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このブログには、エッチなことがたくさん書いてあります。まだ18歳になっていない人が見ていい所ではありません。今からこんな所を見ていると、将来ダメ人間になってしまいます。早くほかのページへ移動してください。

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■連続作品
◆長編作品
「子宝混浴『湯けむ輪』~美肌効姦~」

◆中編作品
「青き山、揺れる」
「師匠のお筆」

短編作品
「大輪動会」  ▼「ママの枕」  ▼「ブラック&ワイフ」
「夏のおばさん」  ▼「二回り三回り年下男」  ▼「兄と妻」

一話完結
「お昼寝おばさん」 ▼「上手くやりたい」  ▼「珍休さんと水あめ女」
「栗の花匂う人」  ▼「乳搾りの手コキ」 ▼「妻つき餅」
「いたずらの入り口」 ▼「学食のおばさん便器」  ▼「山姥今様」
「おしっこ、ついてきて。」

「師匠のお筆」6-4
『師匠のお筆』


6-4


瑞夫は、書道教室の前に着いた。それは、駅から少し離れた、住宅地の中にあった。近所でありながら家とは別方向なので、今までこちら側に用事のなかった彼は、この辺りに来ること自体初めてだった。

(さすがにちょっと遅かったかな……)

彼は、腕時計を見た。午後六時前を指していた。

まだ完全に日は落ちていないものの、急速に迫る闇が、ぼちぼち道の先の見通しを遮りだしていた。その夕闇と同調するような灰色の四角い建物が、一種不気味な存在感を放って建っている。

子供たちの通う習字教室ということだが、それらしい声は一切聞こえない。瑞夫は、門扉の所でちょっと躊躇した。

(もう帰っているかもしれないな)

内向的な彼の心は、先方に確かめるという作業を厭い、次第にこのまま帰る選択へと傾いていった。そして、実際踵を返しかけた。が、その時――、

(何か聞こえた……?)

女の声が聞こえた気がした。それは一瞬で、しかもかすかなかすかな声だった。だが、彼の足をとどめさせるのには、それで十分だった。

男が性に関して張り巡らせるアンテナは、実に侮りがたいものがある。ごくわずかな手掛かりによってさえ、それを性的関心事に結び付け、妄想をたくましくするものだ。これは男のさがであり、女の想像を超えたものである。

今も、彼の心には、たちまちにしてむくむくと下世話な好奇心がわき起こっていた。

(喘ぎ声……のような……?)

性的好奇心は、思いもかけぬ行動力を呼び覚ます。彼は、辺りをうかがいながら、そろりそろりと建物の外周に沿って歩いていった。

教室の建物の周囲には、そのさらに外を囲む壁との間に、一メートル強の隙間がある。瑞夫は、建物の玄関に入らず、門扉から道をそれて、そちらの隙間へと侵入していった。

(どこから聞こえたのか……?)

声は、もう途切れていた。気のせいだった可能性もある。それでも彼は、大きな期待と確信を持って進んだ。

壁の向こうを眺めてみる。隣の敷地との境界をなす壁、その向こう側には民家があった。あちらは、こちらのように隙間がないようで、壁のぎりぎりに家を建てている。

最初彼は、その二階辺りから聞こえたのかと思っていた。だが、そちらは窓が閉め切ってあって、閑散と人の気配も感じられない。

(まさか、こっち?)

ほどなくして彼は、教室の窓が一つ開いているのを見付けた。どうやら、声はそちらから聞こえたようである。

性に関しては、すさまじい執念と度胸を発揮するのが男という生き物だ。瑞夫は、ドキドキしながらも、思い切ってその窓に顔を近づけていった。

まず目に入ったのは、網戸。続いて、内部の道具類が視界を遮る。窓際には棚があるらしく、そこに何やら雑多な物が色々置いてある様子だ。おかげで、すっきりとは中を見渡させてもらえない。

それでもその隙間から、瑞夫は何とか目を凝らす。部屋の中は電気がついていず、かなり薄暗かった。しかし、次第に目が慣れてくる。――と、

(あっ!)

彼は目をみはった。そこには女性がいた。

女性は壁に手をつき、身を低くして尻を突き出していた。尻から脚部にかけては、何も覆う物無く露わになっている。すらりと伸びた美脚が、薄闇にひと際まぶしかった。

(これは……!)

心臓の鼓動が高まる。件の声は、明らかにその女性が発したものだった。瑞夫は目撃したのだ、セックスの現場を。

いかに期待していたこととはいえ、まさかセックスそのものを目の当たりのしようとは半信半疑だった。人のセックスを盗み見る機会など、そうあるものではない。それが、こんな形で実現しようとは。

よくよく見れば、乳房も露出しているようである。まさにまぎれもなく、ことの最中というわけだ。

(きれいな女だ)

と、瑞夫には見えた。切れ長の眉と尖った顎の輪郭が、引き締まった小顔に映え、鋭敏で勝気な美人を感じさせた。体形も、背中から腰の辺りは洋服で隠れていたが、足の細さから推して、スレンダーなのが連想された。

そんな美人が今、眉根を寄せ、顎を上向けた先から色っぽい吐息を吐いて、後ろから何者かに腰を突かれているのだ。

(誰なんだろう? それに、相手は?)

残念なことに、隙間から見える断片的な視界からは、男性の姿まで確認することができなかった。

もっとも、男性の方に対する興味はすぐに失せてしまった。彼の猥褻な好奇心は、女性の痴態さえ拝めれば、それで満足だったのである。それに、女性の素性すら分からない彼にとっては、男性の情報などなおさら意味のないものと思われたのだ。

だが実のところ、瑞夫には、その男性の素性こそが重大だったのである……。

そうと知らない彼は、無思慮にも、己の股間をまさぐり始めた。

(大丈夫、見つかりはしない……)

性欲いかんともしがたい時、男は時として、理性を見失うことがある。瑞夫もまた、目の前の痴態に引き込まれる余り、根拠のない甘い判断を下すのだった。

彼の股間は、心臓の鼓動とともに激しく拍動していた。そして、おそらくは目の前の女性を貫くそれと同じであろう状態に、彼の肉棒もなっていた。

瑞夫は、遮二無二それを引っ張り出した。せっかくの絶景を前にして、シャッターを切らない手はないとばかりに、彼はカメラを取り出すがごとくにペニスを取り出し、そうして、それをしごき始めたのだ。

(ああ……)

強烈な興奮が、彼を快感の淵に引きずり込む。瑞夫は、まるで自慰を覚えたての少年時代に戻ったかのように、ほとんど一心不乱に肉竿をしごいた。

たとえ子を持つ親となろうとも、この因習からは逃れることができない。彼は、それが幼稚な行いと知りつつも、また、自分が世間で“いい歳”と呼ばれる大人だと自覚しつつも、今この場での手淫を我慢することができなかった。

もし、裏の家の住人がこの状況に気付けば、一遍に全ての地位を失いかねない危険な状況だったが、頭に血の上った彼にはそんな冷静な判断はできなかった。むしろ、そういう緊迫感が、かえって興奮に拍車をかけるぐらいだった。

「アッ! アアンッ!」

目の前の女性が、気持ち良さそうにひと際甲高い声で喘いだ。それを見て瑞夫は、一層激しく右手を動かす。まるで、アダルトビデオを見て、オナニーしている感覚だ。ただそれと違うのは、映像でなく実演の点である。

生の迫力は、映像と比較にならない。それもこの場合、作り物ではなく、自然の性である。他人の生々しい本気セックスが、今目の前で展開されているのだ。

そう思うと、瑞夫は、眼前の女性のことは知らぬながら、彼女が日頃、性とは無縁のような顔をしている様を夢想し、そんな女でもプライベートでこんなセックスをするのかと思えば、それをただならぬ卑猥なことのように感じるのだった。

(エロい女だ)

パンパンと肌を鳴らしながら、男と腰をぶつけ合う彼女を見て、瑞夫の興奮はいやが上にも高揚した。ここが、息子の通う書道教室であることなど、とっくの昔に忘却していた。

そのことがちょっとでも頭をよぎっていれば、彼女がどういう立場の人間なのか予想がついたかもしれない。いかに、彼女の顔を見知らぬとはいえ……。

だが、たとえ女の正体が分かったとしても、その相手がまさか息子であろうとは、瑞夫には想像だにできないことだったろう。子供が、まさかあんな大人の女と、堂々腰を突き合わせていようなどとは!

それは、世間の誰にも予想しづらい事態であるに相違ない。ましてや、彼にとって神雄は息子であり、なおさら小さな子供、何もできない子供、性から最も縁遠い存在と確信していたのだから。

その神雄は、父が覗いているとも知らず、須美恵の尻に激しく腰を打ちつけていた。いきり立った肉棒を、彼女の肉穴にハめ込みながら。

それを見て手淫にふけるのは、彼の父・瑞夫。息子とは知らぬながら、結果的に息子のなす性交を見て、彼は己の肉棒を握りしめているのだった。

「か……君、もっとぉ……あぁ……」

今、確かに須美恵は神雄の名を呼んだ。しかし、喘ぎながら言うのと、声が遠いのとで、幸か不幸か瑞夫にはそれが伝わらなかった。

瑞夫は夢中でオナニーした。彼が夢中である様子は、傍目にもよくわかった。実際、すぐ近くで人が見ているのにも、まるで気が付かなかったのだから。


<つづく>




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「師匠のお筆」6-7
『師匠のお筆』


6-7


誘われていることは、瑞夫にもすぐに分かった。

(ああ、いよいよ……)

この流れで合体しない結末などありえない、という風に、アブノーマルに始まった行為にもかかわらず、いつしかそれは当然のことになっていた。

だが、いざそれに移る前に、二つのちょっとした不安が彼の脳裏をよぎっていた。

第一に、どういう形で結合したらいいか、という問題である。野外で、しかもこんな限られたスペースでなしうる体位を、瑞夫はまだ経験したことがなかった。

しかし、これについては、彼に選択の余地などなかった。

(立ちバック!)

それは、文子からの指定だった。彼女は後ろ向きになると、自らスカートをめくって尻を出し、パンティーラインを脇にずらして見せたのである。

(後ろから犯して!)

文子はこの体位を気に入っており、枕必にもよくせがむのだった。

瑞夫には経験がなかったが、こうなっては冒険するしかあるまい。向かい合ってする体位も予想していたが、それより簡単そうだったし、いずれにせよ新奇なことへの興味もあったので、もとより否やはなかった。

(生で……するんだな)

さていざ彼女の尻に手をおきながら、ほんの一瞬瑞夫は思った。それが第二の問題として浮かんだものだった。

瑞夫は、避妊具を付けずに性交したことが、これまでほとんどない。本当の子作りのためだけにしたばかりである。夫婦間の交渉も、いつもコンドームありだった。

彼が一瞬ためらったのは、それ故にいつもと勝手が違うからだった。

(いいのか? いいんだな?)

相手の何も言わないことが、それについての回答だった。彼女には、避妊する気など端からないらしい。それでも瑞夫は、何となく背徳的な気分になった。

(生挿入か……!)

妻にもほとんど試したことのないそれを、会ったばかりの見ず知らずの女にする、妊娠や病気の虞もあったが、それらはむしろ念頭になく、瑞夫はとにかく“生ですること”それ自体にこだわっていた。

普段それを習慣づけない彼にとって、それを許されて行うことは、それだけで興奮の材料であった。

(入れるぞ!)

瑞夫は、自らを奮い立たせるように、心に叫んだ。

すぐに、亀頭を小陰唇の襞に密着させる。暗がりで、挿入口の辺りはいまいちはっきり確認できない。感覚だけが頼りだ。彼は亀頭の先を、ビラビラした肉襞にくっつけたまま上下してみる。

それを感じた文子は、勘違い気味に思う。

(ああん、焦らすのね)

彼女はじれったく思ったが、悪い気はせず、早く肉棒で貫かれるのを待ち望んで耐えた。

瑞夫も、早く入れたいのは同じだ。彼は、結局穴の位置を曖昧に認識したまま、ごり押しで挿入することにした。

相手の腰をつかみ、自分の腰を前方に押し出していく。すると、少し位置が高かったようで、直立した肉棒は先端から下に押さえつけられる形となり、結果斜め下方に肉を割って進んでいくことになった。

(ああ! あったかい!)

