたいんだったら、とっとと入れなさいよ」

どこまでも平行線な議論に、タイガは別の手を講じた。

「あっそ。別にオレいいわ。代わりにさ、コウの奴呼んできて入れさせようか」

それを聞き、縮み上がったのはコウだ。変な昂揚感が胸に迫ってきて、これ以上ない位に心臓の拍動が速まる。覚悟も何もなかったが、唐突に今から童貞でなくなるかもしれないのだ。タイガと同じように、母と、セックスを!

 が、彼の心は母の言葉によって一瞬で凍りつかせられた。

「嫌よ! やめて!」

「え……」

この時、コウの全てが止まった。それこそ、心臓すら止まったように感じた。彼は自分が母に拒絶されたと思ったのである。

 ミナミは実際に立ちあがってみせるタイガの足にすがって、彼を制止した。

「チンポ入れて。ねえ、チンポ欲しい!」

彼女は必死だった。それを受け、タイガも思い直し、

「分かってんじゃん」

と薄ら笑いを浮かべて言い放つと、ミナミの尻の方へ回り、コウから見えるようにと気を遣いながら、彼女の淫肉を再びよく広げた。

 暗澹たる気持ちに沈むコウ。彼の目に、また驚くべき光景が飛び込んできた。これ以上ないと思っていたところへ、まだ新鮮な驚きがあったのである。

 彼は見た、母の割れ目に“おちんちん”が入っていくのを。

「え……!」

そこにそれが入るなんて、あまりに突飛なことで、もはや付いていけなかった。彼の脳みそはもうとっくに飽和状態だ。

 タイガはその小柄さ故、相手の巨大な尻に乗っかかって腰を振る。まるで小兵力士の相撲を見ているようである。敵との体格差は歴然だ。ところがどうだ、弱っているのはむしろ大きな方で、

「……ア、ア、アッ!」

と、次第にまた喘ぎ始めたのである。若くして戦上手な少年は、硬化した肉棒で彼女のスイートスポットを絶妙にほじくるのだ。

 これには、たとえ彼の三倍以上生きているメスとて脱帽である。彼をオスと認め、性悦に浸るを得ない。心を置き去りにしても、体が悦んでしまうのだ。折しも、既に高潮した肉体である。

「イッ、イ、ヒィ……オオォー……ッ!」

「ハハ、またイくんだ。おばさん、すぐイくね」

男は得意気に笑った。そしてまた、意地悪く言った。

「こんなにエロかったらさ、コウのチンポでも興奮するでしょ? 実は家でヤッてたりして」

再び耳をそばだてるコウ。そこへ、ミナミがダメを押した。

「バ、バカなこと言わないで。するわけないでしょ」

 これでコウは確信した、自分は母とセックスできないのだと。彼は寂しさのあまり涙を流した。もう嫉妬すらも薄らいできた。生まれて初めて知った孤独。

 彼の前で、仲の良い両人はそろそろ共同作業に締めを迎えようとしていた。

中出しするよ」

そう言うと、タイガはにわかにブルブル痙攣し、一層強くミナミにしがみついた。今、息子の眼前で、母は父以外の男の精子を注ぎ込まれていた。

 終わると、白濁した陰茎を、タイガはまたミナミにしゃぶらせた。相変わらず従順な彼女。その膣内から、白い汁がスーッと滴り落ちた。

 コウは膝を抱いて固まったまま動けなかった。と、そこへ別の方面から事件が訪れた。それも一度に二つだ。

「おお、遅かったじゃん、ヌマちゃん」

と、タイガが呼びかける方から一人のむさくるしい男が現れた。知らない大人の登場に驚かされたのは、どうやらコウだけらしい。タイガも、いやミナミすらも見知っているようだ。

