[小説]「師匠のお筆」3−5
『師匠のお筆』
3−5
「須美恵にご用ですか?」
声をかけられて鈴美は振り返った。ちょうどこれから神雄のいるであろう教室を覗こうとしていた時だった。
見ると、白髪混じりの総髪に作務衣姿の、どことなく一風変わった風情ながら妙に貫禄のある男性が立っていた。年のころは50代か60代位。恰幅がよく、またそれにちょうど釣り合う形で押し出しの強い容貌をしている。他方、表情は柔和であった。
「はい、あの、息子を迎えに……」
なぜか悪さを見とがめられたような心持ちで、なんとなく気圧されながら、鈴美は答えた。
「ああ、お母さんでしたか」
男はにっこりと笑って言った。中年か初老の男でありながら、その笑顔はどこか甘えたところのあるような、いわゆる女好きのする魅力的なものだった。
「もう授業は終わっている時間でしょう」
言いながら、男は鈴美のいる玄関へ歩み寄って来た。
「どうも、こんな格好で失礼します。仕事場からそのまま来たもので」
鈴美が大して疑問にも思っていないことを、男は勝手にしゃべった。どことなく、男にはもったいぶったところがあった。
「そうだ、失礼、申し遅れました。いつも娘がお世話になっております。わたくし、須美恵の父で……」
と、言いかけた男をさえぎって、鈴美が素っ頓狂な声を上げた。
「枕必先生!?」
「ええ」
枕必と呼ばれた男は、少し照れを作って笑顔で頷いた。彼は自分の名声がこの母親に一定の効果をもたらしたことに満足であった。
「枕必です。どうも」
「どうも、失礼致しました」
鈴美は焦ってお辞儀をした。彼女は、彼の名声に対する自身の素直な反応が枕必を快い気持ちにさせていることになど、思いも至らなかった。枕必との予期せぬ邂逅は、彼女をして舞い上がらせるに十分であったのである。
枕必という男は、確かに書道界において確固たる地位を築いた有名書家であったが、鈴美にとってはそれ以上に思い入れのある憧れの人物だったのだ。
「あの、拝見しております」
今度は鈴美の方が聞かれてもいないことを勝手にしゃべる番だった。
「はあ」
枕必は、彼女が何を言わんとしているか既にわきまえていながらも、わざと鈍感な調子をつくった。
「個展を、その、見せて頂きまして」
鈴美は溢れる思いを抑えきれないといった様子で、所々つまりながら話した。
「ほお、個展を。それはありがとうございます」
あくまで鷹揚に枕必は言う。それに対して鈴美は、言いたいことはたくさんあるはずなのに、なんとも言葉が出てこないといった有り様であった。そこで、枕必が気を利かせて言葉をつないだ。
「ひょっとすると、あなたも書を?」
「あの、学生時代に……」
見るからに嬉しそうに鈴美は言った。枕必の勘は当たったわけであったが、それは、いくら名書道家とはいえ彼の名前が一般に広く通用しているほどとは言えず、まして個展にわざわざ足を運ぶ者ともなれば、大方書道をやった者であろうと容易に察しられたからであった。そして、このようなやり取りは枕必にとって何度も経験したものでもあった。
「どれほどなさいました」
「一応、高校までやって、6段を頂いたんです……」
「ほほう、それは素晴らしい」
「先生の前ではお恥ずかしい限りです」
しかし、言葉とは裏腹に、彼女は自分の段位についてはいささか自信を持っていた。もちろん枕必にかなうなどとは思っていなかったが、彼女にとって唯一といってもいい資格であったのである。
それから二人は、用件も忘れてしばらく談笑した。枕必は実に話の道を付けるのが上手く、時には聞き役に徹し、また時には優しく諭すように振る舞い、鈴美の心をすっかり惹きつけていた。鈴美は自分の話を有名人の枕必に聞いてもらって、この上なく上機嫌であった。
そんな時、教室から神雄と須美恵が出てきた。