亀頭の表面では分かりづらかったが、幹部まで埋めると、女の体の熱が一遍に感じられた。

女の方でも同じである。

「アアッ!」

思わず文子は、少し大きめのボリュームで声を上げていた。歓喜の声だった。

(来たわ、来たわ!)

肉棒のぬくもりが嬉しかった。体の中に男を迎え入れられる喜びに、彼女の心は沸いた。それは、女としての本能的な喜びだった。体内に男が存在する、その間こそ、女に生まれてよかったと感じられる、至福の時という。

(いいわぁ! これ!)

肉穴を突き入ってくるそれの存在感に、文子は満足していた。彼のモノと枕必のそれを比べてどうのこうのという考えは、彼女にはない。ただ男が入ってきさえすれば、とりあえず良いのである。

だから、いつもと違うモノ、という実感はあまりなかった。この点は、瑞夫と大いに異なる。

(入れたんだ! ついに!)

妻以外の女とセックスできたことは、彼の気分を高揚させていた。その高揚感が大きすぎて、妻への申し訳なさなどは、さしあたり思い浮かばなかった。

そればかりか、妻の穴を思い出して、それと今の感触とを比較するのも難しかった。なんといっても、忘れかけていた生挿入の快感と感動が、彼の心には充満していたのである。

(うわぁ……なんだこれ!)

穴の中は熱い。密着する肉から、その熱が伝わってくる。決して肌を触れ合わせただけでは分からない、相手の本当の体温といった感じだ。

肉は濡れていて、それは肉竿の全方位に、ピッチリと余すところなく密着している。その表面は柔らかいのだが、柔らかいながらも、ギュウッと押し出して圧迫してくるので、どこか固いようでもある。

肉壁の当たり方が、コンドーム装着時とは明らかに違うことに、とにかく瑞夫はびっくりしていた。

ところで、こういう感動というのは、何も男に限ったことではない。女の方でも、男と感じ方は違うとはいえ、一定の心理的影響を受けるものである。

彼の妻である鈴美も、やはり日頃しつけないせいから、生身での挿入には少なからぬ感慨を抱いたものであった。彼女の場合、それを夫よりも早く経験していたわけだ。すなわち、枕必との不倫の中で。

現に鈴美は今も、外に夫がいるとも知らず、枕必のペニスを何の障壁もなしに体内へと受け入れていた。

「アェアア~ッ……!」

ゴリゴリと野太い男根が膣内を行き来する度、鈴美は気の遠くなるような快感を覚え、だらしなく口を広げ、よだれまで垂らして喘ぐのだった。

むき身のままの生殖器官を後ろから膣に挿入されるその有り様は、まるっきり動物の交尾と同じである。

薄布一つないだけで、肉棒の肌がぴっちり肉襞と接着するように感じられ、それは、男女の結合の生々しさ、あるいは真の姿を鈴美に教えてくれるような気がした。

彼女は、そもそもセックスそのものの流儀を枕必から習ったつもりでいたが、その一環から、避妊をしない交渉の正当性めいたものまで、いつしか信じるようになっていた。

(アア~……ン……先生のが、いっぱいに……)

膣の中が、枕必の肉棒で隙間なく埋められている状態を夢想し、鈴美は喜んだ。避妊具を使用していないことも含めて、これが愛のあるセックスの証だと思った。

鈴美は、枕必との性交渉において、これまで避妊をしたことがない。彼による熟練のエスコートのままに、初回から何の違和感もなくそうしてきて、その後もその流れで今日まで来た。夫とのコントラストは鮮明だった。

と、彼女の胸の柔肉に指を喰い込ませながら、ふいに枕必が言った。

「旦那さんとは、最近どうなんだい?」

彼もやはり瑞夫が外にいようなどとは知らなかったので、そんな話題を持ち出したのは偶然だった。

「あ、あの人のことは……ア~……アァ~……!」

鈴美は頭を横に振ってみせた。神雄のこともそうだが、とにかく現実に引き戻されるようなことは言われたくなかった。まだ彼女には、こだわりが残っていたのである。

「何もそうむきになることはない。なあ?」

言いながら、枕必は彼女の頬を撫でる。

「こっちが気持ちいいんなら、それだけでいいじゃないか。んん?」

「アッ……! アフアァァ……」

具体的には説明できないものの、枕必の言わんとしていることを、鈴美は体で承知していた。今や彼によって与えられる肉の悦びは絶対で、夫のある身ということを前提にしてもなお、この悦びを否定しようとはしなかった。

下世話な話、もしも枕必が、

「夫のモノとどっちがいい?」

と聞けば、それに迷う鈴美ではなかった。彼女は堂々と、たとえ道義的にそれが許されぬことと自覚していても、あえて枕必の方を何のためらいもなく挙げただろう。妻であり母であることとそれは、決して矛盾しないのだと。

余談ながら、万が一、

「さっきの筆と、夫と比べたら、どうだ?」

と尋ねられても、彼女はほぼ迷いなく答えたであろう。“筆”であると。

憐れなのは夫・瑞夫であるが、筆よりも劣位に置かれたことはもちろん、妻がすぐそこで寝取られていることすら彼は知らない。彼は今、彼自身の不倫の性に夢中である。

そんな瑞夫に対して、ふいに文子が言った。

「ねえ」

言いながら後ろを振り返る。

「先生、見ながらしましょうか」

(先生?)

瑞夫は、ふいの提案にたじろぎながらも考えた。

(でも、この窓からじゃ見えなかったからなあ)

今の彼にとって、先生といえば枕必しか思いつかなかった。この教室本来の主のことを、彼は失念していた。

「うふっ、このまま動ける?」

文子は戸惑う瑞夫の手を後ろ手に取って、結合したままよちよちと歩き始めた。移動先は、最初の窓の前である。

「あら、見えないわね」

行き着いた先で、ひそひそと彼女は言う。

瑞夫も覗いてみる。確かに、そこに先ほどの女の姿は見えなかった。ただ声だけは時折聞こえてくる。どうやら窓の隙間からは見えない位置に移動したらしい。

もっとも、瑞夫にとってはそれよりも、枕必は奥の部屋にいると思っていたのに、手前の部屋にいると文子が指摘したことの方が疑問であった。彼は、思わずつぶやいていた。

「ん? 枕必は……」

すると、そのかすかな独り言を、文子は聞き逃さない。

「あら? 枕必先生をご存知だったの?」

彼女は意外そうに言った。そして、そのすぐ後に、彼女にはピーンとくるものがあった。またしても彼女は、勝手な情報をしゃべりだす。

「そうそう、つい最近も新しいお母さんを食べちゃったのよ。真面目でおとなしそうな人」

別に、瑞夫が鈴美の夫だと見抜いたわけではない。ただ、なぜかそういう話を今思いついたのである。言うなれば、女の直感というやつであろう。

「今あっちの部屋でやってるのも、その人とだと思うわ」

文子のこの情報で、瑞夫の疑問はとりあえず解消した。目の前の部屋にいるのは、枕必と別の師範であることが分かった。

だが、それと同時に、妙な胸騒ぎを感じずにはいられなかった。鈍感だった彼の心にも、ようやく危機感が芽生え始める。“最近” “新しい” “お母さん” “真面目” “おとなしい”これらのキーワードが示唆するものは何か。

ことごとく、鈴美を指し示すものではなかったか?

とはいえ、まだ彼は、それを具体的に推理していたのではない。ほんの一瞬、それも漠然とそんな不安が閃いたというにとどまる段階だ。けれど、その漠然とした不安が、彼の心に微妙な影を投げかけたのは事実だった。

そうして瑞夫の男根が一段と固くなったのを、文子だけがいち早く察知していた。


<つづく>




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「師匠のお筆」6-8(最終回)

『師匠のお筆』


6-8


「アア、いいわ! その固いので早く突いてっ!」

一層の硬度を体内に感知し、期待で膣壁をうずうずさせながら文子は言った。

確かに瑞夫の固さは、今日一番だった。はっきりそうと意識はせぬものの、妻が寝取られているかもしれぬとの可能性をちらりと閃いた影響から、そうなったのである。

かくもねじれた心理を、どうして彼が抱くにいたったのか。彼にとっては、もはや夫婦間の危機ですら肉欲のスパイスにしかなりえないのだろうか。とにかく瑞夫の陰茎は、ひと際固く、そして大きくなっていたのである。

「アンッ! そう、もっと、もっと!」

文子は、その発達した剛直を気に入っていた。それをずんずん突き入れられ、その腰つきに合わせて起こる快感の波を意識しながら、彼女は悦び喘ぐ。

もしこれを鈴美が味わっていたら、彼女はどう思っていただろう。どうしてそうなったかの経緯は置くとして、とりあえず大きく・固くなった瑞夫のそれに触れたとき、彼女の性欲が枕必から彼に向き直る可能性はあっただろうか。

答えは、否である。多くの女がそうであるように、鈴美にとっても、肉棒の質なぞ大した条件ではない。むしろ相手や、その人との関係が問題なのである。彼女の体が発情するのは、相手が枕必という憧れの存在であればこそなのだ。

もっとも、瑞夫のそれがいくら今のような大きさになろうとも、実際には枕必のものがそれをさらに上回るスケールだったので、いずれにせよ彼に勝ち目はないのであったが。

さてその枕必の立派な肉棒で、今しも鈴美は肉穴を突きまくられている。

「アッ、アッ、アッアッアッ……!」

外に夫のいることは知らないから仕方ないかもしれないが、隣の部屋に息子のいることは分かっているのに、それでも鈴美は大胆に喘いでしまう。だがもし夫の存在に気づいていても、結局結果は変わらなかっただろう。

彼女にとって、枕必、ないし彼によってもたらされる快楽は、もはやすべてに優先する事項というわけである。

それが証拠というべきか、鈴美は今、一糸まとわぬ生まれたままの姿を彼の前にさらけ出していた。息子にいつ見られてもおかしくない、この危機的状況下においてである。およそ破滅的志向と言わずばなるまい。

これを命じたのは、無論枕必だ。彼は、自分は服を少しも脱ぐ気がないくせに、鈴美には、有無を言わさぬ実力をもって、全裸になれと命じるのである。

彼がこんな無茶を言うのは、実は少々鈴美に飽き始めているからである。

恋愛でもなんでも、時を重ねるごとに要求がエスカレートしていくのが自然だから、枕必の求めは理に適っているし、実際鈴美もその順序に沿う形で彼に従っているのであるが、枕必にとって現在の段階は、既に退屈の始まりであった。

なぜなら、彼が鈴美との関係で楽しみにしていたのは、性のイメージからほど遠い良妻賢母をいかにして籠絡するかという、その一点であったからだ。

それが済んだ今、彼女は通常の愛人と同じであり、それなら彼には足りているし、もっと好みの女もいるのである。

(悪い玉じゃあない)

枕必は思った。

(これの恋心はそれなりに楽しめた)

思いながら、指の腹でフニャフニャと乳房をいじくる。

(だが、物足りないな)

彼の豊富な履歴に照らせば、彼女との今後を類推することは容易であった。彼は、いつしかこれまでに付き合った女の中に鈴美と似たタイプを見つけ、その所属するカテゴリに彼女を分類しようなどと思案していた。

と言っても、表向きはそんな素振りを一切見せないのが彼の信条である。鈴美の前で、あくまでも彼は紳士だった。

「どうだ? 筆よりも、やっぱりこっちの方がいいだろう」

紳士は言った。このセックスをより良いものにしてやろうとの彼なりの気遣いである。

「こういう筆の方が、気持ちいいんだろう?」

「はっ、うぅっ……、はいぃ、はひぃぃ……!」

鈴美は彼の問いかけに答えたつもりだった。だが、度の過ぎた快感のせいで狂ったように歪む口では、思いのほか鮮明に発音できないのであった。

「ひっいぃおち、いひ……、きひ、おち……いいでふぅ……!」

「ははっ、そうか、気持ちいいか」

彼は笑った。呂律の怪しい物言いも、彼にはちゃんと理解できているらしい。そうして言うよう、

「困ったなあ、こんな淫乱な弟子は」

憐れむような口ぶりだ、快楽に魂を売った、目の前の三十路女のことを。

「この前やった筆もだが、師匠のお筆は、みんなこっちに挿すのか君は」

(ああ……師匠のお筆……)

鈴美は思った。

(なんて素敵……!)