 これが衝撃の一つ目。そして、二つ目はコウの背後からやって来た。

「よっ! 何してんの?」

小声でささやく男の声。コウが危うく声を出しそうにするのを、その端正な口元に人差し指を添えて止める。

「シー!」

どうやら積み上げられた機材の下をほふく前進でくぐり抜けてきたらしい。それなん、ジンであった。


〈つづく〉


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ママの枕 ~ステージ13~

 増えた観客の前で、新しいキャストは早くも演戯を始めた。登場、即挿入。それはわずか五秒と経たない内に。

「ンアアーアァ……ッ!」

二本目のペニスも軽く飲み込んで、ミナミは惰性で喘いでいる。
 
 当初二人は対面して合体していたが、タイガが気を利かせて指示したので、すぐに男が背面に回る格好になった。彼の膝の上で大股開きする母。息子からは彼らの結合部が丸見えというわけである。

「うわあ、派手にヤッてんなあ」

ジンがぼそりと言った。そしてまた、

「おっ、アイツは……」

と、タイガに目を止めてつぶやいた。タイガは合体中のミナミに口淫をさせ始めていた。

「こんなとこで3Pかよ。よくやるよな、誰が見てるかも分からないのにさ」

ジンはそう言ってコウの共感を誘ったが、生憎相手は無反応であった。そればかりか彼の横顔が妙に深刻そうであったので、ジンは方針を改めた。彼としては、少年のマセた覗き趣味をからかってやるつもりだったのである。

「そういえば君は……」

まじまじとコウを見つめていて、ジンは少年の素性を思い出した。コウはちょっとビクッとして振り向き、その時やっとジンが、テレビでよく見る有名人だということに気が付いた。二人は以前、既に一度挨拶を交わしていた。その際は、ミナミも同席である。

 ジンはコウのことを覚えていたが、その母親の顔までは記憶していなかった。ただ、この子役のただならぬ気配に接し、目の前の状況と見比べて、なんとなくの推測を立てた。

「知ってる人?」

と、ミナミを指して尋ねてみる。コウは無言で肯いた。ジンはそれを受け、さらに踏み込む。

「……お母さん?」

すると、少年はまた素直に肯いた。ジンは彼の目をじっと覗き込んだ。相手は視線を逸らし、あくまでも母の方が気にかかる様子である。彼にとって今は、スターとの会話にも価値がないらしい。

「いいのかい?」

ジンは訊いた。それは、目の前の状況をこのままにしておいていいのか、という意図であったが、コウには通じなかったようだ。そこで彼は、別な提案に変えた。

「止めてやろうか」

コウはちょっと考え、そして困ったような顔をした。まだよく意図が伝わっていないようだ。そう判断したジンは、少し訊き方を改めた。

「嫌ではないの? その、お母さんが、アイツらとセックスして」

慎重に、しかし核心を突く形で尋ねる。コウはこれでも答えに窮していた。ウーンと考え込む風で、何も言わない。ジンはまだ色々訊きたかったが、あまり質問攻めにするのもかわいそうだと思い直した。ただそれとなく感じたのは、この幼い者が、ひょっとしたらこの現状に関して明確な判断材料を持っていないのではないかということである。

 その頃、眼前の痴態には動きがあった。挿入を解いた男が、射精を始めたのである。それもミナミの顔面に向けてだ。

「うわあ、ひでえことしやがる……」

ジンは、横目でチラチラとコウを見ながらつぶやいた。コウは相変わらず無言である。その表情からは、怒りも悔しさも読み取れなかった。ただ、まんじりともせずに、ザーメンのシャワーを浴びる母の顔を凝視していた。

 ペニスから噴射するこってりとした白濁液は、容赦なく彼女の顔面に降り注ぐ。働きづめの男の、溜まりに溜まった欲棒汁、それは濃かった。プルンとした形のままで、容易に流れ落ちもしない。それが、綺麗に塗られたアイシャドーや頬紅に上塗りしていく。

「ヌマちゃん、はえ~よ。ていうか、すんげえ出たな」

タイガは、ヌマタの挿入から射精までの時間の短さと、それに比して精液の量の多いことを揶揄して、ゲラゲラと笑った。顔面への射精は、彼の指示である。観客へのサービスであった。