(つづく)
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3−5
「須美恵にご用ですか?」
声をかけられて鈴美は振り返った。ちょうどこれから神雄のいるであろう教室を覗こうとしていた時だった。
見ると、白髪混じりの総髪に作務衣姿の、どことなく一風変わった風情ながら妙に貫禄のある男性が立っていた。年のころは50代か60代位。恰幅がよく、またそれにちょうど釣り合う形で押し出しの強い容貌をしている。他方、表情は柔和であった。
「はい、あの、息子を迎えに……」
なぜか悪さを見とがめられたような心持ちで、なんとなく気圧されながら、鈴美は答えた。
「ああ、お母さんでしたか」
男はにっこりと笑って言った。中年か初老の男でありながら、その笑顔はどこか甘えたところのあるような、いわゆる女好きのする魅力的なものだった。
「もう授業は終わっている時間でしょう」
言いながら、男は鈴美のいる玄関へ歩み寄って来た。
「どうも、こんな格好で失礼します。仕事場からそのまま来たもので」
鈴美が大して疑問にも思っていないことを、男は勝手にしゃべった。どことなく、男にはもったいぶったところがあった。
「そうだ、失礼、申し遅れました。いつも娘がお世話になっております。わたくし、須美恵の父で……」
と、言いかけた男をさえぎって、鈴美が素っ頓狂な声を上げた。
「枕必先生!?」
「ええ」
枕必と呼ばれた男は、少し照れを作って笑顔で頷いた。彼は自分の名声がこの母親に一定の効果をもたらしたことに満足であった。
「枕必です。どうも」
「どうも、失礼致しました」
鈴美は焦ってお辞儀をした。彼女は、彼の名声に対する自身の素直な反応が枕必を快い気持ちにさせていることになど、思いも至らなかった。枕必との予期せぬ邂逅は、彼女をして舞い上がらせるに十分であったのである。
枕必という男は、確かに書道界において確固たる地位を築いた有名書家であったが、鈴美にとってはそれ以上に思い入れのある憧れの人物だったのだ。
「あの、拝見しております」
今度は鈴美の方が聞かれてもいないことを勝手にしゃべる番だった。
「はあ」
枕必は、彼女が何を言わんとしているか既にわきまえていながらも、わざと鈍感な調子をつくった。
「個展を、その、見せて頂きまして」
鈴美は溢れる思いを抑えきれないといった様子で、所々つまりながら話した。
「ほお、個展を。それはありがとうございます」
あくまで鷹揚に枕必は言う。それに対して鈴美は、言いたいことはたくさんあるはずなのに、なんとも言葉が出てこないといった有り様であった。そこで、枕必が気を利かせて言葉をつないだ。
「ひょっとすると、あなたも書を?」
「あの、学生時代に……」
見るからに嬉しそうに鈴美は言った。枕必の勘は当たったわけであったが、それは、いくら名書道家とはいえ彼の名前が一般に広く通用しているほどとは言えず、まして個展にわざわざ足を運ぶ者ともなれば、大方書道をやった者であろうと容易に察しられたからであった。そして、このようなやり取りは枕必にとって何度も経験したものでもあった。
「どれほどなさいました」
「一応、高校までやって、6段を頂いたんです……」
「ほほう、それは素晴らしい」
「先生の前ではお恥ずかしい限りです」
しかし、言葉とは裏腹に、彼女は自分の段位についてはいささか自信を持っていた。もちろん枕必にかなうなどとは思っていなかったが、彼女にとって唯一といってもいい資格であったのである。
それから二人は、用件も忘れてしばらく談笑した。枕必は実に話の道を付けるのが上手く、時には聞き役に徹し、また時には優しく諭すように振る舞い、鈴美の心をすっかり惹きつけていた。鈴美は自分の話を有名人の枕必に聞いてもらって、この上なく上機嫌であった。