ちょうどそう思った瞬間だった。ガシャン! いくつかの置物が転げ落ちる。壁についていた手が滑って、傍の棚にぶつかったのだ。

「こらこら、あまり音を立てると、本当に聞こえるよ」

枕必がやんわりと叱る。隣室には神雄のみならず、枕必の娘・須美恵もいるのだから、彼としても、別に好き好んでそちらに知らせたいわけではない。

もっとも、彼はこれまでどんな女と付き合ってきたときも、殊更に娘にばれないように気遣ったりなど、何ら積極的な努力をしてはこなかったが。

「ダメじゃないか、しっかりしないと」

枕必は、鈴美のわき腹辺りを抱えて彼女を起き直らせると、自分の体ごと彼女を壁に押し付けた。そうして、彼女の髪に口をつけて囁く。

「ちゃんとしないと、神雄君に笑われるよ」

言いながら、密着した腰を前へ前へ押し出す。すると、鈴美の尻肉が枕必の下腹に圧迫されて歪んだ。

「“お母さん、ちゃんとセックスしてるのよ”って。“あなたの傍でも、ちゃんとセックスできるのよ”って。ほら」

枕必は、歪んだ尻肉をつまんで左右に引っ張った。おかげで、鈴美の肛門まで広げられ丸出しになる。

(神雄……神雄、ごめんね……。お母さん、枕必先生が好きなのぉ……!)

枕必の責め言葉で官能を掘り起こされ、肛門までさらされて鈴美はもだえ狂った。

「アアーッ! アッ、アヘェッ~!」

壁に半分口を押し付けたまま、鈴美は喘ぐ。枕必が後ろからくっついてくるので、自然とそんな格好になってしまうのだ。開けっぱなしの口からはだらだらとよだれが垂れ、舌は行き場なく壁を舐めている。

(気持ちいい! 気持ちいい!)

彼女はもう肉欲の虜だった。

そんな彼女に、枕必が畳みかける。

「先生のチンポが、好きで好きでどうしようもないんだな」

(ああ! 好きです! 先生のおチンポ! 先生のおチンポ!)

心で鈴美は応答する。もはや何を言われても無条件で受け入れてしまう境地だ。

「向こうの神雄君にも見せてやろう」

(おお! 神雄! お母さん、枕必先生のおチンポが、気持ちいいのぉっ!)

そして、鈴美は狂い啼く。

「オッ、オッ、ォアアッ! ァハァッ! ンッンッンッ……!」

と、その啼き声が終わらぬうちに、パシィィンッ! 彼女の背中を、したたかに打つものがあった。枕必が、言葉責めの効果をさらに倍加させるつもりで、彼女に平手打ちをくれてやったのである。

期せずして、この時、平手打ちの音は隣の教室にも響いていた。ちょうど同じ頃、ただし、音の出所は別で。

「アヒィッ!」

須美恵は、尻をぶたれて啼いた。ぶったのは神雄だ。つい先ほどまでとは立場が逆転したわけである。

別に、さっきやられた仕返しというのではない。彼女の尻を上から眺めているうち、何となく叩いてみたくなっただけである。

彼としては、いつになく大胆な行動だった。彼女と関係を結んでから数カ月、ようやく彼も慣れてきたということだろう。漠然と、“怒られはしない”、という勘も働いていた。

実際、須美恵は怒らなかった。むしろ好ましく感じていたほどだ。

(ああ、この子ったらこんなことするの?)

須美恵は、神雄の中に男性の力強さを見た気がした。それに彼女の中の女性の部分が惹かれ反応する。

「アハァッ!」

須美恵の口から、色っぽい吐息が漏れる。

神雄は一打では飽き足らず、二打、三打と平手打ちを浴びせかけた。手に当たる感触を面白がっている様子だ。

ペチッ! ペチッ! その的は、尻から背中にまで至る。打ちすえられたところは、ほのかに朱に染まっていった。

「ウフゥッ! アンッ! アハァン!」

打たれる度に、須美恵は熱っぽい声を吐く。

(ちょっと調子に乗ってるみたいだけれど……、でも……、悪くないわぁ)

鷹揚に彼の振る舞いを許しながら、彼女は感じていた。

神雄だってそうだ。元より、彼のペニスは須美恵のヴァギナに突き刺さっているのである。

ペチャン! ペチャン! ペチャン! 肉茎の出し入れの度に、肌のぶつかる音が鳴る。少年の体重に比例した軽い音である。

だがその軽い一撃でも、女を啼かせるには十分なようで、

「アッ、アッ、アンッ!」

肌の響きに合わせ、須美恵は満足そうに声を上げるのだった。

そうして彼女の濡れた肉穴が、神雄の未発達な肉茎をくるめば、ほどなく彼の性感は、限界近くまで高まるのだった。

(ああ! イきそうだ!)

そう心に叫んだのは、神雄ばかりではなく、教室の外にいる瑞夫もだった。息子と同じく、彼も今射精を身近に感じていたのである。

パンパンパンパン……! 肌の打ち合う音が鳴る。もう誰に知られることをも恐れずに、瑞夫は激しく腰を前後させて、文子の尻を揺さぶっていた。

「アア~ッ! アガァ~ッ! いいわぁ! いいわぁっ!」

文子も自分の世界に没頭して、ただただ快楽をむさぼる。そして、屹立した男根で、肉穴をほじくられる悦びに震えた。

「もっとぉっ! アブァァッ! もっとぉぉん!」

窓枠にしがみつき、豊かな乳肉をブルンブルン揺らす。乳房の反動は大きすぎて、時には壁にぶち当たり、激しくはじかれもした。

(ダメだ! 出る! このまま……このまま!)

精嚢から尿道にこみ上げてくる強烈な感覚、その快感に瑞夫の腰は止まらない。肉壁に亀頭がこすれる度にガクガクしながら、彼はハチャメチャに腰を振りまわした。

「来てぇっ! 来てぇぇっっ!」

射精が近いことを敏感に察知して、文子が叫ぶ。

勢いづいていた瑞夫は、それを聞き、なおさら肉棒を抜き去る努力を放棄した。

(うあっ! 中出し……! このまま! ううっ!)

快感が脳天を突きぬける! 瑞夫の腰は、ちょっと浮いたようだった。この瞬間、大量の精液が瑞夫の肉竿からほとばしり出たのである。

「はあっ! 出てる! 出てる出てる!」

ブルブルと尻の脂肪を震わせる文子。今彼女の膣内には、多量の精液が噴射されていた。その振動と、その熱さが、彼女の体内を躍動させる。

(出てる! 出てる!)

まだ惰性で腰を振る瑞夫。文子の大きな尻にしがみついたまま。

その時!

(出てるわぁ、神雄君の……)

と、須美恵。

(ああっ! 先生の! 先生のが流れてくる!)

同じく、鈴美。

この瞬間、まったく奇跡的なことながら、三本のペニスから、時を同じくして、一斉に三つのヴァギナへザーメンが放たれていたのである!

(熱い! 熱いわぁ! 先生の精液がいっぱい中に……!)

枕必の精液を膣内にあふれさせて、鈴美は窒息しそうなほどに興奮していた。彼の愛人に夫が射精していることも、彼の娘に息子が射精していることも知らないで、幸せそうである。

枕必だって、娘が、今自分が中出しした女の息子に、逆に中出しされているとは知らない。また、知ったところで大して驚きはしないが、自分の愛人が浮気していることも知らない。

娘も、父親の日頃の行状は知っていても、今しがた自分に射精した少年の母親に、彼が現に隣室で射精していようなどとは思いもしない。

(ああん、神雄君の、いっぱい出るようになったのね)

ただただ無邪気に須美恵は喜んでいた。

神雄は、彼女の悦びを知らない。そもそも彼は何も知らない。大人たちの思惑を何も。いや、知らない方が幸せかもしれない。

母親が隣で父親以外の男に膣内射精されたことや、父親が外で会ったばかりの女とセックスしたこと。父親については、自分のセックスを覗いたばかりか、それを見てオナニーすらしていたのだ。

もちろん、その父親は、覗いたセックスが息子のそれとは知らないのである。そればかりか彼は、ここに息子や妻がいることすら知らない。

その上、息子がまだほんの少年のくせに一人前にセックスしていることや、妻が他人にいつも中出しされていることも知らない。

中出し……気持ちいい……!)

瑞夫はのんきにも、ただ自分の射精に酔いしれているのみだった。

文子だけが、一部の関係を知っていたが、しかし彼女もやはり、今日の相手が誰なのかを知らないのである。

この卑猥なトライアングルの中で、彼らはただひたすらに肉欲をむさぼるだけの獣だった。


<おわり>




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<6章 目次>
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「兄と妻」(急)

   急



――運命のその日、奇しくも会社は早仕舞いだった。こんなことは、少なくとも入社してこのかた初めてだった。後になって思えば、それは不吉の予兆だったのかもしれない。

しかし、賢次はもちろんそんなことを考えもしない。むしろ早くに帰宅できることを幸運とすら感じていた。それが証拠に、途中でケーキまで買って帰るという浮かれぶりを見せたものだ。今日が特に何かの記念日というのでもないのにである。彼は自らのいつにない気まぐれに、兄のような気ままさを見つけた気がしてほほ笑んだ。

そうして家へ帰る道すがら、彼の胸は幸福に満たされていた。目に映る全てが輝いて見えた。

自宅近くに来ると、近所の子供たちが道の上でケンケンパをしてあそんでいる。表通りはもう随分と進んだが、ここいらはまだ舗装されていない道も多かったもので、子供たちはそこへ丸や三角を書いて遊んでいたのである。

その横を物売りが台車を引いて通り、少し先の角では見知った顔のおばさん連中が井戸端会議をやっていた。そういう風景が、明るい日差しの中にきらめいている。もう夕方近かったが、夏の太陽はまだ高かった。

賢次は自宅に到着した。しかし、玄関の引き戸の前でふと立ち止まる。そうだ、いつかの兄のように、庭から入って驚かせたらどうだろうか、それは急に湧いて出た悪戯心であった。

その思いつきを早速彼は実行に移した。ぬき足さし足で玄関を逸れてそちらの方へ回り込んでいく。我が家に入るというのに、まるで空き巣のようである。

庭の入り口まで来ると、案の定縁側は開け放たれており、その上テレビの点いているのが見えて、居間に誰かがいるのは明らかだった。それを知ると、もう賢次はわくわくとして笑顔を禁じえない。

彼は今にも吹き出しそうなのを必死に堪えながら、相手に気取られぬようにそおっとそおっと近づいていった。テレビの前に仰向けに伸びる足が徐々に見えだす。すね毛の感じからそれは兄だとすぐに分かった。

だが、腰の辺りまで見えた時、賢次は、おや、と不思議に思った。さらに、腹、胸と見えて確信する、兄は裸であると。それと同時に、賢次は妙に嫌な感じを覚えた。そして、自分でもどうしてそうしたのかは分からぬが、とっさに身を低くして、庭と外を隔てる壁の方へと行ったのである。

それは、動物的勘というものだろうか。本能で危険を察知し、反射的に行動をとったものだ。彼はまた、驚くべき鋭敏さでもって事態を把握しようとしていた。人間、想定外の状況に置かれても、存外冷静に分析できるものである。

そもそも、暑い盛りのことでもあり、兄が裸で寝ているからといって別段驚くには当たらないはずである。だが、賢次の冷静な洞察は、平常ではない何かを早くも見抜いていたのだ。彼の動悸は次第に激しくなっていった。

彼は苦しい胸を押さえながら、庭石の陰に隠れた。兄が友人から貰ってきたというそれは、そもそも庭とは名ばかりの我が家の狭い敷地には不釣り合いな、かなり大きなものだった。

今にして思えばこのためにわざわざ兄が配慮したのではないかというぐらい、身を隠すのにおあつらえ向きなその裏にしゃがみながら、賢次は一時も目を離すことなく居間を見つめる。

一糸まとわぬ姿で肘をつき仰向けに寝る兄。それはよい。問題はその向こう。確かにその向こうに何者かがいる。それはかつて想像だにしなかった状況、しかしながら、今は胸をかき乱されそうな疑惑の場面。