 ミナミは彼の陰茎に加えて、今射精を終えた陰茎も同時にしゃぶらされた。片方を口に入れている間はもう片方を手でしごき、時には舌を伸ばして二本同時に舐めさせられもし、またあるいは頬ずりもさせられた。

「AVの見過ぎだっての」

ジンは呆れて苦笑いである。

 片や、コウは汚されていく淫母の顔を真剣な眼差しで見つめていた。二人の男と一遍にセックスしてしまう母。タイガはおろか、見ず知らずの、しかも小汚いオヤジの“おちんちん”までもあっという間に、タイガが使った後のあの穴に入れさせてしまう母。そして、“おしっこ”のようでそれとは違う白い汁を顔に浴び、その後“おちんちん”をまた食べて……。

『多分その辺の男みんなにオマンコさせてるから』

以前タイガから聞いた断片的な情報が脳裏をよぎる。“ママはいつもこれをみんなとやっていたんだ”と、コウは判断を抜きにして、ただただ理解だけした。それにしても、息子である自分とは、したくないと言うのに!

 再びタイガが挿入する。仰向けに寝かせたミナミの尻を高く持ち上げ、ほとんど自分は真下へ垂直に入れるような角度で。その入った瞬間に、母の目が一瞬裏返ったのを息子は見逃さなかった。

「アアウッ、ア、アハアァ……!」

彼女の声は艶めかしく、明らかにヌマタの時とは違った。彼女にとって、男性器の大きさだけで判定するものでないらしい。その意味で反応は正直だった。小さき男の背に手を回し、

「きぼちいひぃ~……」

と、露骨にメスの悦びを謳歌しさえしてみせる。

それを見たジンは、

「言っちゃなんだけど……」

と、ちょっと遠慮しながらも、

「君のお母さん、結構スケベだね……」

と、コウを試すように言った。息子の立場ならば、既に激昂、下手をすると発狂していてもおかしくない場面。しかしコウは、やはり静かだった。ジンはそっと、彼の股間を窺った。

 他方ミナミは、ヌマタにフェラチオしながら、タイガの肉棒に女陰を掘削されていたが、やがてタイガがまた膣内に子種汁を注入し始めると、その状況説明を彼の命でやり出した。

「あぁ……出てるわぁ、タイガ君の精子、オマンコの中、入ってくるわぁ~……」

彼女はそれが、無知な息子に向けた解説だとはつゆ知らない。

 タイガが離れると、すかさずヌマタが代わって交尾を始めた。すると、先程よりもミナミの反応は薄くなった。やはり、タイガの技巧には届かないらしい。歳は上でも、ヌマタとタイガでは経験数が違うのだ。こうなると、もはやヌマタの性欲解消にミナミが一方的に使われているようなものである。

 一方タイガは、今日は二発で満足したらしく、つと立ち上がるとコウの方を見て言った。ジンはすぐさま身を隠す。

「オレ、もう行くわ。後は好きなようにヤッてよ」

それは、表向きヌマタに言ったようであったが、その実コウに向けての合図だったことを、コウは知っていた。コウは肯き返して応じた。それを見ると、タイガは実際去って行った。

 二人のやり取りを、これまた鋭く見抜いたジンは、彼らが知り合いであるらしいことを察知し、その上で、ヌマタを指して訊いた。

「あの男も知り合いかい?」

 コウは首を振った。結局ヌマタだけを二人とも知らないのだった。

 その知らない男が一番厚かましくミナミを抱く。彼は二発目を膣内に注ぎ入れると、またしゃぶらせたり、乳房に挟ませたりした挙句、三回目、そして四回目と挿入をやった。ミナミはダッチワイフだ。ひたすら精液の排泄を受け止める。