そんな時、教室から神雄と須美恵が出てきた。
(つづく)
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[小説]「師匠のお筆」3−4−2
『師匠のお筆』
3−4−2
(あっ、ああ……)
最初少し戸惑い、その後すぐに幸福が彼女を満たした。それは思い描いていた通りであり、またそれ以上でもある神秘的なものだった。
須美恵はそのまま顔をうずめ、かぐわしい香りで鼻腔を満たしながら、そこを湿らす汁を思う存分舐め取りたかったが、いきなりそうするわけにもいかず、ぐっとこらえてその日は感動を噛みしめるのみで我慢した。
精液の量がほとんどないのが不思議であったが、それがかえって大人の男くさい生々しさを感じさせず良かった。須美恵は舐めるのは止したが、代わりに執拗にそこをタオルで拭いてやった。ふわふわとしてそれでいてコリコリと芯のある睾丸は、特に何ともいえず心地よい感触であった。
それにしても、平素から少年に並々ならぬ関心を寄せる須美恵にとって、その秘所を目の当たりにしたことは、そういう癖のない人間にとっては及びもつかないほど感動的なのであった。普通に生活していて、少年の股間を直視する機会など、幼年の子のならともかく、子のない大人の女性にはまずないだろう。まして、性を働いた後のそれを。
須美恵にとっては、ようやく叶った夢の機会であった。書道教室を主宰し、子供限定にしたのもこの瞬間のためであった。しかし、中々チャンスは巡ってこず、露骨な挙動には出られないし、また生徒たちといえばあまりにも無邪気で、それは一般的な子供の当たり前の姿なのだが、それは性から程遠いものでもあり、須美恵は一人悶々としていたのである。
そんな時現れたのが神雄だった。母親に連れられてやってきた彼は、可愛がられて育ったのがよく分かる甘い雰囲気で、またおとなしく賢そうでもあり、そして、染めているわけでもなく元々茶色がかった髪は長めでサラサラして、皮膚は白く、もうとにかく須美恵の好みのタイプであった。
一目見て運命的なものを感じたが、居残りをさせてみて、果たしてこれがやはり運命であったことが確信されたのである。今までにもマンツーマンで指導したことはあったが、いつもうまくいかなかった。これだけ興味があって、これだけ数多く接してきたのに、神雄が初めてうまくいった相手なのであった。
この相手ともっと深い仲に、と、欲求は高まるばかり。日に日に行為はエスカレートして、今や白昼堂々と彼の陰茎をその手に握るまでになったのである。
右手は彼の握る筆を、左手は彼の陰茎を。須美恵は、本来の趣旨である右手の筆よりも、左手の陰茎に力を込めた。もはや、彼女にとって筆は、神雄の陰茎であると言わんばかりに。
直立した筆は先端を透明な墨汁で濡らし、意志あるもののように脈打ち動いていた。須美恵はその筆を優しく、しかししっかりと握り、時折親指の腹で先端をなでながら、そうして囁いた。
「今日、まだおもらし大丈夫?」
頬を神雄の側頭部に寄せ、唇を耳に付けて。
その時、唐突に玄関の方で話し声が聞こえ、はっとして須美恵は身をこわばらせた。
(つづく)
3−4−2
(あっ、ああ……)
最初少し戸惑い、その後すぐに幸福が彼女を満たした。それは思い描いていた通りであり、またそれ以上でもある神秘的なものだった。
須美恵はそのまま顔をうずめ、かぐわしい香りで鼻腔を満たしながら、そこを湿らす汁を思う存分舐め取りたかったが、いきなりそうするわけにもいかず、ぐっとこらえてその日は感動を噛みしめるのみで我慢した。
精液の量がほとんどないのが不思議であったが、それがかえって大人の男くさい生々しさを感じさせず良かった。須美恵は舐めるのは止したが、代わりに執拗にそこをタオルで拭いてやった。ふわふわとしてそれでいてコリコリと芯のある睾丸は、特に何ともいえず心地よい感触であった。