果たして、それはすぐに確信に変わった。まるで彼によく確認させようとでもいうように、その人物は上体を起こしたのである。乳のまろみが胸板の上を斜め下に滑り落ちる。右手を後ろに突っ張り、左手で顔にかかったほつれ毛を直し……。

賢次は息をのんだ。どうして見間違えようか。それは彼の妻だった。確かに全裸の妻だった。

男女は寝転がってテレビを見ていた。ほどなく男も上体を起こし、女に何事か話しかける。女は笑った。テレビのことを言ったのか、それとも、愛のささやきだったのか。こちらまでその声は届かなかった。

二人は気だるい感じで肩寄せ合って、実に仲睦まじく語り合っている。傍目にはまるで夫婦のように見える。しかし、彼らは夫婦ではない。彼は夫の兄であり、彼女は夫の妻である。そして、夫は、庭にいる。まるで空き巣のように自分の家に忍び込んで、兄と妻の裸を見ている……。

それは、青天の霹靂にしても余りに奇想天外だったし、空想としても突飛過ぎた。賢次にとっては思いもよらないどころか、天地がひっくり返る位ありえるはずのないことだったのだ。

しかし、現実に見せつけられてしまっては、もはや信じるも信じないもない。動かぬ証拠というわけである。男女が裸で寝そべっていることに、一体ほかのどんな正当な理由があるだろうか。

事実は小説よりも奇なり、彼の脳裏にはそんな警句が渦巻いて離れなかった……。

ふと夫は気づく。縁側の上に皿が、その上に西瓜の皮が並んでいることに。彼の好物である西瓜の皮が。彼はそれが買ってあったことすら知らなかったが、ひょっとしたら彼が食べるはずだったかもしれないものだ。それは彼を癒すもの、家に稼ぎをもたらす夫を楽しませるはずのものではなかったか。

そういえば、二人の見ているテレビも、二人を冷ませている扇風機も、みんな夫が買ったものである。兄が買ってきたものなど一つもない。かろうじて兄の手のものがあるとすれば、今夫が身を隠している不格好な置き石だけだ。

夫の今の境遇のなんとみじめなることか。彼は暗澹たる気持ちに一気に沈みこみながら、受けた衝撃の大きすぎるために立ち上がることもままならなかった。

そんな彼をよそに、目の前の二人はつと立って、見えないところへ行ってしまった。二人の姿が消えたことは、賢次の目の前が真っ暗になったのとちょうど一致するようだった。

認めたくなかった。兄と妻が不倫の愛を営む、そんなことがあり得るわけないではないかと。

ふと思い出す。そういえば、妻が深刻な様子で何かを切りだそうとした日のあったことを。もしかしたら、あの時何かのきっかけがあったのではないか、そんなことを思う。もっとも、今となってはどうしようもないことだ。

そんな状態でじっと固まっていて、一体どれほどの時間が経ったろう。滝のように流れる汗が、背中にぴったりとシャツを張り付けた。

と、彼の視界に再び妻が、それに続いて兄が現れる。まだ裸、である。それになぜか、彼らの体にも多量の滴が伝っていた。――行水、そのフレーズが頭に閃く。

いつかの日、彼が帰ると慌てて奥から走り出てきた妻。行水をしていたのだと言った。後から出てきた兄も、そう、行水と。二人で、行水を……。我が家の自慢の風呂で、二人。その露見を恐れ、着の身着のままに夫の前に走り出る妻。悲しくもつじつまが合った。

白昼、彼らはいつもそうして過ごしていたのだろう。いつも家にいる兄と妻、夫のいない二人の時間、彼らはこうして不貞の関係を愉しんでいたのだ。だらだらと、淫らに。

我が物顔で台所の椅子に座る兄。そこへビールを出す妻。以前の賢次なら何とも思わなかった。たとえ人が働いている間、昼間から酒を飲んでいても、そればかりか、家の物を何気兼ねなく消費しても。兄なら何でも許せた。

だがしかし、だがしかし――瞬間、賢次は目をそむけた。グラス片手に立ち上がった兄、その足元に、妻が膝折って立ち、なんと、なんと彼の陰茎を口にくわえたではないか。

自分の物はことごとく兄のために使ってもいい、だがしかし、妻までもなのか! 賢次は戦慄した、現実の残酷さに。そして、妻の淫乱ぶりに震え慄いた。賢次は目を逸らした、つもりでいた。だが実際には、一寸も首を動かせなかった。

だから、彼は見ていた、その一部始終を。妻が両手を膝の上に揃えて兄の陰茎をしゃぶり、それにともなって陰茎が膨らみ起き上がっていく様を。

兄はコップのビールを妻にも与えてやった。妻は彼の手ずから与えられるままに飲み干す。そしてまたしゃぶる。また飲む。またしゃぶる。まるで酒のつまみのように陰茎を食す妻。

足もとから兄を見上げるその格好は、まるっきり餌を貰う犬のようだ。仮に犬にしてもすっかり飼いならされてしまっている。夫は妻の変貌ぶりに愕然とした。

しかし、驚愕の事態はそれだけにとどまらなかった。その時、電話が鳴ったのであるが、それに出た妻への兄の仕打ちは、もはや正気の沙汰とは思われなかった。受話器を握る彼女の尻を引き寄せ、なんと合体したのである。

「アンフッ!」

艶めかしく腰をくねらせて、妻がため息を吐く。背中に走る溝の影が、男根を受け入れた女の悦びを生々しく表わしているようだった。さらに、続いて妻が口にした言葉は夫を震え上がらせた。

「あ、お義母さん……」

なんと相手は田舎の母だった。電話だと大きな声音になるのか、明らかにさっきまでより妻の声が聞き取りやすい。分けても母の名は、賢次の耳膜を鋭くつんざいた。

「……ええ、今、お掃除を……」

呼吸を荒げて妻が言う。賢次の脳裏である回路がつながった。またしても記憶と符合する事態だ。あの時も、そうあの時も彼女はそう言った。では、あの時も……。

兄は容赦なく妻の尻へ腰をすり寄せる。先ほど膨張した兄の肉茎は、完全に妻の腹の中に埋まっていた。やがて、パチンパチンという肌と肌のぶつかる音がこちら側にまで響きだす。

「ア……お、お義兄さんたら……」

妻は甘えるように言い、その口角には笑みが浮かんでいた。彼女は兄と電話を替わる。まったく同じだ、あの時と。ではあの時も、夫と通話をしながら、彼らはこうして白昼堂々股間を突き合わせていたわけだ。

あの時はまったく気づかなかった。妻が自分としゃべりながら兄の肉茎に貫かれていようとは。また兄が妻を犯しながら平然と自分と話をしていようとは。よくもまあぬけぬけと、夫をないがしろにできたものだ。まったく狂者の仕業だ、賢次はそう思った。

しかも今は、あろうことか母までも欺いている。母の前で、堂々と不義密通を働いている。

妻は兄に受話器を渡した後、前のめりに体を折って、電話台の脚の下の方をつかみながら、もはや完全に肉欲に心を支配された者のごとく、ただただ息荒く喘いでいた。その顔は生殖を悦ぶメスそのものだった。

兄もまた母と会話をしながら、ただひたすら妻との肉交を愉しんでいる。彼らにはもはや人間的理性などないのだろうか。動物的野蛮な性欲のみが彼らを突き動かしているようである。

「……ああ……うん……仲良くやってるよ……」

兄は母に話す。そうして、その言葉を実証するつもりなのか、一層深々と肉茎を突き入れて、やがて電話を切った。

直後、彼が妻から離れると、両者の股間からポタポタと白い汁が垂れ落ちる。とうとうこの恥知らずな兄は、母との会話中に弟の妻へ子種を注ぎ込んだのだ。将来母が抱く初孫は、彼の子かもしれない。

もっとも、兄には何らやましいところなどないだろう。その心理が、弟の賢次には何となく分かる。兄は本当に、ただ目の前の欲望に忠実なだけなのだ。決して弟を害そうなどと計画してやっていることではない。

万事行き当たりばったりな男なのである。妻のことも、最初から狙っていたわけではないだろう。彼にとっては、この肉欲の戯れが楽しいだけなのだ。

他方、妻はどうだろう。妻は一体どういうつもりでやっているのか。兄の子ができてもよいというのか。夫に対してどう思っているのか。

彼女は、再び居間に移動して寝ころんだ兄の横に座り、彼の股間を一心に愛撫しだした。力弱くなった陰茎を手でしごき、そして舐めしゃぶっている。彼女に反省の情はあるのだろうか。

もし、賢次が彼女の前に現れたとして、彼女はどんな反応を示すのだろうか。そうして、彼はどうしたらいいのだろうか。彼には判断ができなかった。怒りの感情よりも、まだ裏切られたショックの方が大きくて、彼の脳は思考停止状態だった。

それに、既に彼は出ていくタイミングを逃していた。最初に偶然出くわすのが最も良かったが、妙に鋭く勘が働いためにそうはいかなかったし、その後もまたその後も体が固まって出て行けず、そうするうちとうとう子作りまでされてしまったのだ。

彼はすっかり塞ぎこみ、視線を地面に落していた。と、その時、妻のある一言が聞こえた気がして、またはっとして彼は頭を上げた。

「あの人が、帰ってきちゃう……!」

あの人、それは夫である自分のことに違いない。はっきりとそう言ったのかは分からないが、彼の耳にはそう聞こえた気がした。

はっきりしているのは、彼らが再び交接を始めたことだ。二人は飽きることなくまぐわい続けた。時折体位を変え、中には妻が兄の上にまたがるものもあった。妻は兄の上で、いかにも妖艶に舞っていた。

あの人が帰ってきちゃう、だからどうだというのか。だからやめてほしいのか。帰るまでに早くやりおおせてしまいたいのか。賢次には分からない。

だが、もし賢次が家にいても、彼の目を盗んで二人は痴情を重ねるのではないだろうか。今なら分かる、いつか彼が熱を出して寝ていた時、彼らが居間にこもって何をしていたか。見ていたように分かる。

彼らにとっては、夫という障害もただ情事を盛り上げるための舞台装置に過ぎないのだろう。夫に見つからぬようにいかに快楽を得るか、そういう遊びなのだ。

夫が熱にうなされている間、彼らは一つ布団で愛し合っていたのだ、何度も何度も。激しく性器を求めあって、互いの粘液をからめ合って。賢次が便所に立った時も、二人はつながっていたに違いない。なんという卑劣なことか。

自分はこんな家に帰らねばならないのか。妻が言うように、夫というだけの役割の者として、これから帰らねばならないのか。

しかし、真実を知った今、以前と同じような態度をどうして続けられよう。彼の精神は、それをこなせるほど強くも、あるいは弱くもなかった。

彼はふらりと立ちあがった。そうして、鞄とケーキの袋を提げ、家の門を出た。彼の心は土砂降りの雨だったが、外は相変わらずいい天気だった。

角を通ると、

「あら、旦那さんどこ行くの?」

と、打ち水をするおばさんに話しかけられたが、彼はそれに力ない愛想笑いで答えるのがやっとだった。彼は行くあてもなく、ただぼんやりと歩いて行った。彼の姿は、そのまま夕焼けの街へ消えていった。


<おわり>




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夏のおばさん(後編)