 その様子を見守りながら、ジンはまたコウに話しかけた。

「君は、ヤらないのかい?」

すると、コウはまた困った顔でジンを見返した。今度はさらに悲しみを帯びた目だったので、慌ててジンはフォローした。

「ごめんごめん、スるわけないよな、自分の母親なんかと」

この一言はコウにとって衝撃的だった。彼は目を見開いた。ジンの問いかけに対して、初めて示した反応らしい反応だった。

 相手が急に身を乗り出したのでちょっとびっくりしつつも、ジンは丁寧に言葉を付けたした。

「いや、だって、母親と普通シないもんな。君は、シて……るの? まあ、シてるんだったらそれはそれだけど」

コウはブンブンと首を横に振った。その表情は、パッと明るいものに変わった。それを見て、ジンは悟った。彼が本当に性に対して無知らしいことを。

「そう、よかった。近親相姦になっちゃうからね」

「キン……?」

「要するに、親子でセックスは出来ないよってこと」

 やっと打ち解けられた喜びから、愛おしそうに目を細めるジン。コウもコウで、急に射し込んだ希望の光に、眩しそうに笑った。彼はもう、全ての悩みから解放されたのである。

 そこへ、ジンが新たな課題を投げかけた。

「君は、セックスしたことあるの?」

 コウは恥ずかしそうに首を振った。母に嫌われていないと分かった今、童貞であることに落ち込みはしなかったが、ただなんとなしに照れを感じていた。それこそ、性の目覚めだった。

「タイガともまだヤッてないんだ?」

意外な質問に、“ん?”という感じで、見つめ返すコウ。タイガとセックスする、その発想はなかった。

「じゃあさ……」

ジンはコウの耳元にグッと近寄った。

 その時、ヌマタに向けてミナミが言った。

「いつまでヤッてんのよ、この早漏」

 下手なセックスのおかげで次第に体が冷めてきた彼女、しつこくも五回目の合体を始めた彼を咎めたものである。これにはヌマタも恐れをなした。

 それでも、

「これで最後にしなさいよ」

と、ラストの一発を許すあたり、彼女自身も弱さがあった。ミナミはもはや喘ぎもせず、口をへの字に結んで横を向きながら、ただただ射精を待つ。まるで職業的な性交である。

 ヌマタはそこへガシガシと腰を振るが、さすがに五発目の連射である上に、怒られて面食らった所為もあり、今度はイくのが遅かった。

 これにイラついたのがミナミである。

「さっさと出しなさいよ」

と急かすが、そう言われると余計にプレッシャーを感じて萎縮するのが男心というもの。そこでやめさせるのは簡単だが、そうはさせないのもミナミである。彼女は相手の尻を掴んで、グッと手前に引き寄せてやった。すると、たまたまその際にタイガが開発したスポットにヌマタが当たったものだ。

「ンッ……!」

思わず、久しぶりのメスの声が漏れた。その反応に興奮を覚えたヌマタ、ここぞとばかりにラストスパートをかけた。

「ちょっ、待っ……!」

弱い所に当たったままで突かれ、にわかにミナミは焦りを覚えたが、二人の交尾はもう止まらない。結果、同着で昇天した。その後ミナミは、正気であれば絶対に拒絶するはずの接吻を交わし、汗みどろの出っ腹や胸毛と密着して抱き合いながら、彼の鎮まるのを待った。そして、

「はい、もういいでしょ」

と言うのがやっとだった。それを聞くと、ヌマタはいともあっさりと身支度をして帰っていった。

 残されたミナミは気だるそうに起きると、ポケットティッシュを取り出して陰唇を拭う。二人計六発の精液を自らの指で掻き出す。続いて、ハンカチで胸を中心に拭き、コンパクトを取り出して顔を確認。そしていそいそと服を着ると、トイレに向かって去って行った。

 後に残ったのは彼らの汁と、そして傍観者一人。ジンはもう居ない。

 コウは高潮した頬で、ぼうっとさっきジンにささやかれた一言を考えていた。

「ボクと、セックスしてみない?」

幼い股間は密かに温もりを帯びていた。


〈つづく〉


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