それにしても、平素から少年に並々ならぬ関心を寄せる須美恵にとって、その秘所を目の当たりにしたことは、そういう癖のない人間にとっては及びもつかないほど感動的なのであった。普通に生活していて、少年の股間を直視する機会など、幼年の子のならともかく、子のない大人の女性にはまずないだろう。まして、性を働いた後のそれを。
須美恵にとっては、ようやく叶った夢の機会であった。書道教室を主宰し、子供限定にしたのもこの瞬間のためであった。しかし、中々チャンスは巡ってこず、露骨な挙動には出られないし、また生徒たちといえばあまりにも無邪気で、それは一般的な子供の当たり前の姿なのだが、それは性から程遠いものでもあり、須美恵は一人悶々としていたのである。
そんな時現れたのが神雄だった。母親に連れられてやってきた彼は、可愛がられて育ったのがよく分かる甘い雰囲気で、またおとなしく賢そうでもあり、そして、染めているわけでもなく元々茶色がかった髪は長めでサラサラして、皮膚は白く、もうとにかく須美恵の好みのタイプであった。
一目見て運命的なものを感じたが、居残りをさせてみて、果たしてこれがやはり運命であったことが確信されたのである。今までにもマンツーマンで指導したことはあったが、いつもうまくいかなかった。これだけ興味があって、これだけ数多く接してきたのに、神雄が初めてうまくいった相手なのであった。
この相手ともっと深い仲に、と、欲求は高まるばかり。日に日に行為はエスカレートして、今や白昼堂々と彼の陰茎をその手に握るまでになったのである。
右手は彼の握る筆を、左手は彼の陰茎を。須美恵は、本来の趣旨である右手の筆よりも、左手の陰茎に力を込めた。もはや、彼女にとって筆は、神雄の陰茎であると言わんばかりに。
直立した筆は先端を透明な墨汁で濡らし、意志あるもののように脈打ち動いていた。須美恵はその筆を優しく、しかししっかりと握り、時折親指の腹で先端をなでながら、そうして囁いた。
「今日、まだおもらし大丈夫?」
頬を神雄の側頭部に寄せ、唇を耳に付けて。
その時、唐突に玄関の方で話し声が聞こえ、はっとして須美恵は身をこわばらせた。
(つづく)
[小説]「師匠のお筆」3−4−1
『師匠のお筆』
3−4−1
須美恵は興奮していた。彼女は少年の髪に鼻をうずめ、左手で彼の露出された股間をまさぐって愉悦に浸っていた。
須美恵にとって神雄との時間はもはやとうに補習授業ではない。逢瀬だ。背徳の恋を交わす逢瀬に他ならないのである。
あの日、初めて我が腕の中で少年の気をやらせた時、いや、それ以前、初めて会った時からこの運命的な逢瀬を重ねてきた。まさに運命、宿命づけられた出会いと関係だったと須美恵は強く思う。
須美恵は書を指導する振りをしながら、もはやそんな振りすらまどろっこしかったが、しかしまだ授業という建前を崩すことはできずに、右手で神雄の書を上の空で指導し、そうして左手で、全身全霊で彼のペニスをいじくっていた。
それは、白く、小さく、しかし固く、先は淡い桃色で、その小さな口から透明な粘液を吐いていた。
(かわいいわ)
心から愛おしいと須美恵は思った。神雄を、というより、彼のそれを。もちろん神雄も可愛いに違いなかったが、その結晶ともいうべき所と須美恵には思えたのであった。白い小さなそれは美しく、まるで初めて相対した日の神雄の印象そのもののように感じられた。
須美恵は、初めて彼の股を開いた日のことを思い出した。
それまでに何度かエクスタシーに達していたことは確かであったはずだが、神雄が果たしてそれをどう受け止めているのか、この先の展開としてどうすべきか、須美恵には分からなかった。神雄といえば無口で、表情も乏しく、喜んでいるのか迷惑がっているのか、ちょっと見ただけでは分からないのである。