「入れるよ」

男は宣言した。まるでここが二人だけの世界とでも言うような、傍若無人な通告である。

「ヒィッ!」

郁恵は頬を引きつらせた。同時に眉間の皺が深くなる。それら表情筋の動きは一気に深刻さを窺わせる程度まで進んで、やがてかっちりと固定した。

その時水面下では、先の割れた赤い頭が沈み、その続きの段差が沈み、さらにその続きのずず黒い竿が沈んで見えなくなる過程であった。

「……グッ……!」

刹那は言葉もなく、郁恵はただただ歯を食いしばる。

「入った」

真っ直ぐに視線を相手の顔の上に落として、男はまた一方的に宣言を発した。その顔はさすがに緊張のためか、一見怒ったようである。

「入ったよ」

念を押すようにもう一度言う。

郁恵はいたたまれない風で、顎を引いたり横へそらしたりした。その身を貫かれる理不尽さに、耐えて耐えてという風に。その悔しい忍耐の渦中で、彼女は言った。

「やめなさい……」

先程までとは一転、低い声だった。そして、どこか子どもを叱るような厳粛な口調でもあった。ただ、その声は震え、弱々しかった。

もちろん、そんな声は悪童の耳に届かない。若者は段々と表情をほころばせながら、さらに深く交わるべく、女の尻をきつく引き寄せて、

「ヤベェ……海でスんのチョー気持ちイー……」

と、ぼそりと一言つぶやくと、その自分の発した言葉で余計に確信を得たのか、

「ウワ、ヤッベ、マンコ止まんねえ!」

などと言って、相手の腿を抱え上げながら、いよいよ激しい腰振り運動を始めた。海中では当然、挿入された肉棒の出し入れが同時に行わている。

「やめなさい……!」

再び郁恵は言った。さっきの反省を踏まえてのことか、その中途までは力強い声音であった。が、語尾の方にかけては、一気に勢いを失っていた。

その時、彼らから少し離れた所、その波間に漂っていた人が、こんなことを言ったのが聞こえたからである。

「ヤダ、ちょっとあの人達、怪しくない?」

若い女性の声だった。郁恵が恐る恐る窺うと、同じ位の年格好の女性が並んでいる。いくら人が少ないといっても、やはりほかに客が全くないわけではないのだ。

「ウワッ! ちょ、マジびっくりした……!」

連れに言われて気づいた方の女性は、大きな声を出して驚いた後、笑いながら慌てて口元を両手で隠した。

後は二人、ヒソヒソと噂し合い、キャッキャと笑い合っている。

「アーア、見つかっちゃったね」

男は、さも残念そうに囁いた。ただし、行為はやめず、むしろ腰の運動は激しさを増すばかりだ。

二人の体は首から下が水に隠れており、その水は暗く底を見通せないので、決して性交が露見したとばかりは言いきれなかったが、男女が向かい合ってくっついている様を見れば、それだけでも十分大胆な振る舞いではあった。

若い女性達は、自分達で遊んでいる風を装いながらも、ちらちらと郁恵らを盗み見ては噂を続け、もうすっかりギャラリーと化している。

「けどまあ、バレてもいっか」

男はあっけらかんと言った。

「オレらもうラブラブだし。それに――」

郁恵の頬ににやけた彼の息が吹きかかる。郁恵は反射的に顔をそむけた。

「お姉さんとおマンコできたからさあ、もういいわ、なんか。もう捕まってもいいわ」

彼は言いながら、郁恵の左の腿まで持ち上げ、ついに彼女の肉体をすっかり海中で抱き上げてしまうと、そのまま、一歩、二歩と浜の方へ向かって歩き始めた。

「もう見せようぜ、オレらのラブラブセックス」

「なっ! 嫌っ!」

郁恵はうろたえて、しかしまだ女性達の存在を視界の端で窺って、抑え気味の声で否定した。

「いいじゃん。――じゃあ代わりにチューして、チュー」

男はまるで駄々っ子のように甘えて、唇を尖らせ相手に覆いかぶさる。

郁恵は顔をしかめた。が、避けることはしなかった。その口に、またレイプ魔の口が重なる。

「キャッ!」

瞬間、見物の女性らから、嬌声が上がった。彼女らにすれば、恰好の娯楽材料なわけである。場合によっては、そのいずれかがこの男の餌食として郁恵の代わりになっていたのかもしれないが、そんなことを知る由も無い。

生贄となった郁恵は奥歯を噛み、心底情けなさそうに俯いた。男が離れたその下唇から、彼の唾液がつららのようにぶら下がる。

と、ここで、今度は別の方角からも声が聞こえてきた。男性の声だ。

「……おい、見ろよ。あいつらヤッてんじゃね?」

見れば、若い男女の二人連れである。

彼氏の指摘を受けて、女性が応じた。

「エー、なわけないじゃん!」

女性は、しかし言葉とは裏腹に半信半疑の様子で、興味津々と郁恵らを窺っている。

その彼女に向かい、

「オレ達もヤッてみる?」

と言いながら、男性は彼女に後ろから抱きついた。

「バーカ!」

女性はそう言ってそれを振りほどくと、彼に向かってバシャバシャと水を浴びせかけた。

それを機に、水の掛け合いや、体の掴み合いをしだす二人。恋人同士の甘い時間を過ごしている様子である。

先程郁恵が助けを求めた時は、誰ひとり気づかなかったというのに、確実に周囲に人が増えていた。今なら絶対に助けてもらえる、だが、郁恵はもう声を上げなかった。

その間も、性器と性器は間断なく摩擦を続けている。

「ねえ、ちょっとエロい声出してよ」

男は囁いた。

しかし、郁恵は相変わらず無言で差し俯いている。

「出さないの、いつも。旦那さんとスる時」

男は重ねて呼びかけた。

しかし、やはり郁恵は無反応を決め込んでいる。

すると、彼は方針を変えて、別なことを申し出た。

「じゃあ、今度後ろからヤらしてよ」

言うが早いか、すぐにその体勢に入る。すなわち、両手で抱え上げていた郁恵の両腿をぱっと離し、彼女を裏向けた。

「ウッ、ウッ、ブッ……!」

急に投げ出されて、海水に鼻まで沈む郁恵。その上、目が回るような速さで浜辺の方を向かせられ、鼻と口に海水が入ったために彼女は焦って、海中で腕をバタバタさせた。

「バック。好き? 奥さん」

男はマイペースである。悠々と相手の尻を抱き寄せる。誰に見つかろうと恐れることもなく、彼女をまだ散々に弄ぶつもりだ。

「好きそうだよね。でっかいケツしてるし」

彼は、また水着を尻の谷間から右に引っ張って陰裂を露出させると、思い切りそこに男根をねじ込んでいった。肉棒は、何の抵抗もなく穴の中に吸い込まれていく。

「旦那さんともバックすんの?」

男は言いながら、乳房を鷲づかみにして彼女を助け起こした。これで外面的には、女と男が立って前後に列をなす格好になる。彼はそうしておいて、ビーチの方を顎でしゃくった。

「あれ旦那さんでしょ? あそこの傘の下にいるの」

それは、確かに郁恵の夫であった。さっき男が彼女をナンパした場所で、仰向けになって眠っている。

「起きればいいのにね。奥さんとおマンコしてるとこ見てもらいたいのに」

男はそう言って明るく笑った。

郁恵の視界にも夫は入っていた。が、彼女は決してそちらを正視することなく、といって全く見ないわけでもなくて、まさに目を泳がせている状態であった。その額から、幾筋もの汗が流れ落ちる。

「なあ、あれ、絶対入ってるって」

先程のカップルの男が、また恋人に声をかけた。一時ちょっと離れていたのだが、また近くまで回ってきたようだ。

「いいよ、もう。あっち行こうよ」

恋人の方はやや不快な調子で、彼氏の肘を引っ張った。

一方、左の方角にいた女性連中は、いまだ一定の距離を保って、郁恵らを肴にヒソヒソ話を続けている。

そんな中、別の方からは、母親らしき口調で、

「そっちは行ったらダメ。あっちで遊びましょう、あっちで」

と、我が子であろう男の子にきっぱりと言っているのが聞こえた。どうやら、郁恵らの様子に不穏なものを感じ取ったらしいのである。もはや、恋人がいちゃついている、との認識以上の違和感が漂い出しているのだろう。砂浜の監視員が注意をしに来るのも時間の問題かもしれない。

そんな切迫した環境の中、男はますます興に乗って、

「アー、バックもヤバい」

などと浮かれながら、ガンガン女穴を突きまくる。折しも、男の欲求にとり、そろそろピークが訪れる頃合いらしかった。

「アーヤベ、マジイきそう! マジで!」

彼らの周りの海面が細かく波打つ。無論、自然のためばかりではない。男は強く激しく腰を押し出していく。

「嫌……! や、やめて!」

今まで黙っていた郁恵がふいに口を開いた。それは、男が腰を突き出しながら、彼女のことを前進させたからであった。

「旦那のとこまで行こうよ」

男は悪びれもせずに言う。

「見せようぜ、中出しするとこ」

興奮しきっている彼の、卑猥な発言も腰の運動も加速して止まらない。

「スンマセーン、旦那さん。奥さん孕ませます!」

相手の耳の裏で囁きながら、彼は浜辺の傘の方をじっと見据え、だらしなく口元を緩ませた。

郁恵の足の裏に、サラサラした砂の中に埋まった何だかわからない固い角や、海藻の付着しているらしいヌルヌルした石などが通過していく。いつしか、彼女の足が海底に接着しうる地点まで戻っていた。

「やめて、もう……!」

必死に足指を地面に突っ張りつつ、郁恵は切に願った。そこには、切羽詰まった恐怖がみなぎっていた。その恐怖は、間もなく実体を伴って眼前に現れる。

「あ! あれ、息子さんじゃないっすか?」

男の指摘に、郁恵は絶句した。男の子が浮き輪と共にこちらに向かって来ていた。

「お母さん」

そう呼びかけながら近づいてくる。紛れもない、郁恵の息子だった。よその家の母親が己の子に近づくなとすら注意していた所へ、また幾人かの人間が好奇の目を注ぐ輪の中へ、郁恵の息子は無邪気に寄って来る。

「じゃあ息子さんに見てもらいましょっか。妊娠するとこ」

男は囁いた。恥知らずな彼は、子供を前にしてもその母親を犯し続ける。

「……クッ!」

郁恵は力を振り絞って抵抗した。息子の存在が、彼女に再び力を与えていた。が、それは悪あがきにすらならなかった。

「お母さん」

少年は、とうとうすぐ傍まで来て止まった。知らない男のペニスが入っている母親の傍まで来て。そうして、物問いた気な表情で、母の後ろの男を見つめる。

「さっきお母さんと仲良くなってさあ――」

強姦魔は優しい笑顔でそれに応えた。さらには、

「一緒に遊ぼっか」

とまで抜けぬけと言った。明るい表情で、子供に親しみを与えるように。しかし真実は海の中、ますます勢いを増した腰振りによって、目の前の少年がかつて産まれ出でてきた膣の内壁を、硬直した肉の突起でグリグリと摩擦してえぐっている。

少年は何も知らない。彼はただ、知らない相手に声をかけられたので、とりあえず母親の顔を見て、彼女の判断を仰いだ。

「イイっすよね、お母さん」

いまだ言葉を失っている母親に、男が迫る。

しかし、彼女は答えない。卑劣な男根は、いよいよ苛烈に股間を暴れ回り、まさしく暴力の様相を呈している。彼女は今、闘いの最中なのだ。

男は、彼女が返答しないのをいいことに、勝手に話を進め、

「じゃあさ、向こうまで競争しよっか?」

と、浜の方を顎で指した。

少年は、再び母の顔を窺う。

母は何も言わなかった。ただ笑顔だけで応えた。もっとも、それは明らかな作り笑顔であった。

平生ならば、それに違和感を覚えたかもしれない息子だ。が、今は特に追及もしなかった。男の勢いに呑まれた観があった。

「イきますよ、お母さん」

勢いのままに、男は郁恵に問うた。

とっさに作り笑顔を凍りつかせる郁恵。それが、スタートを知らせる合図でないことが、明白であったのだ。

「イイ? イくよ?」

男は息子にも問うた。ニコニコしながらだが、一方でちょっとした凄味も混じらせて。

「うん」

少年は頷いた。

その瞬間だった。少年の返答が引き金となって、郁恵にぶち込まれていた暴力的な銃口が、白い火花を吐いていた。

男は勝ち誇って満面の笑みを浮かべる。彼にしてみれば、息子の許諾の下で、その母親に種付けを完了したというわけである。その頬は上気し、興奮の極地といった感じを表していた。

他方、郁恵の頬も上気していた。しかし、その興奮は喜びの故ではなく、緊迫する場面に遭遇したためと形容した方が適当なようであった。

憐れ、彼女の息子は、目の前で母が強姦されたことも、その犯人の策に踊らされて、母への膣内射精の許可を出してしまったことも知らず、早くも浜に向かって泳ぎ出していた。

少し遅れて、男が続く。彼はわざと出遅れて、ギリギリまで郁恵の膣内に精液を搾り出していたのである。

最後に残ったのは郁恵だ。彼女はすぐに動き出さなかった。

そのじっとしている僅かの間に、息子と男は見る見る遠ざかり、一気に波打ち際まで到達してしまう。そうして、そのままその辺りで戯れ始める。犯された女の息子と、彼の母を犯した張本人の男とがだ。