だから、彼のズボンを下ろしたのは賭けであった。もう彼女の欲情は我慢の限界だったのである。
少し抵抗したようであったが、頭に血が昇った須美恵は勢い込んで一気にパンツを脱がせた。そして見た。
(つづく)
3−4−1
須美恵は興奮していた。彼女は少年の髪に鼻をうずめ、左手で彼の露出された股間をまさぐって愉悦に浸っていた。
須美恵にとって神雄との時間はもはやとうに補習授業ではない。逢瀬だ。背徳の恋を交わす逢瀬に他ならないのである。
あの日、初めて我が腕の中で少年の気をやらせた時、いや、それ以前、初めて会った時からこの運命的な逢瀬を重ねてきた。まさに運命、宿命づけられた出会いと関係だったと須美恵は強く思う。
須美恵は書を指導する振りをしながら、もはやそんな振りすらまどろっこしかったが、しかしまだ授業という建前を崩すことはできずに、右手で神雄の書を上の空で指導し、そうして左手で、全身全霊で彼のペニスをいじくっていた。
それは、白く、小さく、しかし固く、先は淡い桃色で、その小さな口から透明な粘液を吐いていた。
(かわいいわ)
心から愛おしいと須美恵は思った。神雄を、というより、彼のそれを。もちろん神雄も可愛いに違いなかったが、その結晶ともいうべき所と須美恵には思えたのであった。白い小さなそれは美しく、まるで初めて相対した日の神雄の印象そのもののように感じられた。
須美恵は、初めて彼の股を開いた日のことを思い出した。
それまでに何度かエクスタシーに達していたことは確かであったはずだが、神雄が果たしてそれをどう受け止めているのか、この先の展開としてどうすべきか、須美恵には分からなかった。神雄といえば無口で、表情も乏しく、喜んでいるのか迷惑がっているのか、ちょっと見ただけでは分からないのである。
だから、彼のズボンを下ろしたのは賭けであった。もう彼女の欲情は我慢の限界だったのである。
少し抵抗したようであったが、頭に血が昇った須美恵は勢い込んで一気にパンツを脱がせた。そして見た。
(つづく)
[小説]「師匠のお筆」3−3
『師匠のお筆』
3−3
鈴美は歩きながら考えていた。
(あんなに熱心な先生だとは思わなかった)
鈴美から見て、須美恵はクールな印象というのが第一で、きっと書道の腕は確かで且つ仕事もできるに違いないとは思ったが、人情味が希薄と言えば言い過ぎな、しかし子供好きとか優しいとかいった雰囲気はほとんど感じられなかった。およそ教育者的でないというのである。
初めて会った時もなんとなくそっけない態度で、万事事務的な振る舞いであった。きれいな人だ、と鈴美は思ったが、同時にもっと表情を和らげればきっとかわいらしいに違いないのに、とも思った。須美恵は話している最中、決して笑わなかったからである。
そんなイメージが、実際に対面して得た須美恵の横顔であったから、熱意を持ってわが子に接してくれているのが意外に思えたのである。どちらかといえば、課外で指導を行うような、そんな余力は使いたくないと考えていそうだと思えたのである。
(ほんとにあの子に素質があるのかしら)
親ばかであるとは思えど、冷静な須美恵だからこそ神雄の才能を認めて引き立ててくれているとも考えられ、そうであれば鈴美にとってこれほど嬉しいことはないのである。
須美恵の教室が見えてきた。グレーの壁と四角い佇まいの教室。子供向けの教室とは思えないほどスマートで味気なく、この建物そのものが須美恵のクールな個性を表しているように見えた。
鈴美は玄関を入った。入るとまっすぐに廊下が伸びていて、すぐ手前右側が教室、その続きでさらに奥が応接室になっている。ここは須美恵が事務を執る部屋であるようで、入学の手続きはここで行った。それ以外にも部屋はあるかもしれないが、鈴美はこの二部屋しか知らなかった。