遠目にそれを目の当たりにした郁恵は、女陰に右人差し指を突っ込んで応急的に精液を掻き出しつつ、胸まで水に浸かっていられる限界の所まで急いで歩いていった。

その後、一番近くにいた親戚の子を何とか手招いて、彼にタオルを持ってきてもらい、それで胸を押さえてやっと陸に上がった。もちろん、めくりあげられていた股間の水着を元通りに伸ばすことも忘れてはいない。ただ、いかにも歩きにくそうな足の運びだけは隠しきれなかった。

「エー? 水着流された?」

やっとの思いで帰って来た妻に、呑気な夫は呆れ顔で言った。

妻はそれに詳しい説明をするのももどかしく、イライラしながらシャツを着る。

と、その時だった。

「スイマセン」

呼びかけられて、彼女は振りかえった。そして、目を見張った。

あの男が立っていた。なんと、自ら堂々と訪ねてきたのだ。郁恵が息子のことを連れ戻しに行こうとしていた矢先である。

「これ、水着……落としたんじゃないっすか……?」

男はオレンジ色のビキニを、いかにも遠慮がちの体を装って差しだしていた。

郁恵は何も言えなかった。

すると、

「あ、そうだ、それですよ。どうもありがとう!」

と、代わりに夫が礼を言って、水着を受け取った。人のいい夫はニコニコ顔である。

男も笑顔を返し、さらに振りかえって後ろから来ていた郁恵の息子に手を振ると、自分は海の家の方を向いて去っていった。

彼を見送った夫は、

「あれ、ひょっとしてナンパされた男か?」

と、ちょっとからかう風で訊いた。

郁恵はそれに、

「ううん、違う」

と返事するのがやっとだった。

夫から手渡された水着には、茶色い髪の毛と細かい砂が付着していた。郁恵の股間に、ヒリヒリと激しい痛みが走る。


(おわり)


人妻官能小説【蕩蕩】






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湯けむ輪(54) 00:00

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午前零時零分


その人物は、こちらに背を向けた恰好で横たわっていた。その手前には、グラスや皿の乱雑に置かれたテーブルがある。つい今しがたまでそこにいたのであろう多数の人間の存在を匂わせる残骸である。その影に隠れていたせいで、ソファーの上まで見えなかったのだ。

しかし今、カウンター席の薮塚の膝の上に座らされて些か高くなった上背から見渡すと、その者の存在ははっきりと確認することができた。それは男であり、浴衣を着用していた。ちょうど渡瀬や榊原が今着ているのと同じ柄のものである。ということは、同じ宿泊所に泊まっている者ということになる。

では、渡瀬らと同じグループの一員だろうか。倫子は、むしろそうであることを願った。つい先刻の彼女なら考えられなかった仮定だ。だが、そう願いたくなる背景事情が、返ってそうではないという現実の蓋然性の高さを物語っていた。絶望的なことに、彼の肩、首、後頭部、髪型、見れば見るほど確信に変わっていった。

「どうしたんです奥さん。もっとエッチな声聞かせてよ」

ふいに薮塚が後ろから言ってきた。にわかに大人しくなった倫子に違和感を持ったようだ。

倫子は逡巡した。このようなことを一刻も早く切り上げるのが最良の手段であることは明らかであったが、そういう申し出が容易に受け入れられようとは到底思えなかったし、申し出るにしてもどういう理由をつけたらよいか悩みどころであった。憂慮すべきは、ソファーの彼との関係が他の者に勘ぐられることであった。

「ねえ、奥さぁん」

薮塚は甘ったるい言い方をしながら、彼女の首筋に舌を這わせ、併せて陰核包皮をつまんでいじくりだした。

「ン、ンン……」

倫子は、鼻にかかった声を漏らして、ひとまず誤魔化そうとする。彼女はまた混乱し、当座の策も何も考えられない状況にあった。陰核への刺激は現在の切迫感とも相まって、下半身にむずむずとした尿意のような焦りを生じさせる。

(こんなところを見られたら……!)

回転の鈍くなった頭で、ようやく彼女はそのことに思い至った。何よりも最悪の事態は、彼に現在の自分の姿を目の当たりにされることであるのは間違いない。当たり前のことなのに、その思考の順序が逆になるほど彼女はパニックに陥っていたのである。

(早くやめないと……!)

気持ちばかりが焦るが、体はついていかない。もう一刻の猶予もないというのに、なりふり構ってなどいられないというのに、行動を起こせない。

(どうして……?)

彼女は自問自答した。単に体が疲れきっているせいもある。だがそれ以上に、怠惰な流れに身を任せる、堕落した心の症状が作用していることに、彼女は気づいていなかった。動けないんじゃない、動かないのだ。だから、ずっとくよくよして、ずるずると無為な時間を引き延ばしているのである。

すると、そんな彼女の様子を観察して、周囲の男の方が異変に気づいてしまった。結局、外圧に期待する結果となってしまった倫子である。

「おっ、そう言うたら、あそこにもう一人おったなあ」

榊原が彼女の視線を鋭くキャッチして代弁する。

倫子は慌てて目をそらす、が、もう遅い。人間、想定外の事件に出くわせば、正直な反応を隠しおおせないものである。だが、ここからが正念場だ、と、彼女は弱々しいながらも覚悟を決めた。

「ああ、あの人なあ、奥さんのお連れさんやなあ」

渡瀬は言いながら、用心深い目で倫子のことを窺う。

倫子は何も言わなかった。努めて感情が表に出ないようにした。かくなる上は無反応を決め込んで、いよいよという間際になって隙をついて逃げ出せばいいと、そう漠然と冴えない頭で考えていた。しかし、これ以上の愚策はなかった。

「そや、あの人も起こして交ぜたげよか」

思いがけない提案をしだしたのが榊原である。

「おお、ええやないか。――奥さん、ここらで知り合いとも仲良なっときぃな」

渡瀬も加勢する。

倫子は目を見開いた。この期に及んで彼らの凶悪さをまだ過小評価してしまうほど、彼女の頭脳は機能していなかったのである。

その呆然とする眼前から、渡瀬の背中が容赦もなく向こうへと去っていく。

「よう寝たはるなあ。起きはるやろか。――オーイ……」

本気なのである。本気で起こそうとしているのである。堪りかねた倫子は、ついに音を上げた。

「やめてっ!」

久しぶりのはっきりとした言葉で、しかし大音声にはならない程度に気を付けて言った。やっとまともな手段をとった彼女である。その毅然とした態度のために、瞬間、ピリリと空気が緊張し、男どもは鋭気をくじかれる……はずだった。が、ふてぶてしい彼らに、彼女の影響力は何ら通用しなかった。

「おっ、どうしたどうした。今さら別にかまへんやないか」

渡瀬が振り返って、唇を尖らせる。

横から榊原も口を添える。

「この人かて、奥さんとヤりたいてずっと思てはるて。なんせ、こんなエロい乳……」

「やめて下さい、もう……!」

倫子は彼の言葉を遮った。ひと度意思を表明した彼女は腹が据わって、今までになく強気で物を言えた。

さすがの男達もこれには驚いた。

「……まあ、お知り合いの方ですからねえ。さすがにバレちゃあまずいんでしょうよ」

とりなすように、マスターが言う。しかし、そう話す彼も含め、その場にいる男達の誰の口元にも薄笑いが浮かんでいた。彼女を気遣う者など一人もいないのである。

その最たる人間として、薮塚が彼女の腰をつかまえ、以前にも増した勢いで男根を出し入れしにかかる。それも、倫子が隙をついて離れようとしていた矢先のことだ。

「アアー、ヤベえ、イきそう」

彼は言いながら、ガタガタと膝を揺らして自分の上で相手をバウンドさせつつ、踊りまわる柔肉の果実を、後ろから回した手でもぎ取るようにつかんで下に引っ張った。たっぷりと垂れた果肉が、指の食い込みでできたへこみもろとも伸びる。性欲を爆発させている最中の彼には、周囲の状況の変化など関係なかった。ただ最後までやりおおせて、オスの本能を満たしたいというそれだけなのだ。


<つづく>



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湯けむ輪(55) 00:04

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午前零時四分


一方、渡瀬や榊原は再び倫子をいじめにかかる。彼らにかかれば、彼女の一世一代の危機さえ戯れの材料なのだ。

「えらい急に慌てだしたもんや。身内の一人ぐらいバレたかて、もう今さら関係ないんとちゃうん」

そう話すのは渡瀬である。すっかり外道じみた彼は、いとも空恐ろしいことを簡単に言ってのけた。彼に言わせれば、例えば卓球部員らや薮塚のように、途中参加でもすんなりとこの輪に加われたのだから、その要領で一人増えたってどうってことないというのである。

すると、それをいさめてマスターが、

「いやあ、そうはいきませんよ。知り合いですからねえ」

と、口を挟めば、榊原も、

「そうやなあ。これから先の生活もあるからなあ」

と、マスターの発言に一定の理解を示す。もっとも、どう同情的なそぶりを見せようとも、当人の目の前で堂々と噂話をすることからして、それは一種の辱めにほかならなかった。現に榊原は、怪しげなる瞳を輝かしながら、鋭くも恐ろしげなことを言ってのけたものだ。

「あの慌てようからして、もしかしたら旦那さん本人という線もある……」

「なんやて! あれ旦那かいな?」

すかさず渡瀬が素っ頓狂な声を上げる。それは、倫子の驚愕を代弁するかのような大げさなものだった。

当の彼女は慌てふためいて、しかしそれを出来るだけ気取られぬようにと、がばっと上体を折って顔を伏せる。何しろ榊原が、油断のない眼でこちらを窺っているからである。

「まあ分からんけどな。あっちへ一緒に行ったかもしれんし」

彼はそう言いながらも、じっと倫子から視線を動かさない。

脇からは、渡瀬が顔を覗き込んできた。これではせっかく伏せている意味もなく、もはや表情を隠しおおせる自信もなかった彼女は、ギュッと瞼を閉じてかすかな抵抗を試みる。

「奥さん、あれ旦那なんか? え?」

渡瀬は親しみやすそうな笑顔を作って倫子の返事を誘った。

が、もちろん、これに唆される倫子ではない。聞こえない振りをして、口まで固く結ぶ。

折しも、藪塚の腰のグラインドは、いよいよピークに達する勢いであった。ほとんど椅子から尻を浮かせて、激しく腰を打ち付ける。それにつれ、カウンターの上のグラスやら何やらが、ガタガタと振動したほどだ。

倫子はとりあえずこの派手な運動に身を預けながら、ひそかに今後の方策を練ることになった。とはいえ、既に万策尽きた感のある中、あまつさえ挿入の常態化した彼女の体はふやけたようで、到底もう良い知恵など浮かびそうにないのである。

(逃げないと、とにかく……)

霞がかった視界と頭で、彼女は必死に決断を焦った。よろよろともがいて前に出ようとする。

すると、それと軌を一にして藪塚もまた前進を始めた。偶然にも連動した二人の動きである。これは、勢い余った藪塚が、さらに十全な腰振りを敢行すべく、自然な成り行きで倫子を押し出したからであった。

支えを失った彼女は、瞬間つんのめって倒れそうになる。が、藪塚が両の乳房をつかんだおかげで、辛くも転倒だけは免れた。しかし、不安定であることに違いはない。つま先立ちで、上半身屈曲してというのは。まるで、宙ぶらりんの感覚である。

その時思わぬ助けが現れた。否、お節介と呼ぶべきか。渡瀬が前方から彼女の手を握ったのである。もちろん、親切心などみじんもない。

「やっぱり旦那なんか? なあ。どやねんな」

ニヤニヤしながら彼は追及してくる。その表情の中には、そうであったらいいのに、という下劣な願望がありありと浮かんでいた。

その間も、藪塚はせっせと腰を叩きつけてくる。自ら腰を振り、同時に倫子の腰を引き寄せる。その連続だ。肌と肌がぶつかって、パンパンという音が響く。

倫子は前から後ろから一斉に攻められ、片やソファーの方は気になるしで、その心たるや千々に引き裂かれる思いだった。もうどの方面に軸足を置いていいかもわからず、頭は飽和状態となる。