補習の授業だから教室にいるであろう、と、鈴美はとりあえずそっと覗いてみることにした。
(つづく)
3−3
鈴美は歩きながら考えていた。
(あんなに熱心な先生だとは思わなかった)
鈴美から見て、須美恵はクールな印象というのが第一で、きっと書道の腕は確かで且つ仕事もできるに違いないとは思ったが、人情味が希薄と言えば言い過ぎな、しかし子供好きとか優しいとかいった雰囲気はほとんど感じられなかった。およそ教育者的でないというのである。
初めて会った時もなんとなくそっけない態度で、万事事務的な振る舞いであった。きれいな人だ、と鈴美は思ったが、同時にもっと表情を和らげればきっとかわいらしいに違いないのに、とも思った。須美恵は話している最中、決して笑わなかったからである。
そんなイメージが、実際に対面して得た須美恵の横顔であったから、熱意を持ってわが子に接してくれているのが意外に思えたのである。どちらかといえば、課外で指導を行うような、そんな余力は使いたくないと考えていそうだと思えたのである。
(ほんとにあの子に素質があるのかしら)
親ばかであるとは思えど、冷静な須美恵だからこそ神雄の才能を認めて引き立ててくれているとも考えられ、そうであれば鈴美にとってこれほど嬉しいことはないのである。
須美恵の教室が見えてきた。グレーの壁と四角い佇まいの教室。子供向けの教室とは思えないほどスマートで味気なく、この建物そのものが須美恵のクールな個性を表しているように見えた。
鈴美は玄関を入った。入るとまっすぐに廊下が伸びていて、すぐ手前右側が教室、その続きでさらに奥が応接室になっている。ここは須美恵が事務を執る部屋であるようで、入学の手続きはここで行った。それ以外にも部屋はあるかもしれないが、鈴美はこの二部屋しか知らなかった。
補習の授業だから教室にいるであろう、と、鈴美はとりあえずそっと覗いてみることにした。
(つづく)
tag : 人妻
[小説]師匠のお筆3−2
『師匠のお筆』
3−2
二人のほか誰もいない教室で、神雄は須美恵から補習授業を受けていた。もう毎度のことで、そうして神雄は“イく”という感覚を覚えていた。
といっても、そのことを明らかに須美恵から教えられたわけではないし、イくというのがどういう意味なのかも理解していたわけではない。ただ条件反射として、補習授業の時に須美恵先生といると気持ちよくなれるし、体の一部が異常な状態になるというのを知ったのみである。
この異常な状態について、神雄は最初特別不思議にも思っていなかった。なぜなら、神雄は須美恵と密着している時極度に緊張していたし、その緊張の極みであったればこそ、その異常をじっくりと見つめる余裕がなかったのである。
とはいえ、男がエクスタシーに達したとあれば当然それ相応の結果が発生しているはずなのであるが、神雄はこれについても別段気に留めていなかった。それというのも、神雄の身体がまだ生殖行為の準備を完了していないからなのであった。だから、パンツの中を濡らすこともほとんどなかったのである。
しかし、度重なる刺激を受けて身体がその必要性を学び、成長が加速されることはありうる話で、神雄もまたいつまでも子どもの身体でいるわけにはいかなかった。その変化を最初に知らされたのは須美恵によってであった。
「神雄君、おトイレに行った方がいいんじゃない?」
ある日の補習が終わってすぐ、神雄は須美恵からそう言われた。例によって、まだ夢うつつの境をさまよっていた神雄は、須美恵にそう言われてもピンとこなかった。
「だって……ね?」
須美恵は何かを悟らせようとしているようであったが、神雄には一向通じなかった。須美恵はその反応を見てやや不審そうな面持ちであったが、急に神雄の股間を見て指を差した。
「あっ、ほら!神雄君、ちょっとおもらししてるんじゃない?」
神雄はぎょっとして慌てて立ち上がろうとしたが、尻から後ろに転んでしまった。長時間正座させられて足がしびれていたのである。
「大丈夫?あらでもほら」
駆け寄って来た須美恵に神雄は上体を助け起こされて、自身の股間を見た。しかし、神雄にはそこに変化があるようには見えなかった。神雄が怪訝な顔をしていると須美恵は、
「ほら、ここ」
と言いながら、大胆にも神雄の股間を右手で押さえつけた。
神雄はびっくりすると同時に恥ずかしさでいっぱいになって、腰を後ろに引いたが、背中に回された手によって阻まれ、須美恵の手から逃れることはできなかった。
「ほらほらほら」
須美恵は手のひらでぺたぺたと股間を押さえた。
「湿ってるわ」
神雄のそこは敏感になっており、加えて足のしびれが活発になってきたために、もうどうしていいか分からずにほとんど悶絶する勢いであった。
「触ってごらんなさい。……ね?」
神雄は手を取られてその部分に触れたが、もはや湿っているかどうかを判断できる状態ではなかった。須美恵はそんなことには頓着せずに話を進めた。
「脱ぎなさい」
「えっ?」
たじろぐ神雄を尻眼に、須美恵は早速神雄の長ズボンを脱がせにかかっていた。
「おもらししたまんまで帰れないでしょう?」
神雄はなんとか否定したかったが、何と言っていいものか思いつかなかった。そうする間にも須美恵は畳みかけるように言う。
「教室を汚されても困るの」
神雄は情けない気持ちでいっぱいだった。まるで赤ん坊のように、寝かされたまま勝手にズボンを下ろされている。しびれのために足に力が入らず、神雄は動転するままに、ほとんど無抵抗で下半身をひん剥かれていた。
「見て、ほら」
須美恵は神雄の履いていた白いブリーフを広げて見せた。それは確かに濡れていて、わずかだが液体が付着していた。
こうして神雄は自身の身体の変化を強烈な形で教えられたのであった。
それからというもの、神雄は須美恵にとって、教室でおもらしをしてしまう悪い子、であった。神雄は補習の度におもらしをする自分に気づかされた。
彼はそのことに悩まされ、罪悪感にさいなまれながらも、休むことなく教室に出てきて居残りを受けた。それはなぜかというと、結局男性としての性の好奇心が罪悪感に勝って未知の快感を追求したためにほかならないだろう。それで、屈辱を味わいながらも須美恵に身をゆだね、須美恵の手の上で踊らされることを選択したのである。
二人の秘密は新たな事実を加え、その行為はさらにエスカレートしていった。
とうとう神雄は、毎度毎度のおもらしのために、ズボンとパンツをずらされ、股間を露出した状態で机に向かわされることになった。
今日も今日とて、神雄はそんな格好で補習を受けていた。と、そこへ母の鈴美が迎えに来たのである。
(つづく)
3−2
二人のほか誰もいない教室で、神雄は須美恵から補習授業を受けていた。もう毎度のことで、そうして神雄は“イく”という感覚を覚えていた。
といっても、そのことを明らかに須美恵から教えられたわけではないし、イくというのがどういう意味なのかも理解していたわけではない。ただ条件反射として、補習授業の時に須美恵先生といると気持ちよくなれるし、体の一部が異常な状態になるというのを知ったのみである。
この異常な状態について、神雄は最初特別不思議にも思っていなかった。なぜなら、神雄は須美恵と密着している時極度に緊張していたし、その緊張の極みであったればこそ、その異常をじっくりと見つめる余裕がなかったのである。