そこへ榊原が声をかける。

「ああ、奥さん、そっち行ったら起こしてしまうんとちゃうか」

それは、倫子らがゆるゆると前の方へ進んでいき、結果ソファーとの距離を詰めることになったのを注意したものだった。

「いやいや、旦那さんのとこに行きたいんやで」

渡瀬はもはや決めつけて、勝手な解釈を施す。

他方、そう口々に揶揄されても、倫子にはもう訳が分からなくなっていた。この刹那、彼女はある種諦めていたと言ってもいい。なすすべもなく藪塚に押し出され、視界のぐるぐる回る中で地べたを歩く感触もなく、ただ無間の境を進みゆくだけだった。たとえその先に奈落が控えていようとも、その歩みを止めることはかなわなかった。

「奥さん、中に、中に出すよ!」

奈落の淵で、藪塚が吠える。背後から彼女を突き落とすべく。

パンパンいう音は話し声程も大きくなり、それと同時に行われている内容を確実に世人に知らしめた。すなわち、彼女の女穴と彼の男根の激しい摩擦であり、公然たる不倫的子作りである。

「言って、ほら、『中に出して』って、言って!」

興奮の絶頂で、彼の最後の要求は一気にエスカレートした。まるっきりアダルトビデオの男優さながらに、膣内射精を女の口から申し出させようというのだ。

「イ、イヤ……ッ!」

倫子は反射的に言っていた。何もかもに対する拒絶であった。

ところが、その意に反して、この時思いがけない出来事が起こった。それは一種奇跡的と言っても過言ではない巡り合わせであった。なんと倫子が言葉を発するより前に、倫子の言葉が伝えられたのである。

『な……アア……か、にぃ……イィ……な、中……ァハァ……だ……しぃ……ィヒィ……ッ!』

そう、それは、“女優”倫子のセリフであった。彼女が出演中の例のものは今なお絶賛放映中だったのであるが、これと現在の状況とが、偶然にもシンクロしたのだった。

これを受け、一瞬の間があった後、男どもは一斉に噴き出した。そして、

「すごいなあ!」

と、口々に言い合う。

それはちょうど、藪塚が精液を発射するのと同じ時であった。彼は皆が談笑する中で、フィニッシュを迎えていたのである。

「ハア~……」

気持ち良さそうに息を吐きながら、肉茎から精を続々と送り込む。

その感触は当然に倫子にも伝わっていた。

「ああぁ……」

藪塚とは別種のため息を吐く。きつく結んでいた口はいつしか半開きとなり、瞼もうっすらと開いていた。その表情は、今までになく切なげである。これまで信じられない量の子種汁を注ぎ込まれてきたが、今の一回は特別現実的な衝撃を受けるものだった。

薄眼で、前方を窺う。そこには相変わらず背中を向けて熟睡する男の姿。倫子はその後頭部に向かい、心ひそかに呟いた。

(あなた……許して……)

刹那、彼女はまた天上に昇り返っていった。


<つづく>



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湯けむ輪(56) 00:08

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午前零時八分


「ア~……」

藪塚はうっとりと息を吐き、つららのように白色透明な糸を引いて肉茎を抜き出した。

その瞬間、渡瀬の介助もむなしく倫子はどっとくず折れて、ソファーの角っこに頭からのめり込む。それはちょうど夫が眠るソファーの続きであった。ソファーは店の角に沿って、くの字形に設置してある。

「ウ、ウ~ン……」

夫は急に呻いた。これまで幾多の障害を乗り越えてきた酩酊も、振動にはさすがに反応したと見える。

「お、ぼちぼちお目覚めか」

榊原が言った。

しかし、夫は軽く寝相を直した程度で、目を覚ましはしなかった。

「かまへんがな。次しぃな」

渡瀬は我関せずといった態で、藪塚の“次”を促す。その視線は、袋田を指していた。

一方袋田は、その時夫の寝顔を覗き込んでいた。“この男が夫なのだろうか”と確かめる風である。ただいくら眺めようとも、誰と誰が夫婦かなんてところまで把握していなかった彼には、倫子の同行者であるという情報以外には確認のしようがなかった。

それで、彼はそのことを報告しつつ、渡瀬に指名されたのを受けて、マスターに話を振った。彼とマスターとは心やすい関係にあるらしい。

「矢板(やいた)さん、よかったらお先に」

勧められて、マスターこと矢板は、

「え、そうですか? いやしかし、旦那さんだったらねえ」

などと口では遠慮しつつも、自らカウンターの外へ出てきた。その上、

「いざとなると恥ずかしいですねえ」

と言いながら、結局ズボンを下ろしてしまう。この男も、どうやら悪性だ。

「いいんですかねえ、ほんとに」

誰の許可を求めているわけでもないのに白々しい物言いをしつつ、彼はいよいよ欲棒を取り出した。そうして、“よいしょ”と掛け声しつつ、倫子の尻を持ち上げる。

この間、倫子は終始無言である。何の意思表示もせずにうずくまっていた。本当なら逃げ出したいはずなのに、なす術もなくまた新しい男に侵入されようとしているのだ。

(あなた……)

頭の中で繰り返すうわ言もむなしいばかり。一体彼女の罪悪感は本心なのだろうか。今や彼女自身にすら心許ないことだった。ただ、彼女がどう思おうと、今からまた夫のそばで他の男に抱かれるというのは厳然たる事実である。

矢板の勃起した陰茎は、ダイレクトにゴールを狙い澄ます。グチャグチャに濡れたそこは以前より形すら変わったように思えて、倫子にはもはや恐ろしくて直視もできそうにない場所だ。逆にそれほどの故に、男からすれば狙いやすい。矢板はその淫猥のるつぼに、分身を一気に沈みこませていった。

「あ、あっ、ああ~……」

溜息ついて、腰を進ませる。するとそれに伴って、ジュプッ、ジュプッ、という粘り気のある汁の音が鳴る。それは、それまで乾いていた陰茎が、まるで湯につかるように急速に濡れていく過程を代弁していた。

「どないやマスター。ビデオで見た通りやろ」

榊原が言う。下劣な男どもには、たとえ他人の吐き散らかしで混ぜ返された陰裂を前にしても、ためらいの情など微塵もなかった。実にのん気なものである。

「ええ、でもやっぱり本物はいいですねえ」

矢板はそう話しながら、次第に局部の摩擦を激しくしていった。

「奥さん。奥さんとスるのは今が初めてですが、奥さんのアソコは先に知ってるんですよ。よっく見ましたからね。アップで見ましたからね」

彼は倫子に向けた体でありながら、その実観客の目を意識して話した。実際、観客達の反応は上々だ。

「そや! 奥さんのいやらしいオメコ、どアップで映ってたで。中に出されたザーメンもばっちり丸見えや」

渡瀬が喝采を送る。しかも彼は、興奮を満々にみなぎらせてこうも叫んだものだ。

「アー、なんやまたシたなってきた。――マスター、ちょっと悪いけど一緒に頼むわ。もう分かってるやろ?」

「ははあ、あれですか。あれやっちゃいますか」

阿吽の呼吸で矢板は動く。すでに段取りは重々承知の彼である。すなわち、一旦座って倫子を向かえ合わせに抱き直し、そのままの状態でソファーに仰向いた。

すると、浮き上がった彼女の尻めがけて渡瀬が覆いかぶさっていく。

「奥さん、ただいま。寂しかったやろ、一本では」

言いざま、彼は倫子のアヌスを深々と貫いた。

「ンヒイッ!」

これには、呆けていた倫子もさすがに声が出た。この感覚には慣れるものではない。もちろん、“寂しかった”なんてことありえない。だが、一度刻印されたものは消えず、永遠に体に刻みこまれる。しかもあれだけ何度もされたからには、体がもはやこの感覚を前提にしている節はあった。

「どや、よう締まるようになったやろ」

したり顔で渡瀬が問う。

「ええ。これが二本挿しですか! 初めてですよ」

嬉しそうに矢板が返す。

「実はワシかて今日初めてしてん。大体3P自体初めてやねん」

「そうですよね、普通そんな経験ないですよね」

二人は一つ女体を共有して、実に和気あいあいと語りあった。途中からは立ち上がり、二人して倫子を抱えあって揺さぶる。

やられ放題の倫子、この体勢に至りなば、もはや夫にばれるばれないの次元ではない。後は、体内の葛藤との闘いだ。

その様子を見ていた榊原は、袋田にしみじみと語っていた。

「あの人がもし旦那やったとしたら、あの奥さん、夫の横で二本もチンポ入れられて、ものすごいことしてんな。一本でも大ごとやのにやで。大体ケツにチンポ入れたことなんかあったんやろか」

何を今さら、といったようなことだが、彼はそれに頓着せず、袋田も純粋に感心して聞いている。

他方、倫子の耳にその声は届いていなかったが、これは幸いであった。こういう冷静な会話は、揶揄されるよりも一層惨めな気持ちを引き立たせるからだ。そうでなくても、二本一遍に男根を埋め込まれ、またぞろ衝撃的な混乱と恥辱を与えられているさ中である。

(こんな姿、あの人に見られたら……!)

当然にその懸念はちらつくが、それよりも今のこの肉の衝撃こそ喫緊の課題であった。

だがもし夫が本当にこの姿を見たらどうだろうか。そもそも長年連れ添ってきた間、妻の肛門にペニスを入れる発想すらなかった彼である。ところが妻は、今日会ってすぐの見ず知らずの男にその穴の処女を捧げ、引き続き何人もの男にそこを広げさせ、今ではすっかり性器にしてしまっているのだ。それだけでも信じられない光景に違いない。

「連れも言うとったけどなあ」

榊原は話を続ける。

「あの奥さん、もう旦那のチンポでは一生満足でけへんで」

そう話す彼の視線の先には、瞼を閉じようとして閉じ切れず、わずかに白目をむいたまま男達に寄りかかる倫子の姿があった。


<つづく>



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湯けむ輪(57) 00:12

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午前零時十二分


「あんたもヤッてきたらどや」

榊原は袋田に言った。

「どうせもう今日は仕事上がりやろ?」

しかし、なお袋田は煮え切らない様子である。体自体は来るべき時に備えてすっかり臨戦態勢になっているが、どうにもタイミングを計りかねているようだ。

そんな彼を思いやって、矢板が声をかける。相変わらず倫子とまぐわいながら首だけそちらへ向けて。

「そうだ、こっちの方へおいでなさいよ。三穴同時ってねえ? わたしゃビデオで散々勉強したんですから」

彼は倫子の口を指差し、同志渡瀬にも笑いかけた。渡瀬も笑い返す。

この仲間の誘いによって、ようやく袋田も重い腰を上げた。立ち上がりざまにちらりと藪塚を見やる。どうにも彼の場合、遠慮というよりも照れがあったらしい。

袋田がそちらに向かうや否や、渡瀬は矢板と示し合わせてソファーの上に横になった。その上に倫子が仰向けにのしかかり、その彼女に対面して矢板が覆いかぶさる。今度は下の肛門に入った渡瀬が下に、膣に入った矢板が下に、倫子は引き続きサンドウィッチになって二人から突かれ放題だ。

いかに長いソファーといっても限りはあり、彼女がのけぞると、その頭髪の先は夫の足指に触れるか触れないかの距離になった。夫の眠るソファーの上、そのすぐ足元で、妻は慰み者になっているというわけだ。

しかもそこへ新たな男が加わり、空いている“穴”、すなわち口腔へと陰茎を放り込む。彼女がのけぞったのも、実にこのための布石であった。これぞいわゆる“三穴同時”の責め、矢板の言った通り、ビデオにも散々記録されている形である。部屋では、何しろ十九本ものペニスを一身で引き受けてきた倫子だ。この体勢は今や正ポジションとすら言っていいものになっていた。

「ああ~、ええわぁ。ごっつぅ締まりよる」

渡瀬は一人言って、下から器用に己が分身を出し入れする。

倫子の淫肛は、そのおちょぼ口の皺を目いっぱい開き、パックリと彼の野太い剛直をしゃぶり込んで離さないでいた。今晩開通したばかりの割には慣れたもので、既に滑りのいい粘液も常備済みなのである。それだものだから、彼女の方にも責任の一端はあるのかもしれない。

が、それにしても、彼の振る舞いは節操のかけらもなかった。彼だけではない。矢板も同罪だ。男達にとっては、倫子の境遇に対する同情など端からないのである。だから、夫らしき人物が起きようと起きまいと、いや、渡瀬に至ってはむしろ起きればいいと思うほどに乱暴に腰を使うのである。

「ンッ! ンゴ、フグゥォ……ッ!」

倫子はペニスに埋まった隙間から、息も絶え絶えに悶え声を洩らした。その口を埋めるのは袋田の陰茎。この期に及んでまた新入りである。一体何本この口に放り込まれてきたことか。もはや一つ一つの特徴などつかみきれない。そもそも、それぞれに違いなどあったのかさえ心許ないのだ。今までは、夫であれば、夫ならではの個性に愛着を覚えていたと思っていたのだが。

(夫……?)