とはいえ、男がエクスタシーに達したとあれば当然それ相応の結果が発生しているはずなのであるが、神雄はこれについても別段気に留めていなかった。それというのも、神雄の身体がまだ生殖行為の準備を完了していないからなのであった。だから、パンツの中を濡らすこともほとんどなかったのである。
しかし、度重なる刺激を受けて身体がその必要性を学び、成長が加速されることはありうる話で、神雄もまたいつまでも子どもの身体でいるわけにはいかなかった。その変化を最初に知らされたのは須美恵によってであった。
「神雄君、おトイレに行った方がいいんじゃない?」
ある日の補習が終わってすぐ、神雄は須美恵からそう言われた。例によって、まだ夢うつつの境をさまよっていた神雄は、須美恵にそう言われてもピンとこなかった。
「だって……ね?」
須美恵は何かを悟らせようとしているようであったが、神雄には一向通じなかった。須美恵はその反応を見てやや不審そうな面持ちであったが、急に神雄の股間を見て指を差した。
「あっ、ほら!神雄君、ちょっとおもらししてるんじゃない?」
神雄はぎょっとして慌てて立ち上がろうとしたが、尻から後ろに転んでしまった。長時間正座させられて足がしびれていたのである。
「大丈夫?あらでもほら」
駆け寄って来た須美恵に神雄は上体を助け起こされて、自身の股間を見た。しかし、神雄にはそこに変化があるようには見えなかった。神雄が怪訝な顔をしていると須美恵は、
「ほら、ここ」
と言いながら、大胆にも神雄の股間を右手で押さえつけた。
神雄はびっくりすると同時に恥ずかしさでいっぱいになって、腰を後ろに引いたが、背中に回された手によって阻まれ、須美恵の手から逃れることはできなかった。
「ほらほらほら」
須美恵は手のひらでぺたぺたと股間を押さえた。
「湿ってるわ」
神雄のそこは敏感になっており、加えて足のしびれが活発になってきたために、もうどうしていいか分からずにほとんど悶絶する勢いであった。
「触ってごらんなさい。……ね?」
神雄は手を取られてその部分に触れたが、もはや湿っているかどうかを判断できる状態ではなかった。須美恵はそんなことには頓着せずに話を進めた。
「脱ぎなさい」
「えっ?」
たじろぐ神雄を尻眼に、須美恵は早速神雄の長ズボンを脱がせにかかっていた。
「おもらししたまんまで帰れないでしょう?」
神雄はなんとか否定したかったが、何と言っていいものか思いつかなかった。そうする間にも須美恵は畳みかけるように言う。
「教室を汚されても困るの」
神雄は情けない気持ちでいっぱいだった。まるで赤ん坊のように、寝かされたまま勝手にズボンを下ろされている。しびれのために足に力が入らず、神雄は動転するままに、ほとんど無抵抗で下半身をひん剥かれていた。
「見て、ほら」
須美恵は神雄の履いていた白いブリーフを広げて見せた。それは確かに濡れていて、わずかだが液体が付着していた。
こうして神雄は自身の身体の変化を強烈な形で教えられたのであった。
それからというもの、神雄は須美恵にとって、教室でおもらしをしてしまう悪い子、であった。神雄は補習の度におもらしをする自分に気づかされた。
彼はそのことに悩まされ、罪悪感にさいなまれながらも、休むことなく教室に出てきて居残りを受けた。それはなぜかというと、結局男性としての性の好奇心が罪悪感に勝って未知の快感を追求したためにほかならないだろう。それで、屈辱を味わいながらも須美恵に身をゆだね、須美恵の手の上で踊らされることを選択したのである。
二人の秘密は新たな事実を加え、その行為はさらにエスカレートしていった。
とうとう神雄は、毎度毎度のおもらしのために、ズボンとパンツをずらされ、股間を露出した状態で机に向かわされることになった。
今日も今日とて、神雄はそんな格好で補習を受けていた。と、そこへ母の鈴美が迎えに来たのである。
(つづく)