そうだ、己の頭上の先にはその彼の現物があるのだ。倒錯の中で、ふいに倫子はそんなことを思いついた。きっと彼のものは今、穏やかであろう。ここにあるどの男根よりも静かになりをひそめているに違いない。かつては雄々しく立ち上がり、倫子に娘を孕ませるに至ったあの雄姿も今は昔。現在その地位になり代わるは、いずれも故なき他人棒。揃いも揃って仰々しい勃起を他人の妻に向けている。妻は夫の雄姿を思い出そうとしたが、もはやどうやってもできなかった。

どんな女だって、今現在入っているものが全てだ。それを超えて別の形を思い出すなんてことは、よっぽどの芸当である。おまけに、正面のみならず裏口や勝手口まで閉じられている現状においてをや、過去の男が帰ってくる隙なぞ微塵もないのだ。

「あ、ああ~……」

袋田も他の男同様に恍惚のため息ついて、倫子の肉の感想を伝えた。最大限に張りつめたその海綿体は、彼女の口を弄んでいる。

倫子は仰向けの状態で横を向かせられ、右から突き出された肉棒をその口にくわえさせられているわけであるが、頭は彼の手によってしっかりと抱えられ、己が意思を反映する余裕など全くなかった。ただひたすら彼の出し入れに合わせて、頭を前後に振らされるのである。彼女としては、その目まぐるしく息苦しい運動に、とにかく耐えて付いていくしかなかった。

こういう場面には今宵何度も遭遇してきたが、そもそもこんな行為があることは今日人生で初めて教えられたものだった。男性が主体となって、口淫を行うというものだ。これまでにも、男性の要望によってその足元になつき、奉仕をしたことはあった。そして、その際に頭に手を置かれたこともあった。

初めて男性器を口に含んだのは、学生時代に付き合った恋人だった。以来、フェラチオは決して嫌いではない。むしろ相手を喜ばせたくて進んでやってきた部分もある。一つには、口淫奉仕をせがむ男根が何とも無邪気でかわいらしく感じられ、ある種母性的な気持ちに誘われるからであった。

ところが、ひと度これが男性主体となるや、同じ男根同じ行為でありながら、なんと様相の変わることであろうか。あのかわいらしさはどこへやら、荒々しくて独りよがりな面ばかりが強調されるのだ。その一方的なやり方たるや、まるで膣に対する性交と同じである。つまり、彼女の口腔は膣であるので、そこに男根を挿入した場合には、そこへ向けてただ腰を振ればよいという仕組みなのだ。

「ンッ! ンガァハッ!」

倫子は顔をしかめ、喘いだ。

というのも、袋田が唐突に肉棒を抜き出すや、今度はそれで彼女の鼻柱をしたたか打ったからである。荒々しさを発揮しだした男は口で交尾するのに飽き足らず、さらに広範囲に支配域を拡大したいものらしい。彼はその後も、ベチベチと鼻や頬をぶった。それと同時に、陰嚢を口に押し付け、しまいにはそれを頬張らせた。いよいよもって、独善的な行為である。

顔を叩かれるというのは、極めて屈辱的仕打ちである。その上それをペニスをもってしてなされたとは、もうこの世の終わりのような惨めなことだ。女性にとり生命線ともいえる顔、とりわけ男どもも認める彼女の美貌もこうなっては形無しである。傍にいる夫にとっても自慢の美人妻だったかもしれないが、今ではよその男の勃起したペニスを鼻にぶつけられ、縮れ毛に覆われた玉袋を舐めしゃぶる顔面性器となり下がってしまった。

と、ここで背中越しに渡瀬の呻きが聞こえる。そう、いくら袋田の仕打ちがひどかろうとも、そちらにばかり気を使ってはいられないのが彼女の辛い立場なのだ。

「ああ、アカン。もう出るわ。悪いけど、お先やで」

彼は矢板に一言断りつつ、自身の終着を宣言した。その言葉と共に、倫子の肛門の奥で最後の硬直と振動がはじける。

「ンーッ! ンブフゥ……ッ!」

倫子は陰嚢の下で、苦し紛れに叫んだ。それもまた断末魔の叫びのようであった。ただし、彼女には終わりも休憩もない。次々襲いくる試練の前に、なす術もなく翻弄されるだけだ。そしてまた、次に訪れた試練ほど恐ろしいものはなかったに違いないのである。

ちょうど渡瀬がソファーから降りた時だった。どこかから音楽が聞こえ始めたのだ。

「おっ、なんや鳴ってるで」

「携帯か?」

渡瀬、次いで榊原が口々に言う。

初め、倫子はその音に気付かなかった。しかし、皆がしばし黙ると、次第に耳がそちらの方に集注していく。すると、それにつれて段々と彼女の瞳孔がまた開き始めた。あんなに狂乱に追いやられていたのに、スーッと一気に心が冴えていく。

聞き覚えのあるそのメロディは、依然眠り呆けている男の懐あたりから響いていた。


<つづく>



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湯けむ輪(58) 00:15

子宝混浴
『湯けむ
~美肌効


こだからこんよく
ゆけむりん
びはだこうかん






――午前零時十五分


「……はい、もしもし――」

夫は無精をして寝返りもせずに電話に出た。その声は低く呂律も不確かで、電話の向こうの相手にも明らかに寝起きと悟られる風情である。

「――ここ? ん……?」

その相手に居場所を尋ねられたらしく、ここでようやく振り向いて顔を上げる。その寝ぼけた表情には、完全に戸惑いの色が浮かんでいた。

「おはようさん。ようやっとお目覚めでっか?」

榊原が笑顔で応じた。

「よう寝たはりましたなあ。起きはんの待ってたんでっせ」

その顔と言葉に接して、やっと夫は気がついたらしい。

「ああ! ハハ、いやどうも、すいません――」

頭をかきながら照れ笑いを浮かべ、電話の相手に、ここがスナックである旨を伝える。と、すぐにまた新しい質問が投げかけられたようだ。

「――え? お母さん?」

再び怪訝な表情に戻って、周囲を見回しだす。しかし、その視界に目当ての人物の姿は映らなかった。

その時倫子は、死んだような心地でその身を縮こまらせていた。間一髪だった。不幸中の幸いだったのは、渡瀬が満了した後だったことである。もしも彼が現役であったならば、夫の起きることなど物ともせずに、無理やりしがみついて己が本望を果たしていたであろう。ほんの一瞬が明暗を分けた。

とはいえ、今なお決して安心できる状況ではない。現に彼女は二人の男に挟まれて、その股間へ代わる代わるの口淫奉仕を強いられているのである。遮蔽物を隔ててといえども、いまだ夫の、しかも覚醒した夫の傍であることには変わりがない。

一度は倫子を助けたかに見えた矢板であったが、やはり彼に誠実な思いなど期待できようはずはなかった。あの時あの瞬間、とっさにカウンターの裏側へと彼女を伴って移動した彼。ほとんどその直後からイラマチオは始まった。しかもすぐ後から袋田も付いてきて、同じく露出した下半身を彼女に向けてきた。それからはカウンターの下で、交替ごう替の強制フェラチオである。

「……奥さん、でっか? 探したはるのん」

榊原が夫の会話に割って入る。

これだから油断できないというのだ。この鬼畜どもときたら、一体どんな暴挙に出るものやら分からないのである。倫子の心臓は今までになく激しく鼓動し、もう爆発寸前であった。まるで生きた心地もしない。

「ひょっとしたら、さっき来はった人ちゃうかなあ……?」

榊原の発言は、その実際の声音以上にいわくありげに響いた。

夫の口ぶりからして、電話の相手が娘であることは既に見当がついている。そしてそのことは、榊原についても同様であったらしい。元来、夫の存在に疑念を抱いていた彼。その推理を基に、いわば鎌をかけたわけである。

その罠に、夫はいともあっさりと引っかかった。端から疑いを持つ理由もないのだ、無理からぬことである。だがそうだとしても、倫子には不甲斐なく感じられた。

「来ました? ここ」

夫は言い、それから榊原の話す特徴を聞いて、そうそう、と無邪気にうなずいている。これで、倫子との関係は確定したわけだ。

「どこ行ったんだ、あいつ……」

彼はぶつぶつと言ったが、どこも何も、ほんの目と鼻の先にいるというのが、残酷にして滑稽な現実であった。

尋ね人は、辛うじて彼に見えない所で無法者たちの世話に勤しんでいた。海綿体はふてぶてしくもよく育ち、育ての母を苦しめる。その鋭い矛先は、上顎や舌、さらに喉奥にまでつっかえ、倫子は何度も咳き込みそうになりながら、すんでのところでこらえていた。ギリギリの賭けである。ここで音を立てないということが、事なきを得る唯一の正解なのだ。

無論、それをやりおおせたところで助かるかどうかは、男どもの気まぐれしだいである。倫子としてはいずれにせよ、彼らの言いなりになって卑劣な行為に加担するしか道はないのであった。

さても、それを一層思い知らせようとでもいうように、矢板が言った。

「ああ、あの人ですか。さっき来られましたねえ、たしか……」

ニコニコとほほ笑みながら、さりげなく首を下へと傾ける。なんという卑劣な男か! 女にペニスをしゃぶらせながら接客するだけでも驚きなのに、相手がその女と夫婦であると知ってもなお、その妻の口を犯しながら夫と堂々と会話を交わしているのである。しかも、わざわざ妻の話題すら口にしてだ。人倫のかけらも解しない男である。

それでも倫子は逆らうことができないでいた。喉の奥まで欲棒を押し込まれ、涙さえ流しているのに逃れられないのである。彼女の望みは矢板の次の一言だけ。その生殺与奪の権は、今まさに彼によって握られていた。

その悲壮な願いを重々わきまえつつ、彼は言った。

「……旦那さん、探しておいででしたよ」

言いながらほくそ笑む。

「なかなか口の達者な女性でね。――気持ちのいい人ですね」

不穏な発言であった。しかも話しながら、彼は倫子の髪を撫でそしてつかみ、彼女の頭をぐぐっと股間に近寄せた。心なしかその剛直は、先ほどよりも一層強張っているように思える。

それで口腔深く突き刺されたというのだから、される方はたまったものではない。もしあと一秒その状態が長く続けば、間違いなくギブアップして吐き出していただろう。本当によく耐えたものだ。白目を剥き、涙を流し、その滴はドロドロの粘液と混ざって顎から滴り落ちたが、彼女は決してペニスを口から出さなかった。

男達はひそかにアイコンタクトを取り合って目を細めている。矢板が今何をしているか知っている彼らには、この言葉遊びが娯楽なのである。

他方、夫を取り残してはまずいと、榊原が矢板の言葉を継いで言う。

「あっちまで行ったんとちゃうかなあ、ほら、さっき言うてた――」

それは、倫子一行がほかの店へ梯子していることを知らせるものだった。夫も行くはずだったのだが寝てしまい、結局残りの者たちだけで行ったということである。

「そうですか――」

夫は言い、そのことを伝えて電話を切った。どうやら、娘はそちらの方には行っていないらしい。

「ほな、これからそっち合流しましょか。あんさんが起きんの、待ってたんでっせ」

榊原は軽快に誘う。

「すいません――」

夫はへらへら笑いながら了承した。彼は、酒を注がれた時も“すいません”と返事していた。その態度は酔態とも相まって、いかにも愚鈍であった。妻が目の前の男達に何をされたか、現に今もそこで何をされているか知らず、呆れるほどに愚かな役者である。

だがその朴念仁も、ようやく肝心な所に気がついた。

「あっ! あれ、なんですか?」


<つづく>



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